東大・京大に毎年30人ほどの合格者を送り出す都立きっての進学校・国立(くにたち)高校。卒業生に山極寿一・元京都大学総長ら錚々たる顔ぶれが並び、都立高校として初めて夏の甲子園に出場したことでも知られる文武両道の名門校で騒動が起きていた。同校の卒業生(40代)が語る。
【写真】銀色、校舎にかかる国立高校の校章。「たちばな」の花をかたどったもの。他、巨大な望遠鏡のある天文ドームが屋上にある校舎も「今年4月に新任となった校長が2024年以降に『クラス替え』を導入しようとして、一部生徒が反発。それを知った卒業生たちも11月初旬から反対の署名活動を始めたのです」
生徒の自主・自由を重んじる国立高校は制服がなく、1クラス約40人の級友との絆を深めるため「3年間クラス替えなし」の伝統がある。「3年時には級友と本物の兄弟のような関係になります。毎年来場者が1万人を超え、全国一の高校文化祭とも称される『国高祭』では、3年生がクラスごとに演劇を披露し、プロ顔負けのクオリティだと評判。クラス替えなしだからこそ培われた濃密なチームワークの賜物なんです」(同前) そんな国立高校にクラス替えを導入しようとしたのが、新任校長の宮田明子氏だった。事情を知る同校関係者が言う。「宮田先生はこれまで複数の都立高校で校長を務めたベテランで、前例にとらわれないタイプ。国高の校長就任にあたっては、伝統重視の空気が強すぎる点に懸念を示しており、とくにクラス替えがないことで人間関係に悩む生徒がいることに心を痛めていた。そこでクラス替え導入を決めたのですが、生徒への説明が少なく、やや一方的な感は否めなかった」 国立高校はその校風もありトップダウンの決定に抵抗感が強く、結果、前述のようにOBを巻き込む署名運動に発展。反対署名は1800人を超え、11月6日には「卒業生有志一同」を差出人とする意見書とともに、宮田校長に署名が手渡されたという。「生徒からも反対の声をまとめた文書が出されました。こうした声を受け、宮田先生はクラス替えを白紙に戻すことを決めたのです」(同前)卒業生の介入は「生徒の自主性尊重という校風に反している」の声も この署名騒動を複雑な心境で見つめるOBもいる。同校卒業生で作家・書評家の杉江松恋氏が語る。「正直にいえば、僕自身はクラス替えの導入に賛成なんです。進学校なので陰湿なイジメはなかったけど、やっぱりクラス内にヒエラルキーやカーストはあって。人間関係のギスギスが3年間続くので、息苦しさがありました。 生徒たちによる自主的な反対運動は、卒業生として応援します。でも、卒業生が出張って署名活動までするのはどうなのか。伝統の死守だけで生徒が成長するわけではないし、それこそOBの介入は生徒の自主性尊重という校風に反していると思う」 杉江氏によれば、国立高校での生徒と学校側の対立は珍しくなかったという。「私が在校中は、体育祭の開催に反対する一部の生徒たちが校庭に木を植えて妨害したこともありました。教師が夜中に教師が木を掘り起こすはめになってね。それくらい生徒と先生の関係はピリピリしていたし、その緊張感こそ国高らしさだと思う。卒業生が立ち入らなくても、問題があれば彼らは自分たちで闘うでしょう。国高生の芯の強さを甘く見てはいけない」(杉江氏) 今回の騒動について国立高校に聞いたが「お答えできることはありません」(副校長)との回答。卒業生の母校愛は生徒を守ったのか、それとも……。※週刊ポスト2023年12月1日号
「今年4月に新任となった校長が2024年以降に『クラス替え』を導入しようとして、一部生徒が反発。それを知った卒業生たちも11月初旬から反対の署名活動を始めたのです」
生徒の自主・自由を重んじる国立高校は制服がなく、1クラス約40人の級友との絆を深めるため「3年間クラス替えなし」の伝統がある。
「3年時には級友と本物の兄弟のような関係になります。毎年来場者が1万人を超え、全国一の高校文化祭とも称される『国高祭』では、3年生がクラスごとに演劇を披露し、プロ顔負けのクオリティだと評判。クラス替えなしだからこそ培われた濃密なチームワークの賜物なんです」(同前)
そんな国立高校にクラス替えを導入しようとしたのが、新任校長の宮田明子氏だった。事情を知る同校関係者が言う。
「宮田先生はこれまで複数の都立高校で校長を務めたベテランで、前例にとらわれないタイプ。国高の校長就任にあたっては、伝統重視の空気が強すぎる点に懸念を示しており、とくにクラス替えがないことで人間関係に悩む生徒がいることに心を痛めていた。そこでクラス替え導入を決めたのですが、生徒への説明が少なく、やや一方的な感は否めなかった」
国立高校はその校風もありトップダウンの決定に抵抗感が強く、結果、前述のようにOBを巻き込む署名運動に発展。反対署名は1800人を超え、11月6日には「卒業生有志一同」を差出人とする意見書とともに、宮田校長に署名が手渡されたという。
「生徒からも反対の声をまとめた文書が出されました。こうした声を受け、宮田先生はクラス替えを白紙に戻すことを決めたのです」(同前)
この署名騒動を複雑な心境で見つめるOBもいる。同校卒業生で作家・書評家の杉江松恋氏が語る。
「正直にいえば、僕自身はクラス替えの導入に賛成なんです。進学校なので陰湿なイジメはなかったけど、やっぱりクラス内にヒエラルキーやカーストはあって。人間関係のギスギスが3年間続くので、息苦しさがありました。
生徒たちによる自主的な反対運動は、卒業生として応援します。でも、卒業生が出張って署名活動までするのはどうなのか。伝統の死守だけで生徒が成長するわけではないし、それこそOBの介入は生徒の自主性尊重という校風に反していると思う」
杉江氏によれば、国立高校での生徒と学校側の対立は珍しくなかったという。
「私が在校中は、体育祭の開催に反対する一部の生徒たちが校庭に木を植えて妨害したこともありました。教師が夜中に教師が木を掘り起こすはめになってね。それくらい生徒と先生の関係はピリピリしていたし、その緊張感こそ国高らしさだと思う。卒業生が立ち入らなくても、問題があれば彼らは自分たちで闘うでしょう。国高生の芯の強さを甘く見てはいけない」(杉江氏)
今回の騒動について国立高校に聞いたが「お答えできることはありません」(副校長)との回答。卒業生の母校愛は生徒を守ったのか、それとも……。
※週刊ポスト2023年12月1日号