東京・足立区の住宅の床下から夫婦の遺体が見つかった事件で、警視庁は3月1日、死体遺棄容疑で逮捕・起訴されたフィリピン国籍のモラレス・ヘイゼル・アン・バギシャ(30)、デラ・クルース・ブライアン・ジェファーソン(34)両容疑者を殺人と住居侵入容疑で再逮捕した。

両容疑者は共謀して1月16日、足立区の夫婦の3階建ての自宅に侵入。1階廊下などで夫婦の胸などを包丁で刺して殺害した疑いがある。

社会部記者が解説する。

「モラレス容疑者は事件前、凶器と思われる包丁を量販店で複数購入するところが防犯カメラに映されていた。包丁を購入した後、夫婦の自宅に潜伏し、16時頃帰宅した夫婦を次々と殺害、遺体を床下に遺棄したとみられている。事件後、夫婦の自宅に残された包丁のうちの1本にはモラレス容疑者の血痕が付着していた」

再逮捕されたモラレス容疑者(本人SNSより)

事件後、モラレス容疑者は都内の自宅近くのホテルに宿泊し、その後、福島県に移動。そこで行方を追っていた警視庁の捜査員に発見され、19日未明に逮捕された。

「モラレス容疑者は自宅に潜伏していた際、元交際相手だった被害者の長男に対し、SNSで『お腹空いた!』『ご飯食べた?』などのメッセージを送っていた。

さらにホテルに潜伏していた際にも返信をしない長男に『どうしたの?』『返事して』といった内容のメッセージを頻繁に送り、まるで自身が何も関係がないかのようなアリバイ工作をしている」(前出)

♯2にて詳しく報じたように、2017年ごろ日本人男性と偽装結婚をして入国したモラレス容疑者は浅草の「G」というフィリピンパブで「アヤ」という源氏名で働き、売上ナンバーワンになるなど人気ホステスとして知られていた。事件発生当時、店の元同僚はこう証言した。

「彼女は身長も高く、胸も大きかったし、顔も写真のとおりでキレイな子。日本人受けする顔ということもあってすぐに人気が出ました。私の知る限りはランキングで上位3位には入っていました。生活に困らないくらいは稼げていましたよ」

「G」には、積水ハウスから架空の土地取引代金55億円余りを騙し取った地面師グループの首魁、カミンスカス(旧姓・小山)操受刑囚(64)=詐欺罪などで服役中=が通いつめており(♯3参照)、「アヤ」に“ゾッコン”だった時期もあったという。

カミンスカス受刑囚とモラレス容疑者(知人提供)

「アヤは小山と付き合ったことで金銭感覚がマヒして、その後も金の使い方が元に戻らなかったんじゃないかな。一度、銀座で小山とアヤと3人でメシを食う機会があったんだけど、そのときもカルティエで買い物していたし、相当な金をもらっていたと思うよ」(カミンスカス受刑囚の友人)

その一方、モラレス容疑者は客や店舗オーナーとのあいだに金銭トラブルを抱えており、逃げるようにフィリピンに一時期帰国していたこともあった。フィリピンで別の男性と“結婚”して子どもを授かるも、「G」が摘発されて閉店すると再び来日、2019年頃には上野のフィリピンパブで働くようになった。

「アヤは生まれた子どもはフィリピンに置いてきていて、旦那ともうまくいかず別れたということでした。『旦那はお金がなかった』『生活費にも困っていた』と話していましたが、別れた原因はアヤが浮気したからとも言っていました。

アヤはこのころ、『家賃が払えない。生活が苦しいからお金を貸してほしい』と私にも借金を申し込んできたことがあります。『ちゃんと働いているのになぜそんな苦しいの』と尋ねると、彼女は『いろいろ支払いがあって』と口ごもっていました」(前出・元同僚)

再逮捕されたデラ・クルース容疑者(本人SNSより)

元同僚だけでなく、客や知人にも金を借りていたモラレス容疑者は昨年、元交際相手で殺害された夫婦の長男とも金銭トラブルをおこしている。

また、殺害された夫は墨田区内で“会員制バー”を営んでいた。店の常連客は両容疑者の再逮捕を受け、肩を落とした

「マスターは、とても穏やかで優しい方で、常連客に愛される人柄でした。偏屈な客にも笑いながら話をあわせてくれたり、終電を逃したときは朝までつきあってくれてね…お客はみんな、あの店が大好きでした。だから3月3日は、早朝から有志の客が集まって店の片付けをしました。残ったボトルやグラスを整理したり、衣装とか備品のゴミ捨てをして。寂しいですね」

モラレス容疑者とデラ・クルース容疑者は調べに対し、「私は関係ない、やっていない」(モラレス容疑者)「その場にはいたが殺していない」(デラ・クルース容疑者)と容疑を否認しているという。

殺害された夫婦の夫が営んでいた会員制バー

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班