投資熱が高まる中、急増しているのは有名人の名前や写真を無断で使った「ニセの広告」による投資詐欺です。“堀江貴文さんを名乗る人物”に金を騙し取られたという男性を取材しました。その手口とは…
【写真を見る】「全財産がパーに」偽のホリエモンにだまされ1900万円の被害 利益が上がったように見えても現金は引き出せず…有名人かたるニセ広告で広がる投資詐欺【news23】
喜入友浩キャスター「最初の入口、きっかけは?」投資詐欺にあった男性(60)「フェイスブックで、堀江貴文さんをかたる広告を見ました。上がる株を教えますという」

喜入キャスター「いくら入金を?」投資詐欺にあった男性「トータルで1900万円です」
有名人の名前や写真を無断で使用した広告で、LINEに誘導したのち、金をだまし取るなどの手口で、今、急増している「投資詐欺」。男性はこうした偽広告を見て、堀江貴文さんを名乗る人物のLINEを登録したといいます。
3年前、脳出血になり右半身に障がいが残った男性。言葉が出にくい状態の中、インタビューに答えてくれました。
1900万円の投資詐欺にあった男性(60)「リハビリをしていく中で、まともに働けないことがあって、何かしら生活の足しになるなら、やってみようかなと思ってやった」
2023年10月、半信半疑のまま、LINEでやりとりを始めたという男性。
堀江貴文さんを名乗るLINEアカウント「こんにちは、堀江貴文です」「私たちの予想月次収益は83%以上に達すると予想しています」男性「参加希望した場合、堀江さんと連絡をとればいいですか?」堀江貴文さんを名乗るLINEアカウント「もちろん大丈夫です」
そして、アシスタントを紹介されたのち、株の情報をアドバイスすると言われ、グループLINEに誘導されたといいます。そこで偽アカウントから送られてきたのは…
投資詐欺にあった男性「堀江さんの音声を流している。音声を流されて、ちょっと信用してもいいのかなと思って」
「一緒に頑張りましょう」といった音声が送られてきたことで、本物だと信用してしまったといいます。
こうした手口は、news23が接触した経済アナリスト・森永卓郎さんの偽アカウントも…
森永卓郎さんを名乗るLINEアカウント(本人に酷似する音声)「みなさん、こんばんは。たくさんの新しい参加者がいますね。これから私はグループで皆さんの投資スキルを指導します。わからないことがあれば、いつでも私アシスタントに相談してください」
様々な手口を駆使し、参加者を信じ込ませる偽アカウント。一方で、おかしいと感じた点もあったといいます。
堀江貴文さんのアシスタントを名乗る人物からのメッセージに、中国語で「今日」を意味する漢字「今天」が使われていたのです。
堀江貴文さんのアシスタントを名乗る人物のLINE「今天も15.00に取引ですよ」男性「え?中国語ですか?」堀江貴文さんのアシスタントを名乗る人物のLINE「この間、一人の生徒が中国人でした。さっきは怠けてしまって、その生徒への返答をそのまま〇〇さん(男性の名前)に返信してしまいました」
その後、男性は、堀江さんの偽アカウントから、金への投資を勧められたといいます。
堀江貴文さんを名乗るLINEアカウント「今回のプランではゴールド市場を選択し、2か月程度の投資を予定しており、収益は200%から300%になる見込みです」
そして、金の取引を行うサイトに登録するよう指示されたといいます。サイトからは、取引するための口座が送られてきましたが、指定される口座は、毎回違う銀行でした。
喜入キャスター「儲けはあった?」1900万円の投資詐欺にあった男性「儲けはありました。利益の金額がサイトで見えるような状態で、10万円単位で上がっていた」
サイトの画面には、利益が出ているように表示されていました。
喜入キャスター「お金を引き出そうとした?」
投資詐欺にあった男性「最高10万円くらいを引き出しました。引き出しが出来たので、信用してもいいのかなと思った」
現金を引き出せたことで信じ込んだ男性は、合計1000万円を入金。サイトでは最大2000万円まで増えていました。
一方、堀江さんのアシスタントを名乗る人物からは、追加投資の要求が続いていたといいます。
男性「残念ながらこれ以上投資金額を増やすことはできません」堀江貴文さんのアシスタントを名乗る人物のLINE「保険を解約して資金を増やすことができます。ちょっと無茶な聞こえるかもしれませんが、得られる利益もかなり大きいです」
しかし、取引を始めてから1か月ほど経つと、突然…
堀江貴文さんのアシスタントを名乗る人物のLINE「私たちは全て失ったようです。どうすればいいかわからなくなってしまいました、少し頭がくらくらしてきました」
投資した1000万円がすべてなくなった、と宣告された男性に、堀江さんの偽アカウントは…
堀江貴文さんを名乗るLINEアカウント「私の提案は、〇〇さん(男性の名前)が今週中に1千万の資金を集めることです」男性「1千万なんてあり得ない。全財産がパーです」
投資していたお金は、2人の娘のために貯めていたものでした。焦った男性は、「追加で投資すればお金を取り返せる」という言葉を信じ、生命保険を解約し、900万円を入金。前の投資分とあわせて1900万円をつぎ込んだといいます。
その後、サイト上では再び利益が出始めたため、出金の手続きを始めた男性。
しかし、さらなる要求が…
投資詐欺にあった男性「(アシスタントから)手違いがあって、本人確認を再度しないといけないと。それには追加で300万円と、銀行カードが必要だと言われた」喜入キャスター「そこで何を思った?」
