X(旧Twitter)で「海外出稼ぎ」と検索すると、高単価な条件を謳う、若い女性向けの怪しげな求人案件が多数出てくることをご存じだろうか。実は、こうした案件のほとんどが海外風俗店への出稼ぎである。
コロナ禍によって国内の性風俗産業が儲からなくなったことや、国内での夜職においては顔出しやSNSアカウント運用が当たり前となってしまったことなどから、いまこうした案件で出稼ぎに行く日本の若い女性が後を絶たない。
では女性たちは具体的にどういった方法で海外出稼ぎをしているのだろうか。
「まず求人に応募するまでの方法ですが、海外の風俗店から仕事を取ってきて女性に紹介する専門のエージェントを経由することが多いです。国内のキャバクラやソープといった風俗店で働く女性同士の間でエージェントを紹介し合い、直接エージェントに申し込む方法と、XなどのSNSに掲載されている求人経由で、エージェントと繋がり申し込む方法。大別するとこの二つに分けられます。
エージェントは海外の店舗と直接やり取りを行い、女性の出国から渡航先での滞在場所の指定、勤務する店決め、現地で起きたトラブルへの対処など全面的なサポートもします。ですが、しっかりサポートを行ってくれるエージェントもいれば、事前説明を詳しく行わず、現地でトラブルが起きても対応せずに行方をくらましてしまうような粗悪なエージェントもいるようです」
photo by iStock
たかなし氏いわく、エージェントはまさに“ガチャ”のように当たり外れが激しいそうだ。
「以前、芸能関係者の間で海外出稼ぎが流行していた頃は、粗悪なエージェントの話はほとんど聞いたことがありませんでしたが、最近では事情に詳しくない一般人へと広がったことから、エージェントの質も落ちているのでしょう。海外の店と直接会って取引することなく、メッセージアプリのみで店側とやり取りするエージェントもいるようで、信頼度・安心度の低さが目立ってきた印象を受けます」
例えば、海外の滞在期間についてエージェントから説明を受けていなかったことが原因で、トラブルに巻き込まれてしまうといったケースがあるという。
「海外出稼ぎをする際、就労ビザを取得しないので、1つの国に長期で滞在することは摘発される恐れがあります。観光ビザの最短の有効期間は15日なので、1つの国に滞在するとしても最高で2週間だという説明をエージェントから受けることが多く、2週間滞在して働いたら別の国へ出国するといったように国を転々としながら、数カ月間海外に出稼ぎに行く女性もいます。
しかしなかにはエージェントの説明不足や知識不足が原因で、観光ビザの期限を過ぎた状態で長期に渡って違法滞在してしまう女性もいて、こうなると逮捕されて大ごとになってしまうリスクが高まってしまうわけです。滞在方法について詳しく説明されない、出国や入国の説明がされないなど、粗悪なエージェントを何も知らずにただ信じて頼ってしまうと、現地でトラブルが起きたときに取り合ってくれないというような、女性側に大きなリスクが降りかかってしまうのです」
photo by iStock
たかなし氏によると、約1年前に海外出稼ぎで起きた有名なトラブルがあったそうだ。
「アメリカに出稼ぎに行った女性が、空港で給料として受け取った現金をすべて没収されてしまったというトラブルがありました。100万円相当額を超える現金を他国へ持ち込む際は必ず税関への申請が必要なのですが、その申請を忘れてしまったために、稼いだお金を全額没収されてしまったそうです。さらに、エージェントも売春を斡旋している立場なので、取り調べられることを恐れて、助けてくれなかったようです」
海外に渡航する際の注意点やビザについての知識など、何も知らずに無知なままエージェントの指示に従うだけの女性が多く、トラブルも増えているとのことである。
最近、海外出稼ぎに行く女性が増えたことで、一般の旅行客にまで影響が出ているという。
「海外出稼ぎ行為が急増しているため、各国も取り締まりを強化しているようで、最近ではアメリカへ渡航する際の手荷物検査が厳しくなったそうです。特に女性一人で渡航する際、今まではキャリーケースの中身を職員が検査するようなことはなかったそうですが、最近は隅々まで調べられることもあると聞きます。アダルトグッズを持っていただけで、出稼ぎだと疑われて入国できないといったケースもあるようです」
今年9月には、ハワイへ観光目的で渡航した日本人インフルエンサーが入国拒否され、強制送還される事件が報じられた。この女性によると指紋、唾液、写真を撮られ、まるで犯罪者のような扱いを受けたそうだ。この事件の背景にも、海外出稼ぎをする日本人が急増したことから、海外での売春行為を疑われた可能性があると考えられるだろう。
photo by iStock
「就労ビザなしで働き、収入を得ることはもちろん違法ですし、出稼ぎ先のお店のなかには違法な経営を行っているところもあります。海外出稼ぎをする人が増えて、“みんなやっているから大丈夫”と考え、犯罪行為をしているという自覚が薄い女性が増えている気がします。出稼ぎ行為は自己責任ですので、自身がリスクを被ることについてしっかり理解する必要もありますが、何より一般の旅行客にまで影響が及んでいて、関係ない人にまで迷惑をかけているということももっと考えてほしいです」
――まず海外出稼ぎに興味を持つ女性に、ほとんどの出稼ぎ行為は違法・犯罪だということを伝えていくべきだろう。そのうえで、一般の旅行客にまで迷惑をかけていることも周知していくべきなのではないだろうか。
そもそもなぜ出稼ぎへ? 関連記事「『1ヶ月500万円』海外風俗店にハイリスクな“出稼ぎ”へ行く若い女性が急増…その知られざるワケ」からお読みいただけます。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)