遠くから見れば、まるで本物にしか見えない――。
「可搬式オービス」LSM-300は1台約1100万円と高価で、奈良県全域で3台しかない。各署に使用の機会が回ってくるのは2~3ヵ月に1回……。この苦境を、珍アイディアで乗り越えつつある警察署がある。上の写真は奈良県警吉野署が導入した新兵器「はりぼてオービス」だ。交通課の担当職員が解説する。
「可搬式オービスを置くことで得られる速度抑制効果を、ダミーを使って得られないかと若手署員二人がアイディアを出し、提案者の一人が3ヵ月間かけて製作しました。モデルのLSM-300を製造する、東京航空計器にも許可を取っています。署内にあった厚紙をラミネート加工してボディーを作ったので、費用はゼロ円。ちなみにストロボの部分はカップの空き容器を黒く塗装したものです」
吉野署によれば、はりぼてオービスを設置した地域の駐在所に近隣住民から「通行車両のスピードが落ちた」との声が寄せられているという。
情報サイト『オービスガイド』を運営する有限会社パソヤ代表の大須賀克巳氏も一定の評価をしている。
「ドライバーはオービスと思(おぼ)しきものを見ればブレーキを踏むので、速度抑制にはなるでしょう。難点は実際の速度は測れないので切符を切れない点ですね」
まだほかの署が追随する流れはないが、吉野署は「交通事故の防止も期待できる」と胸を張る。はりぼてながら、効果は「本物」か!?
『FRIDAY』2023年12月22日号より