この年末年始の東海道・山陽新幹線「のぞみ」が全席指定になる。期間は12月28日から1月4日まで。
JR東海は、帰省や旅行によるホームの混雑があったとして、事前予約を促し、多くの人に「座って」乗車してもらおうとしている。原則として、指定の特急券を持たない客は乗車できないが、自由席特急券を持っている人もデッキに立つなどして乗車自体は可能だ。
時間帯などの状況によっては、指定席に誰も座っていないこともありえる。だったら指定席特急券がなくても「空いていたら座っていいのでしょうか?」。JR東海に聞いた。
本題に入る前に、のぞみの予約状況は上々のようだ。
年末年始の予約状況は173万席(これは2018年度比117%)となり、コロナ前とくらべても多くの予約がされている(12月12日発表時点)。
実は、全席予約制の導入は今回が初めてではない。
「2003年10月の品川駅開業に合わせてダイヤ構成を『のぞみ』主体に変更したことをきっかけに『のぞみ』に自由席を設定しました。それ以前は全席指定席であり、2003年9月以来、約20年ぶりとなります」(JR東海)
JR東海が説明する再導入の背景は主に3つ。
(1)東海道・山陽新幹線の3大ピーク期では、日・時間帯によって指定席が早い段階で満席になるなど、ピーク期において、指定席ニーズが増している。
(2)2020年から、東京~新大阪間で「のぞみ12本ダイヤ」を活用できるようになり、東海道・山陽新幹線を直通する列車を増発する等の方法で、3大ピーク期にはこれまで以上に多くの座席を用意できるようになった。
(3)EXサービスの利用が増加。すでに指定席利用者の約半数がEXサービスを利用。10月1日からEXサービスでの1年前予約がスタートし、さらに便利に指定席を予約しやすい環境が整った。
のぞみ1列車あたり、250席あった自由席が指定席に変わることで、年末年始の普通車指定席は1118席になる。
とはいえ、指定席が満員だとしても、自由席特急券があれば、普通車のデッキなどで「立席」で利用することは可能だ。状況によって、客室内の通路に誘導する場合もあるという。
その際、誰も座っていない指定席があれば、座ってもいいのだろうか。
JR東海は”ダメだ”と答える。
「自由席特急券をお持ちのお客様が全席指定席の『のぞみ』にご乗車の場合は、お座りいただける座席はございません。普通車のデッキ等で立ってご利用いただくことになります。
全席指定により普通車指定席の数が1列車あたり3割増加し、列車の運転本数も多く設定することで、多くのお座席をご用意しています。そのため、ご希望の列車が満席の場合は、ご利用日・時間帯をずらして空席のある列車のご予約をご検討いただきたいです」
混雑状況によっては、運用が変わることもあると考えられ、いずれにせよ駅係員の案内に従ってほしいとしている。
自由席特急券を指定席に変更することも、場合によっては可能だ。
「変更ご希望の際は、主な駅の窓口にお申し出いただきたいです。車内における取扱いについては、お客様がお持ちのきっぷの種類や、列車の空席状況・予約状況により対応が異なるため、一概にご回答できかねますが、運送約款に則りご案内をさせていただきます」
実は、もう1点気になることがある。年末年始の「のぞみ」全席指定期間中に、人気キャラクター「おぱんちゅうさぎ」とコラボした「お子様連れ専用車両」(のぞみ12号車)も運行するのだ。
12月25日~1月8日の間、計38本が設定される予定で、購入の条件は「おとな1名様以上と小学生以下のお子さま(乳幼児含む)1名様以上」となっている。
リリースによれば「車内はお子さま連れのお客様だけですので、周囲に気兼ねする心配なくご乗車いただけます」とある。
混雑状況などによって、自由席特急券をもった乗客が「お子様連れ専用車両」の通路にやってくることもありえるのだろうか。
そして、あるとすれば、自由席特急券購入者であっても「おとな1名以上と小学生以下のお子さま1名以上」に限られるのだろうか。賑やかなファミリー層に囲まれながら真ん中の通路で大人が立ち続けることもありえるというのか。
JR東海は、これまでの回答と同じく、原則として「お座りいただける座席はない」とした。「普通車のデッキ等で立ってご利用いただくことになりますが、混雑状況により、お客様を指定席車両の客室内の通路にも誘導する場合もございます」
「個別の列車・車両におけるご案内については、ご利用状況等により異なるため一概にご回 答しかねますが、指定席をご利用のお客様のご迷惑とならないように配慮いただくとともに、車掌や駅係員の案内や誘導にご協力いただきたいです」
年末年始の全席指定で快適な旅を混乱なく楽しむには、何より駅係員の指示に従ってほしい。