鶏卵で財を成し、惜しげもなく絵画、中国陶磁器、日本画などに資産を投じて日本有数の美術品コレクターとなったイセ食品前会長の伊勢彦信氏(94歳)が、苦しんでいる。
商品名「森のたまご」で知られるイセ食品は、昨年3月、会社更生手続きに入った。負債総額は約453億円。ブランド力がありコロナ禍という特殊要因だったために、スポンサーも決まって再生に向けて歩み出したが、残る課題が総額1000億円ともいわれる美術品の帰属を巡る争いだった。
管財人は、「イセコレクションは会社のもの」と主張し、伊勢氏は「自分のカネで集めた」と個人所有を譲らなかった。
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結局、1年8ヵ月もの間「共同管理」としていたが、しびれを切らした裁判所が乗り出す形で、11月13日、米ニューヨークのサザビーズでオークションにかけられた。モネの「川岸のポプラ」(約40億円)、シャガールの「街の上空」(約20億円)など4点が約75億円で落札された。
イセコレクションは800点に及び、「伊勢さんは自分が思い入れを持って集めたコレクションが散逸するのを恐れている」(画商)というが、精査すればするほど伊勢氏の会社への借金は膨らんでおり、「透明な公開の場(オークション)での売却」が、今後も続くといわれている。
「週刊現代」2023年12月2・9日合併号より