都営地下鉄でホームドアの整備が大詰めを迎えている。2024年2月の押上駅への設置により、都営地下鉄の全106駅で完了する予定だ。複数の鉄道会社が乗り入れる駅での導入が課題だったが、QRコードを活用した新手法を生み出したことでコストを抑えながら整備を進め、転落事故は激減している。【一宮俊介】
【写真まとめ】さらば「大阪・梅田最後の踏切」 鉄道マンが振り返る2024年2月には整備100%達成 都営地下鉄は4路線あり、00年の三田線を皮切りに13年に大江戸線で、19年に新宿線でホームドアが整備された。残る浅草線も、都交通局が管理する駅としては今月18日に西馬込駅で設置が終わり、24年2月には京成電鉄と共同で整備する押上駅で100%を達成する見通しだ。

都交通局によると、ホームドアの整備が終わった路線では転落事故がゼロになっており、効果は一目瞭然だ。ただ、実際に整備を進めるにはハードルがあった。それが他の私鉄と相互乗り入れする駅の対応だ。車両ドアに連動するQRコード 19年までに設置が終わった三田、大江戸、新宿の3路線では、車両とホームドアに無線通信をする機器を取り付けることで双方のドアの開閉を連動させる仕組みを採用していた。しかし、残る浅草線は、京成と京浜急行電鉄、北総鉄道、芝山鉄道の4私鉄が乗り入れており、車両に機器を取り付けるだけで1編成当たり数千万円がかかる高額な費用を巡って各社との調整が難航した。また、車両数やドアの配置が会社によって異なり、ホームドアが開く場所を合わせることも課題だった。 そこで都が着目したのがQRコードだ。都交通局からQRコードを開発した「デンソーウェーブ」(愛知県阿久比町)に15年に持ちかけ、共同で専用システムを開発した。車両やドアの数などの情報が組み込まれた16センチ四方のQRコードステッカーを車両のドアに張り付け、ホーム上部に設置したカメラが読み込むことで、車両ドアに連動して対応するホームドアを開け閉めできるようになった。コスト20億円→270万円に 課題だったコストカットも実現した。車両改修費を比較すると、従来の無線通信で約20億円かかっていたのが、ドアに張り付けるQRコードステッカー代の約270万円に減った。QRコードを読み取る専用カメラの設置代を含めても、無線通信よりも大幅に抑えられるという。 さらに、都とデンソーウェーブはこの新たな技術の特許を他の事業者が無償で使えるようにした。既に京急や小田急電鉄、JR東海が取り入れている。全国で進まぬホームドア整備 だが、全国的に見ると、ホームドアの整備が進んでいるとは言い難いのが現状だ。国土交通省によると、21年度末時点で、全国1万9841番線(乗り場)のうち、ホームドアが設置されていたのは11・8%(2337番線)。1日の平均利用者が10万人以上の駅911番線でも、44・6%(406番線)にとどまった。 ホームからの転落事故は14年度の3673件をピークに減少傾向にあるものの、19年度は2887件に上った。20年にはJR日暮里、阿佐ケ谷両駅と東京メトロ東西線東陽町駅で、視覚障害がある人がホームから転落して亡くなる事故もあった。3駅ともホームドアが未設置だったり、設置済みでも運用開始前でドアが開いたままになっていたりした。 一般社団法人「全日本視覚障害者協議会」代表理事、山城完治さんは「費用などの問題はあると思うが、ホームドアが駅の最低限の設備になってほしい」とさらなる広がりに期待している。
2024年2月には整備100%達成
都営地下鉄は4路線あり、00年の三田線を皮切りに13年に大江戸線で、19年に新宿線でホームドアが整備された。残る浅草線も、都交通局が管理する駅としては今月18日に西馬込駅で設置が終わり、24年2月には京成電鉄と共同で整備する押上駅で100%を達成する見通しだ。
都交通局によると、ホームドアの整備が終わった路線では転落事故がゼロになっており、効果は一目瞭然だ。ただ、実際に整備を進めるにはハードルがあった。それが他の私鉄と相互乗り入れする駅の対応だ。
車両ドアに連動するQRコード
19年までに設置が終わった三田、大江戸、新宿の3路線では、車両とホームドアに無線通信をする機器を取り付けることで双方のドアの開閉を連動させる仕組みを採用していた。しかし、残る浅草線は、京成と京浜急行電鉄、北総鉄道、芝山鉄道の4私鉄が乗り入れており、車両に機器を取り付けるだけで1編成当たり数千万円がかかる高額な費用を巡って各社との調整が難航した。また、車両数やドアの配置が会社によって異なり、ホームドアが開く場所を合わせることも課題だった。
そこで都が着目したのがQRコードだ。都交通局からQRコードを開発した「デンソーウェーブ」(愛知県阿久比町)に15年に持ちかけ、共同で専用システムを開発した。車両やドアの数などの情報が組み込まれた16センチ四方のQRコードステッカーを車両のドアに張り付け、ホーム上部に設置したカメラが読み込むことで、車両ドアに連動して対応するホームドアを開け閉めできるようになった。
コスト20億円→270万円に
課題だったコストカットも実現した。車両改修費を比較すると、従来の無線通信で約20億円かかっていたのが、ドアに張り付けるQRコードステッカー代の約270万円に減った。QRコードを読み取る専用カメラの設置代を含めても、無線通信よりも大幅に抑えられるという。
さらに、都とデンソーウェーブはこの新たな技術の特許を他の事業者が無償で使えるようにした。既に京急や小田急電鉄、JR東海が取り入れている。
全国で進まぬホームドア整備
だが、全国的に見ると、ホームドアの整備が進んでいるとは言い難いのが現状だ。国土交通省によると、21年度末時点で、全国1万9841番線(乗り場)のうち、ホームドアが設置されていたのは11・8%(2337番線)。1日の平均利用者が10万人以上の駅911番線でも、44・6%(406番線)にとどまった。
ホームからの転落事故は14年度の3673件をピークに減少傾向にあるものの、19年度は2887件に上った。20年にはJR日暮里、阿佐ケ谷両駅と東京メトロ東西線東陽町駅で、視覚障害がある人がホームから転落して亡くなる事故もあった。3駅ともホームドアが未設置だったり、設置済みでも運用開始前でドアが開いたままになっていたりした。
一般社団法人「全日本視覚障害者協議会」代表理事、山城完治さんは「費用などの問題はあると思うが、ホームドアが駅の最低限の設備になってほしい」とさらなる広がりに期待している。