旧優生保護法下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として当事者らが国に損害賠償を求めた5件の集団訴訟について、最高裁第1小法廷(岡 正晶裁判長)は1日、審理を大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)に回付した。
手術から20年以上が経過し、訴訟では不法行為の賠償請求権が20年で消滅する民法の「除斥期間」が適用されるかが争点となっている。5件中4件が高裁段階で国に賠償を命じており、統一判断を示す可能性がある。
同法は昭和23年、「不良な子孫の出生防止」を目的として議員立法で制定され、障害や疾患を理由とした不妊手術を認めた。平成8年にこうした差別に当たる条文を削除、母体保護法に改称された。
一連の問題を巡っては30年1月、宮城県の女性が国に損害賠償を求め仙台地裁に初めて提訴。地裁は旧法を違憲とする初判断を示す一方で賠償請求は棄却したが、その後に各地で同種の国家賠償請求訴訟が相次いだ。
今回、大法廷に回付されたのは、札幌▽仙台▽東京▽大阪▽神戸-の5地裁で起こされた訴訟。
1審段階ではいずれも請求が棄却されたが、令和4年2月に大阪高裁が除斥期間について「人権侵害が極めて強度で適用は著しく正義に反する」と判断、除斥期間の適用を制限して国に初の賠償命令を出すと、その後も東京と札幌、大阪の各高裁で賠償命令が相次いだ。
この間、平成31年4月には被害者に一時金320万円を支給する法律が議員立法で制定されたが、行政側から被害者への個別通知が明記されていないなど「救済策として不十分だ」との声も根強い。