リニューアルオープンした皇居三の丸尚蔵館(千代田区・皇居東御苑内)で開催されている「皇室のみやび」展。皇室に伝わる美術工芸品を中心に、8カ月にわたって開催中です。
作品数が多いので4期にわけられていて、たとえば第1期(11月3日~12月24日)は「蒙古襲来絵詞」、伊藤若冲「動植綵絵」(第4期も)、高階隆兼「春日権現験記絵」、第2期(2024年1月4日~3月3日)は川合玉堂「昭和度 悠紀地方風俗歌屏風」、横山大観「日出処日本」など、珠玉の美術品が集まります。
皇室は最高峰の美術品を代々受け継いでいく、という存在意義もあるように思います。展示図録によると、三の丸尚蔵館は、上皇陛下と香淳皇后が約6000点に及ぶ美術工芸品を国にご寄贈になり、それらを宮内庁が所管したことを契機として設立されたとのこと。
秩父宮家、高松宮家、三笠宮家など各宮家からも名品が次々と寄贈されています。買い上げたり献上されたりで集められた貴重な美術工芸品を国に寄贈し、惜しげなく国民に公開してくださるとはノーブレス・オブリージュ精神の極み。
そういえば秋篠宮家も、かつて庭に巨大なニワトリのモニュメントがあったそうですが、きっと個性的な名品がいつか寄贈されるのでは? と一庶民ながら期待しています。また、皇室の一員として、最高レベルの美術工芸品に触れてこられた眞子様が、その豊かな感性をアメリカの美術館で生かせる日が来ることを祈ります。
第1期は、特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代を迎えて 天皇皇后両陛下が歩まれた30年」も同時開催されていました。天皇皇后両陛下の30年の軌跡とゆかりのお品を紹介する企画です。
11月10日には天皇ご一家も展示をご覧になったとか。愛子様がドレスの模様についてご質問されたり、雅子様が「久しぶりに見た気がします。懐かしいですね」とおっしゃられたり、和やかな空気に包まれていたようです。
23年5月、天皇ご一家が日本橋タカシマヤで開催された御成婚三十年記念の特別展をご訪問された時は、天皇陛下と雅子様の当時の婚約会見の写真を前に、愛子様が「再現!」とプロポーズの言葉の再現を無茶ぶりされる一幕がありました。今回の皇居三の丸尚蔵館の展示では、とくに再現をリクエストするスポットはなかったようです。
御即位の儀式で用いられたご装束や調度の品などが展示。やんごとなき儀式で使われた食器「『大饗の儀』天皇陛下の御台盤」や、「御即位記念のボンボニエール」など。「愛子内親王殿下『着袴の儀』の袿袴(けいこ)」は華やかなピンク色が目を引きます。
令和の天皇家は思い出の品々を国民とシェアしてくださいます。「天皇陛下がご幼少時に使用されたヴァイオリン」や、天皇陛下が山岳雑誌に寄稿された記事なども展示。天皇陛下の文武両道ぶりを改めて実感させられます。
今回の展示で珍しかったのは、愛子様が2018年の夏、学習院女子中・高等科の夏期海外研修プログラム「イートン・カレッジ・サマースクール」に2週間ほど参加された時の写真。ご自分で撮影された写真を何枚かまとめられて額に入れられています。
その内容は「ストーンヘンジの形を模倣するイートン・スタッフ」「オックスフォード大学クライストチャーチ・コレッジのステンドグラス」「コヴェント・ガーデンのお店」「天皇陛下が学ばれたオックスフォード大学マートン・カレッジ」「イートン校から配られたウォーターボトル」……など、公式写真かと思うくらいまじめでストイックな構成でした。
映え系のうわついた写真などはないです。デザートの写真が一点入っているくらいでしょうか。同級生との写真などもなく、個人情報に配慮し、出しても問題ない写真を厳選されています。これが表のアルバムだとしたら、どこかにプライベートな写真を集めた鍵アカのSNSなどあるのでしょうか。
18歳の頃「4℃」のシルバーネックレスを大切な人からプレゼントされたことなどを投稿されていたSNS(※)は今も存続しているのでしょうか。若い女性として、青春のエネルギーを発散する場所があってほしい気もします。※女性セブン2023年3月16日号
愛子様の最近の青春についての話題だと、9月にお忍びで男女6名で「東京ドームシティアトラクション(旧:後楽園ゆうえんち)」をご訪問された、というニュースがありました(週刊女性2023年10月3日号)。ユニクロとポールアンドジョーのコラボの約3000円のガーリーなブラウスにストレートデニムを合わせたという愛子様のファッションも話題になりました。
最近の若い世代はゆとりのあるシルエットを選ぶそうですが、愛子樣も流行に合わせて、ゆったりめのシルエットのデニムを着用されていたのが印象的でした。公の場では、クラシカルなファッションでいらっしゃいますが、御学友と遊ばれる時はカジュアルダウン。那須でのご静養の時は、約7万円の花柄のワンピースから2490円のGUのワンピースまで華麗に着こなされていました(AERA.dot 2023年9月10日配信記事)。かつて佳子様のファッションセンスに憧れていらしたという記事もありましたが、今はご自身のスタイルを確立されているようです。
一方、展示では天皇家にスポットが当たりがちですが、秋篠宮家では悠仁様の高校生活に注目が集まっています。9月の筑波大学附属高校の文化祭では、クラス合唱で大ヒット映画『君の名は。』のエンディングで使用されている『なんでもないや』(RADWIMPS)を歌われました。文化祭には秋篠宮ご夫妻と佳子様も来場し、悠仁様を撮影などされていたそうです。家族に愛されているのが伝わってきますが、思春期なのに家族総出で文化祭に来られて見守られるのは恥ずかしかったのでは? と拝察します。
悠仁様は修学旅行中、一人で寂しそうにしていた姿が同級生によって撮影されて、流出してしまいました(週刊女性2023年12月26日号)。もしこれが学習院だったら……御学友のリテラシーもしっかりしていてこのような事態は起こらなかったかもしれません。愛子様と一緒に遊園地に行った学友から写真も何も流出していないところに、さすがの学習院スピリットを感じます。
でも、やんごとなき方も、孤独な時がある、というのは一般人にとって勇気を与えられる場面でもあります。気品を保った高貴なぼっち姿で、陰キャの陰はインペリアルの略、とも言えます。たとえ友だちが少なくても、悠仁様にはトンボという存在がいるのできっと寂しくありません。論文も執筆された学者肌の悠仁様は、学友と他愛ない話をするよりも、トンボの研究を進めたい思いだったのでしょう。
皇室の未来を背負って立つ愛子様と悠仁様。皇族の人数が減っていく中、このお二方は貴重な存在であることはまちがいありません。健やかに過ごされるように、これからも僭越ながら優しく見守らせていただきます。
———-辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)漫画家/コラムニスト武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。———-
(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)