もし「今年の不祥事大賞」があったら、「ビッグモーター」は間違いなく最有力候補だったろう。あの仰天会見から5カ月ーー。兼重親子の動静はようとして知れない。一方、残された社員たちは、前社長への忠誠心の高さで知られる「暴走族上がりの新社長」が必死に奔走する姿を冷めた目で見ているという。
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【写真】海外に逃亡? 幹部らとゴルフを楽しむ“2代目息子”の兼重宏一氏会見には息子も出席する予定だった 今年7月に開かれた記者会見の舞台裏を同社関係者が明かす。「実は前日まで幹部たちには『兼重宏行前社長と息子の宏一前副社長が並んで出席する』と伝えられていたんです」

ビッグモーターで不正が横行するようになったのは、2018年に父親で創業者の宏行氏が息子の宏一氏に社長業を任せるようになってからだ。早稲田大学卒業後に渡米し、MBAを引っ提げ帰国した宏一氏は副社長として実権を握ると、除草剤まで投入された“恐怖の環境整備点検”を実施。さらにLINEを用いた過剰なノルマ要求で次々と社員たちを追い込んでいった。ついには一部の社員がゴルフボールを使った不正行為にまで手を染めてしまったのである。記者会見で社員に責任をなすりつけるような発言を繰り返した兼重宏行前社長 宏一氏が会見に出席すると聞いた社員たちは、心の中でガッツポーズをしたという。「みんな宏一氏には散々な目に遭ってきたから、彼がマスコミから集中砲火を受ける姿が楽しみでした。朝からソワソワしている社員もいたくらい。けど、当日いざテレビをつけると……」(ビッグモーター関係者)こっそり海外へ? 父親しか出ていないーー。しかも宏行氏は全国に生中継しているというのに、社員に責任を転嫁する発言を連発し出した。”ダメだ、この親子は…”。社員たちは一様に天を仰いだという。あれから兼重親子はどう過ごしているのか。「兼重さんは会見の前日にこっそり宏一氏を海外に逃がしたと噂されている。兼重さんも自宅に引きこもっているのか全く様子が伝わってこない。会社の人間で連絡を取り合っているのは新社長くらいではないか」(同) ”ビッグモーターの高倉健”こと和泉伸二新社長である。和泉氏は兼重氏への忠誠心でトップに上り詰めた人物として知られる。「かつて山口県内で”最強”と恐れられた暴走族を率いていたと言われています。コテコテの広島弁で任侠道にかぶれたようなことを言う人ですが、男気があると下からは絶大な信頼がある。自分を拾って育ててくれた兼重さんに心酔していました」(同) 和泉氏は社長就任後、全国200店舗の行脚を開始。「全ては経営陣の責任です」と社員たちに頭を下げ、「もう一度みんなでこの会社を立て直しましょう」と訴え続けた。和泉氏を慕う社員の中には、「なんで和泉さんがこんな目に遭わなければならないんだ……」と涙する者もいたという。給与が保証されている年末まではゆっくりと… 一方、「無駄な足掻き」と見ていた社員もいたようだ。「店舗を巡回中にお客さんを見つけるといちいち近寄って頭を下げにいくらしく、『恥ずかしいから止めてくれ』という声をよく聞いた」(同) まだ5000人の社員が辞めずに残っているが、「会社の未来を信じている人は少ない」と関係者は続ける。「人材流出を防ぐため、会社は業績悪化後も前年度に支払っていたインセンティブ分の補填を今年の年末まで保証している。なので、いずれは転職するつもりだけど、とりあえず年末までは残ってゆっくり過ごそうと考えている社員もいます」今月になって退職者が増え始めた 確かに今はノルマなど求められないし、客は激減しているので仕事は楽と開き直る者もいるのだろう。「有休を消化している気分の人はそこそこいますよ。ただ、そんなお気楽な時間も年の瀬まで。もともと流しの営業マンみたいな人が多いので、『そろそろ次に行くか』と動き出している。今月から急に退職者が増え始めたと聞いています」(同) 現在、買収に意欲を燃やす伊藤忠商事の岡藤正広会長の動向に注目が集まっているが、泥舟と化したこの会社にどの程度の値がつくのだろうか。デイリー新潮編集部
