おととい羽田空港で起きた航空機事故。海上保安庁の航空機が事故の直前、滑走路の中でおよそ40秒間停止していたとみられることが新たに分かりました。独自映像と証言から、乗客らの脱出までをひも解きます。
羽田空港の滑走路上で、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突し、海保機に乗っていた機長以外の5人が死亡した事故。JNNのカメラは、海保機が滑走路に向かって進む様子を捉えていました。
衝突およそ1分前。画面右から左へゆっくりと進むのが海保機。動きが止まったその場所は、事故現場となった「C滑走路」内とみられます。およそ40秒後。着陸してきたJAL機と衝突、炎上しました。
海保機はなぜ、滑走路内にいたのか。
きのう、そのヒントになるとみられる“4分半の交信記録”が公開されました。
衝突の4分半前。管制はJAL機に対し、「34R」=「C滑走路」への進入を続けるよう指示、JAL機も応じます。
JAL機(JAL516)「JAL516、滑走路34Rに進入を継続します」
そして衝突2分半前。双方が「着陸支障なし」と確認していることが分かります。
続けて管制は、海保機に対し。
管制「JA722A、東京タワー、こんばんは。(離陸の順番は)1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」海保機(JA722A)「滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう」
つまり管制は、JAL機には着陸の許可を出す一方、海保機に対しては、滑走路内ではなく、滑走路手前にある停止位置まで移動するよう指示していたことになります。
海保機側の唯一の生存者、宮本機長は、「管制官から離陸の許可が出ていた」と話していることが関係者への取材でわかっています。
なぜ食い違うのか。小林氏は“可能性のひとつ”と前置きしたうえで。
航空評論家 小林宏之氏「(海保機側が)何かの拍子に思い込み、勘違いをしてしまった。それ以外になかなか考えられない。(Q.勘違いを誘発してしまうやり取りは?)特になかったと思います」
JAL機の乗客と乗員はあわせて379人。その全員が衝突してからわずか18分ほどで脱出しています。
乗客「すごく不安で、脱出できない可能性もあると思ったので死を意識した」
JAL機が羽田空港の滑走路に降り立ったのは、おととい午後5時47分ごろ。
乗客「着陸した瞬間『ガン』というか、体が前に押し出されるような」「まず左側の翼の方から出火した」
映像では、機内の窓から赤い大きな炎が確認できます。瞬く間に機内には白い煙が充満しました。
「いま消火するから大丈夫だよ。いま消火しているよ」「早く出してください」「開けてください、神様…」
JALによりますと、機体に設けられていた非常口は左右あわせて8か所。ただ、窓の外に炎が見えるなどしていたため、安全な非常口はどこか判断していたといいます。
乗客「煙の臭いが漂っている中で、ドアが開かなかったので、みんなパニックだったと思います」
乗員たちは乗客一人一人に気を配りながら、煙を吸ってしまわないよう呼びかけを実施。
「鼻と口を覆って姿勢を低くしてください」
その後、安全と判断した、最前列と最後列あわせて3か所の非常口から脱出が始まりました。
乗客「CAさんの指示が凄くて、『落ち着いてください。大丈夫ですよ』というので、みんな指示に従った。荷物を取り出そうとした人がいたんですけど、『いや、荷物はいいから早く出てくれ』という感じで、みんな冷静に脱出していた」
その後、機長が最後に滑走路に降り立ったのは、衝突からおよそ18分後の午後6時5分ごろ。その後、機体は激しい炎に包まれました。
一連の対応について専門家は…
航空評論家 小林宏之氏「無理に早く脱出させようとしてドアを開けてしまったら、逆に外の火で犠牲になる人が出たかもしれない。最初にパニックコントロール、これがしっかりできたから、冷静に皆さん行動し、全員が無事に脱出できたのではないか」