2月22日に行われた天下の奇祭、愛知県稲沢市の「国府宮はだか祭」。すべての厄を背負う神男は、7500人のはだか男たちが参加した「もみあい」を終えても大変です。
【写真を見る】「全身むち打ち状態」 大役を終えたばかりの「神男」に聞く はだか男たちの渦の中で感じていたのは 国府宮はだか祭
ことしの「神男」大佑起(おおくわ ゆうき)さん(37)が22日午後5時15分、無事に儺追殿(なおいでん)入りを果たしました。大さんは、最後の力を振り絞りはだか男たちに応えます。やり遂げた瞬間です。
日付はかわって23日午前3時。「夜儺追(よなおい)神事」です。神男にあらゆる厄をつぎ込んだ「土餅(つちもち)」を背負わせて、神社の外へ追い出し、途中で「土餅」を捨てることで、平穏を願うという神事です。
時は進み、午前9時ごろからは、神社に奉納されていた大鏡餅が切り分けられました。境内には、神男の大さんも姿を見せ、参拝者らと握手を交わしました。(参拝者)「厄を落としてもらおうと思って来た」「(きのうは)はだか男で出ていて、触れなかったので感激」
切り分けられた大鏡餅は、食べるとその年を無病息災で過ごせると言われ、大勢の参拝者らが買い求めていました。神男は「もみ合い」が終わっても、ゆっくりはできないのです。
(夏目みな美キャスター)「神男」の大役を果たしたばかりの大佑起さんに、生中継でお話を伺っていきます。大さん、本当にお疲れ様でした。皆さんの厄を引き受けて、その厄を落として大役を終えました。今どんなお気持ちでしょうか?
(神男 大佑起さん)もう本当にあっという間の、おこもりからの3日間だったかなと思っています
(夏目キャスター)頭の傷が少し痛々しく見えるんですが、体は大丈夫ですか(神男 大さん)首とかがちょっと痛いぐらいで、はい、全身むち打ちの感じです。
(夏目キャスター)激しいおつとめでした。大さんのお父さんの利仁さん、そして大さんがこれまではだか祭に参加するたびに、20年以上お世話になってきたという、宿元の橋本強さん、その息子の淳さんです。よろしくお願いいたします。まずお父さんの利仁さん、きのうのもみ合い中は、どこで何をしていらっしゃいましたか。
(神男の父 利仁さん)(愛知県清須市の)宿元の橋本さんの家でテレビを見ていました。間近で見たいという気持ちが先にあったんですけど、テレビで見ていて、やっぱりこれは現場では見られないなと思いました。でもやっと(儺追殿に)上がって、元気な顔が見られて、笑い声も聞こえたから、もう大丈夫かなと。
(大石邦彦アンカーマン)神男の親友の橋本淳さん、儺追殿の前でスタンバイしていたと聞きましたが。
(親友 橋本淳さん)もうとにかく、佑起を無事に儺追殿にあげさせたいという気持ち。それだけでしたね。
(大石アンカーマン)小さい頃から一緒でしたもんね。淳さんのお父さん強さんは清須でご覧になってたということですけども、どんな気持ちでしたか。
(宿元 橋本強さん)僕もお父さんとテレビの前で、もう本当にただ祈るだけでした。
(夏目キャスター)あらためて22日のもみ合いの場面を、皆さんと一緒に振り返っていきたいと思います。きのうの午後4時24分、神男が参道に現れて揉み合いが始まりました。
(大石アンカーマン)参道でのもみ合い、ご自身もいろんな想定をしていたと思いますけれども、想定以上だったのか、想定通りだったのかいかがですか。
(神男 大さん)「想定以上でした。17歳からもみ合いに出させてもらって、中心にいることが、途中からとかはあったんですけど、最初からはなかったので、ここまできついんだと。今までは神男の方に僕らが向かっていくという立場でしたけれど、僕が逆に向かわれる立場になると、こんなに違うんだと」
(夏目キャスター)「五感はどのようになってるんですか?音が聞こえているのかとか、触られている感覚があるのか」
(神男 大さん)触られてる感覚はあって、先輩方が「大丈夫だよ、今どうこうだよ」というアドバイスがずっと聞こえていて、みんなが「佑起、佑起」と叫んでくれてたので、それはずっと聞こえてました。
(夏目キャスター)楼門前も非常に激しいもみ合いになりました。私たちは何が起きたかわかっていなかったんですが、神男OBの津田敏樹さんが「神男が転んだ」とおっしゃったんです。このとき、何が起きたか覚えてらっしゃいますか。
(神男 大さん)多分僕の記憶がちょっと抜けてしまい、下に沈んでいってしまって、本当に亀のようになっていました。意識を失いかけました。けれどやっぱり「大丈夫だよ」という声が聞こえたので、すぐ目が覚めて、上に上がることができました。
(夏目キャスター)もみ合いクライマックスの儺追殿前です。このときは、意識はありましたか。
(神男 大さん)意識はありました。水がかかっていたのは覚えているので。いやもう早く上げてくださいっていう、早く入りたいってずっと思っていました。
(大石アンカーマン)このときは酸欠状態になるというふうにも聞きます。実際にやはり酸欠になったりはしたんでしょうか?
(神男 大さん)酸欠にはなりました。はい、2回か3回は酸欠になっていると思います
(夏目キャスター)大桑さんの背中が真っ赤だったことに、私たちびっくりしたんですけど、これ何があってこのようになったのか覚えてらっしゃいますか。
(神男 大さん)僕が渦の中で何回か倒れてしまい、でも「絶対に手を離すな」っていう先輩の声があったので、ひたすら掴んでたときに、引きずられた傷だと思います。
(夏目キャスター)ついに儺追殿に入りました。このときのお気持ちは。
(神男 大さん)いやもう最初は入ったのかどうかもわからなくて、抱えられたときに「上がったぞ」って言ってもらえました。なので「ようやく入ったんだ」と思って、もう本当に「上げてくれて、抱えてくれてありがとうございます」という気持ちでした。
(大石アンカーマン)大さんは月曜日におこもりに入って以降、数多くの神事を経験してまいりました。たくさんの方に触れられました。あらためてこの大役を務めた今の感想を聞かせてください。
(神男 大さん)本当に怒涛の3日間だったので、ただいろんな人に声をかけてもらって、いろんな人に「ありがとうございます」って言ってもらえて、もう本当に感謝するしか、(神男に)ならせてもらえたことが、感謝だなと思っています」
(大石アンカーマン)皆さん本当に感謝を伝えられますよね。さて、神男ですから、生活を何か変えるとか何かあるんでしょうか?
(神男 大さん)今回これだけ揉み合いがハードでしたので、これから体力作りを心がけていきたいと思います。
(大石アンカーマン)つまり、これからはだか祭に関わる際は、今度は神男を守っていくということでしょうか。(神男 大さん)そうですね。守っていきたいと思っています。