駅の構内や人が行き来する雑踏などで、わざと通行人に体当たりする人は「ぶつかりおじさん」と呼ばれている。
こうした被害について、弁護士ドットコムニュースがLINEで募集したところ、多くの体験が寄せられた。
そのうちの1人、都内在住の40代女性、城戸香さんは「ブランドバッグを持って、派手な格好をするようになってから、ぶつかられなくなった」と話す。
美容医療ライターの城戸さんは1年前まで、通勤に使う新宿駅の乗り換えで、ぶつかりおじさんの被害にあっていたそうだ。
「ぶつかられたのは合計4、5回くらい、午前8時半から9時ごろの朝の時間帯ばかりでした。後ろからも前からも」
あるときは、城戸さんがまっすぐ歩いていると、男性が前からやってきてぶつかられたという。
「普通なら私を避けてくるのに、急激にこちらに角度を変えて肩にぶつかってきました」
別の日には、駅のエスカレーターでも。
「左側に立って降りているときに、右側から降りてきたおじさんに後ろからバンとぶつかられました。私の前にも人がいたので、ドミノ倒しになりかねず、危なかったことを覚えています」
いずれもケガはなかったが、ぶつかられた衝撃で「身体の痛みよりも、その日1日イライラした」という。
朝のイヤな出来事を職場で話したところ、ほかにも被害は少なくないことがわかった。同僚女性たちから「怖いから言い返せない」「何か言いたくても遅刻したくないんだよね」などの声があったそうだ。
特に小柄な女性ほど被害に悩まされているようだという。
城戸さんは「朝に遅刻できず、こんなトラブル対応に時間をかけていられない状況につけこむことを狙った行為ではないでしょうか」と話す。
こうした体験を夫にも相談したところ「格好じゃないか?」と指摘された。

「たしかに、サングラスやハードな格好で通勤したときは一度もぶつかられていません。被害に遭うときは、いつも女性らしい普通のファッションでした」
それから、見た目にもわかりやすいシャネルやサンローランなど、ブランドロゴが目立つバッグと、派手な柄のワンピースやジャンプスーツで通勤するようになると、ぶつかりおじさんの被害はまったくなくなったという。
「バッグというより、ファッションでぶつかる女性を選んでいる気がします」
城戸さんは「痴漢の場合は派手なファッションでも、電車を降りる際にペロンと体を触られたりする」といい、痴漢とぶつかりおじさんは生態が異なるのではないかとも指摘する。
これまで遭遇したぶつかりおじさんたちに共通する特徴は、だいたい40代過ぎくらい。
「スーツを着ている人はおらず、ラフな格好でした。マッチョではなく細い人が多かったですね」
彼らの動機について、城戸さんは「日常で抑圧されたストレス発散では。普段はおとなしい男性なのかもしれません」と推測する。
「まずは防犯カメラを駅や街中に増やしてほしいです。そして、カメラによって身元が割れるのであれば、ちゃんと処罰してほしいです。その場で注意して激昂されるのも怖いのです」