「笑う門には福来たる」と昔からいうように、笑顔には幸運を引き寄せるパワーがあるようです。今回は、佐藤綾子氏の著書『人生がうまくいく笑顔の教科書 科学が証明する笑顔のパワー』(ごきげんビジネス出版)より、家族への笑顔の重要性について解説します。
大手の介護つき住宅で働くTさんは、社内ではいつも柔和な笑顔です。彼女自身が元ケアマネジャーという高齢者に直接接する仕事だからでしょうか。忙しくてもいつもニコニコ。
私は彼女と二度会ったことがあり、毎回笑顔で「アヤコ先生、お世話になりまして」と丁寧にご挨拶を受けました。
「なんて素敵な女性だろう。もし彼女にご家族がいれば、ご家族もきっと毎日ハッピーだろうな」と思っていました。
ところが、会合があって3回目に会ったとき、「実は…… 」と相談された話を聞いてびっくりしました。
「子どもがいつも部屋の片付けをしないのです。そのため、朝出るのが子どもも私もギリギリで遅刻しそうになります」
ほぼ毎日怖い顔で怒っていたら、ご主人から「そんな怖い顔ばかりしていたら、子どもがのびのびできない。僕も見ていて落ちつかないよ」と言われたとのこと。職場でいつも笑顔の彼女にしてみれば、「家の中までニコニコするのは大変ですよ」と言うのです。
ある日、雑誌の連載に「笑顔」について書いたところ、担当編集者からメールが届きました。「あの記事に、いちばん胸がつまったのは私でした」と。
話を聞くと、彼女には小学2年生の娘さんがいて、編集者のAさんは仕事と家事で忙しい。子どもが散らかしたり、ぐずぐずしていたりすると、つい、きつい顔で叱ってしまう。そんなことが何度か続いたあとで娘に泣きながら抗議されました。
「ママ、いつも怖い顔で怒らないで。悪いことをしたのは、わかってる。だけどそんな怖い顔しないでよ」と。
ハッと気づいたAさんは、叱り方を変えました。内容は短く、やさしい声の調子でわかりやすく言ってから、そのあとすぐに笑顔で、「じゃあ、今度は気をつけてね」と変えてみたそうです。すると、娘さんもつられて「オッケー」と言って笑う。そんなことをしていたら、叱っていた内容も自然になおっていたそうです。
もしあなたが普段から、「家族は身近な存在だから、わざわざいい笑顔を工夫しなくても大丈夫だろう」と手抜きをしているのなら、家族相手ほどいい笑顔をしようと数日試してみませんか? 相手が夫でも、妻でも、子どもでも、恋人でも、きっとこれは、いい効果をうみます。
その瞬間は、「何それ急に?」と驚かれるかもしれませんが、結局はお互いの安心になって、本当に心がつながる素敵な効果が待っているでしょう。
佐藤 綾子株式会社国際パフォーマンス研究所 代表