《アメフト部関係各位 つい先ほど大学本部から連絡があり、本日行われた競技スポーツ運営委員会の決定により、アメフト部は廃部となることが決まりましたので報告します》
この一文から始まるメッセージで部員は廃部を知った。
送り主は日本大学アメリカンフットボール部の中村敏英監督。11月28日夜のことだった。メッセージはこう続く。
《決定現時点ではこれ以上の情報はいただけておりません。しかし、廃部となることを先に外部から知ることがないように、まず結論だけでも先に連絡するようにとのことでした。
今後のことや、経緯や理由については改めて大学から説明があるとのことでした。続報が入りましたらご連絡させていただきます 監督中村》
日大アメフト部では、7月下旬に薬物問題が浮上し、8月5日に麻薬取締法違反で部員1人が逮捕。10月と11月にもそれぞれ1人ずつ逮捕者を出した。
日大は林真理子理事長ら経営陣が会見を行い、火消しに奔走したが、しばらくして林理事長と澤田康広副学長の対立が表面化。林理事長が澤田副学長に辞任を迫る音声テープが流出するなど、泥仕合と化し、ついには澤田氏が
「パワハラを受けた」
と林理事長を提訴した。現役の日大学生は
「何をやっているんだ、という気持ち。問題を起こしたのはアメフト部の学生だが、大人が対処を間違えたせいで、騒ぎが大きくなった。日大に通う者として恥ずかしさしかない」
と憤る。学生曰く、両親や地元の友人からも心配されているという。
現役のアメフト部員はあまりにも唐突な「廃部決定」に不信感を募らせる。
薬物問題発覚後、部では毎週ミーティングが行われており、学生が一緒になって再発防止策を練っていたからだ。
「それがいきなりの廃部ですからね。意味がわからない。監督のメッセージには『こうなってしまい申し訳ない』という謝罪の言葉も書かれていなかった。(’18年の)悪質タックル問題で辞任した内田正人監督だったら、大学側と掛け合っていたと思う。こんなにあっさり部が終わってしまうなんて……正直実感がない」(現役のアメフト部員)
世間の日大に対する目は薬物問題を機に厳しくなっており、日本私立学校振興・共済事業団は’23年度の助成金を全額不交付にすることを決めた。林理事長としては、アメフト部を廃部にすることで騒動に区切りをつけたかったのだろうが「トカゲの尻尾切り」のようにも映る。
日大アメフト部は1940年に創部。『フェニックス(不死鳥)』の愛称で知られ、甲子園ボウルで21度の優勝、ライスボウルで4度の優勝を誇る名門中の名門だ。前出の現役部員が語気を強めて語る。
「逮捕された3人に『全部を背負わせたな』という怒りしかない。もちろん犯した罪は批判されて然るべきだが、彼らは今後の人生でずっと悔いることになると思う。80年以上の伝統あるチームが消滅するというのは、それだけ重いこと。
学生が背負えるレベルを超えていると思う。場当たり的に廃部にしておいて、無関係な部員に対する配慮も全く感じられない」
悪質タックルの問題のときも、最終的には部員が実名、顔出しで告発したことで全容が判明した。日大行事にも参加しているOBの話。
「日大の隠蔽体質は変わらない。今回もアメフト部を廃部にして、部員に責任を背負わせ、幕引きするつもりなのだろう」
日大は12月4日に改善計画や処分の進捗を報告する記者会見を行う。こんな調子で強まる逆風を鎮めることはできるのか――。