1900万円の投資詐欺にあった男性(60)「それは詐欺やなと思った。お金が戻ってくるのかどうか、わけがわからないくらいショックだった。娘たちのために残せるものはないのかなと思います」
男性は警察に被害届を提出しましたが、これまでに捜査が進展したという連絡はないということです。
小川彩佳キャスター:「娘さんたちのためにできるだけお金を残していきたい」という思いの中で、男性は投資詐欺にあってしまいました。
東京大学准教授斎藤幸平さん:まずこういう広告を放置してるプラットフォーマーは許せないですけれども、よくよく考えれば堀江さんがそんなうまい話を我々に教えてくれるわけがないので、こういうものに引っかかっちゃいけないということですよね。
喜入キャスター:被害はこの男性だけではないんです。こんなデータがあります。
〈金融商品(投資)詐欺被害額〉・2017年7.2億円・2018年2.6億円・2019年1.9億円・2020年4.1億円・2021年2.6億円・2022年4.4億円・2023年約51億円※警察庁より
2023年の投資詐欺の被害額は前年比で、10倍以上になっているという現状があります。
なぜ、だまされてしまうのか。取材の中で感じたのは、このような広告をクリックしてしまう方は、▼そもそもお金に困っている、▼増やさないといけないという現状があります。さらに、最初から全てを信じているわけではないんです。半信半疑で入っていくんですけれども、▼LINEの1対1の丁寧な対応、さらに▼利益が出たと思われるお金が実際に引き出せるということで、どんどんと信じ込んでいってしまうということなんです。
小川キャスター:かなり手口が巧妙ですよね。
東京大学准教授斎藤幸平さん:こういうものに、だんだ慣れさせていって、「グループLINEだし、みんなもやってるから」と思わされてしまうんでしょうね。
喜入キャスター:では、どうやって見抜いていけばいいのか。金融庁はこうした呼びかけを行っています。まず、「必ず儲かる!!」、「安心安全!!」、「元本保証」などのキーワードには注意が必要だそうです。そして、「投資に『絶対』はありません」と言います。
また、金融庁は「“オイシイ投資話”を聞いても、すぐに飛びつかず、一旦落ち着いて、よく考えましょう。信頼できる友人や家族にも相談しましょう」と呼びかけています。もし、こうした投資話に応じてしまった場合は、「金融庁金融サービス利用者相談室」などの相談窓口、そしてご家族にも呼びかけてください。
藤森祥平キャスター:投資詐欺にだまされてしまう背景には、投資への関心が一気に高まってることがありそうです。政府は、2024年1月に新NISAを始めるなど、「貯蓄から投資へ」と呼びかけていることもあります。
〈金融商品への関心は?〉・大いに高まった6.8%・多少高まった22.1%・変わらない61.3%・低くなった5.1%・その他・わからない4.7%※NEWSDIGアプリのアンケートです。※統計学的手法に基づく世論調査ではありません。
3月4日に実施したNEWSDIGアプリのアンケートでも、日経平均株価が史上初の4万円台を突破したこともあり、「金融商品への関心はどうか」という問いに、「大いに高まった」「多少高まった」との回答は28.9%ありました。
小川キャスター:斎藤さんご自身は、投資への関心はどうですか。
東京大学准教授斎藤幸平さん:私は社会主義者なので、投資をやってるとパブリックイメージ的にどうかとなってしまいますが、ただ貯蓄から投資への流れが高まっていて、長期的に見ると、投資できる人と、できない人たちの格差がますます広がっていくと思います。政府は今、国策として、1億総投資社会のようなものを作ろうとしているので、今後の政策で株価が下がるようなこと、例えば金融所得課税を高めたり、法人税を上げたり、所得税を上げたりなどがあったら、やはり富裕層や大企業は嫌がるので、できなくなってしまう恐れがある。逆に国民も、自分たちのお金をどんどん株につぎ込んでいると、「とにかく株価が上がってほしい」というふうに、投資家マインドを内面化するようになっていく。そうすると、再分配をすべきなど、私みたいな主張をする人たちの人気はどんどん下がっていって、再分配もされなくなると格差が広がっていくと。
確かに新NISAの制度は、普通に考えればすごくお得な制度なので、投資する余裕がある人たちは老後も心配でしょうからやったらいいんですけど、私が言えるのは「そうは言ってもあなたたちも労働者なんだから、労働者であるということを忘れて、自分があたかも投資家のようにふる舞ってしまうと、ますます一部のお金持ちがもっと儲かるだけの社会になってしまうのではないか」ということは、警鐘を鳴らしたいと思いました。
小川キャスター:「この流れに乗らなければ」、「投資しなければ何か損してしまうのではないか」などの思いの広がりの中で、この投資詐欺というのも横行してしまっているというわけですね。
藤森キャスター:ご注意ください。
NEWSDIGアプリでは『有名人かたった投資詐欺 有効な対策』などについて「みんなの声」を募集しました。Q.有名人で投資誘う詐欺 有効な対策は?「当局による取り締まり」…51.4%「当局による注意喚起」…5.9%「利用者の知識等の向上」…41.0%「その他・わからない」…1.7%※3月5日午後11時13分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません※動画内で紹介したアンケートは終了しました