今年7月に開かれた記者会見の舞台裏を同社関係者が明かす。
「実は前日まで幹部たちには『兼重宏行前社長と息子の宏一前副社長が並んで出席する』と伝えられていたんです」
ビッグモーターで不正が横行するようになったのは、2018年に父親で創業者の宏行氏が息子の宏一氏に社長業を任せるようになってからだ。早稲田大学卒業後に渡米し、MBAを引っ提げ帰国した宏一氏は副社長として実権を握ると、除草剤まで投入された“恐怖の環境整備点検”を実施。さらにLINEを用いた過剰なノルマ要求で次々と社員たちを追い込んでいった。ついには一部の社員がゴルフボールを使った不正行為にまで手を染めてしまったのである。
宏一氏が会見に出席すると聞いた社員たちは、心の中でガッツポーズをしたという。
「みんな宏一氏には散々な目に遭ってきたから、彼がマスコミから集中砲火を受ける姿が楽しみでした。朝からソワソワしている社員もいたくらい。けど、当日いざテレビをつけると……」(ビッグモーター関係者)
父親しか出ていないーー。しかも宏行氏は全国に生中継しているというのに、社員に責任を転嫁する発言を連発し出した。”ダメだ、この親子は…”。社員たちは一様に天を仰いだという。あれから兼重親子はどう過ごしているのか。
「兼重さんは会見の前日にこっそり宏一氏を海外に逃がしたと噂されている。兼重さんも自宅に引きこもっているのか全く様子が伝わってこない。会社の人間で連絡を取り合っているのは新社長くらいではないか」(同)
”ビッグモーターの高倉健”こと和泉伸二新社長である。和泉氏は兼重氏への忠誠心でトップに上り詰めた人物として知られる。
「かつて山口県内で”最強”と恐れられた暴走族を率いていたと言われています。コテコテの広島弁で任侠道にかぶれたようなことを言う人ですが、男気があると下からは絶大な信頼がある。自分を拾って育ててくれた兼重さんに心酔していました」(同)
和泉氏は社長就任後、全国200店舗の行脚を開始。「全ては経営陣の責任です」と社員たちに頭を下げ、「もう一度みんなでこの会社を立て直しましょう」と訴え続けた。和泉氏を慕う社員の中には、「なんで和泉さんがこんな目に遭わなければならないんだ……」と涙する者もいたという。
一方、「無駄な足掻き」と見ていた社員もいたようだ。
「店舗を巡回中にお客さんを見つけるといちいち近寄って頭を下げにいくらしく、『恥ずかしいから止めてくれ』という声をよく聞いた」(同)
まだ5000人の社員が辞めずに残っているが、「会社の未来を信じている人は少ない」と関係者は続ける。
「人材流出を防ぐため、会社は業績悪化後も前年度に支払っていたインセンティブ分の補填を今年の年末まで保証している。なので、いずれは転職するつもりだけど、とりあえず年末までは残ってゆっくり過ごそうと考えている社員もいます」
確かに今はノルマなど求められないし、客は激減しているので仕事は楽と開き直る者もいるのだろう。
「有休を消化している気分の人はそこそこいますよ。ただ、そんなお気楽な時間も年の瀬まで。もともと流しの営業マンみたいな人が多いので、『そろそろ次に行くか』と動き出している。今月から急に退職者が増え始めたと聞いています」(同)
現在、買収に意欲を燃やす伊藤忠商事の岡藤正広会長の動向に注目が集まっているが、泥舟と化したこの会社にどの程度の値がつくのだろうか。
デイリー新潮編集部