10月31日午後10時過ぎ、蕨郵便局に立てこもった“高齢の男”は、突入した捜査員によって身柄を押さえられた。埼玉県警によって逮捕されたのは、戸田市在住の鈴木常雄容疑者(86)。指定暴力団の元組員とされ、拳銃も押収された。鈴木容疑者は立てこもり事件の前に、蕨郵便局にほど近い戸田中央総合病院で発砲事件を起こし、また、自宅アパートで起きた火災に関与した可能性も持たれている。
【写真】鈴木容疑者の表情が読み取れるアップの写真。たしかに“眉頭”に目が行ってしまう 社会部記者によれば、「鈴木容疑者は拳銃に加え、包丁のような刃物2本、さらに液体の入った容器とペットボトル、さらにライターを所持していた。病院では2発の発砲音があり、40代の男性医師と60代の男性患者が負傷していますが、この液体が可燃性だったら“京アニ事件”のような大惨事に繋がった可能性も否定できません。また、容疑者が自宅に放火して、退路を断った上で一連の犯行に及んだとなれば、犠牲者が出なかったことは不幸中の幸いと言えます」逮捕された鈴木常雄容疑者 だが、周到に準備を進めた割には、鈴木容疑者の“動機”はいまだ判然としない。「鈴木容疑者は“郵便局や病院の対応が悪かった”と供述していますが、本当にそれだけで86歳の老人が人質立てこもり事件まで起こすのか……。動機の解明が急がれます」 一方で、今回の事件を巡ってはこんな声も上がっている。「事件が起きてまもなく、郵便局に立てこもっていた犯人の顔がテレビに少し映ったでしょう。その時に“どこかの組織のヒットマンかもしれないな”と感じたんです」 そう語るのは暴力団事情に詳しい関係者である。増える“高齢のヒットマン”「今回の事件と直接関連はありませんが、そもそも、発砲事件が起きた“病院”という場所はヒットマンに狙われやすいんですね。患者やその家族が行き来して人目につくのでガードは手薄になりますし、ターゲットに持病があれば定期的に通院せざるを得ません。そうなると、狙う側は計画を立てやすい。次に、テレビに映った立てこもり犯が思いのほか高齢に見えたこと。一般の方が想像するヒットマンは、捨て身で手柄を立てて組織内での出世を図る若い衆だと思います。ただ、いまは暴対法で“暴力行為の賞揚”が規制されているため、組織のために事件を起こしても放免祝いで金品を貰ったり、昇格したりすることが難しくなった。また、組織のために長期刑も辞さないという若い衆が珍しくなったのも事実です。そこで増えているのが高齢者のヒットマン。とりわけ末期がんで余命いくばくもない高齢の暴力団関係者には、人生の最後にヒットマンとしてひと花咲かし、家族に報奨金が渡ればありがたいと考える者もいると思います」 他にも、こんな点が気になったそうだ。それは容疑者の“眉毛”だ。「逮捕された容疑者が警察車両で移送される時のニュース映像では、彼の眉毛に目が行きましたね。86歳にもなれば当然、髪の毛も眉毛も薄くなっていきます。それは容疑者も同じですが、映像を見ると、眉頭の部分だけが影のように黒く残っていた。実は、暴力団関係者が刺青を入れる際、眉毛にも墨を入れて太くすることがあるんですね。そのため、ニュースを見た関係者は“容疑者はこっちの稼業の人間か……”と感じたのではないでしょうか」元組員が護身用に いまのところ、今回の事件に組織的な背景は窺えない。とはいえ、拳銃が用いられ、多くの人命が危機に瀕した凶悪事件に変わりはない。「映像で見る限り、事件に使用されたのはおそらくトカレフ。裏社会では30年ほど前から大量に出回っていて、それこそ1丁を10万円以下で購入できた時代もあった。元組員であれば足を洗った後も護身用として所持したり、あるいは処分に困って自宅に隠し持っていたりするケースはあると思います。とはいえ、組織的な背景がない限り、高齢の元組員が新品の拳銃を自ら入手するとは考えづらい。押収された拳銃はきれいに見えましたが、おそらく油紙を巻いて自宅に保管していたのでしょう。トカレフは発砲時の反動が強烈で、それこそ天井に向けて撃つと肩が外れるほどの威力があると聞きます。あの年齢で何発も撃っている以上、拳銃の扱いに慣れていた可能性もあります」 今後、本格的に動機の解明が進められるが、「正直なところ、高齢の元組員の生活はかなり厳しい。払ってこなかったので年金はもらえないし、働ける場所は一般人よりも限られます。今回の“暴発”にも、やはり生活苦が影を落としているように感じます」デイリー新潮編集部
社会部記者によれば、
「鈴木容疑者は拳銃に加え、包丁のような刃物2本、さらに液体の入った容器とペットボトル、さらにライターを所持していた。病院では2発の発砲音があり、40代の男性医師と60代の男性患者が負傷していますが、この液体が可燃性だったら“京アニ事件”のような大惨事に繋がった可能性も否定できません。また、容疑者が自宅に放火して、退路を断った上で一連の犯行に及んだとなれば、犠牲者が出なかったことは不幸中の幸いと言えます」
だが、周到に準備を進めた割には、鈴木容疑者の“動機”はいまだ判然としない。
「鈴木容疑者は“郵便局や病院の対応が悪かった”と供述していますが、本当にそれだけで86歳の老人が人質立てこもり事件まで起こすのか……。動機の解明が急がれます」
一方で、今回の事件を巡ってはこんな声も上がっている。
「事件が起きてまもなく、郵便局に立てこもっていた犯人の顔がテレビに少し映ったでしょう。その時に“どこかの組織のヒットマンかもしれないな”と感じたんです」
そう語るのは暴力団事情に詳しい関係者である。
「今回の事件と直接関連はありませんが、そもそも、発砲事件が起きた“病院”という場所はヒットマンに狙われやすいんですね。患者やその家族が行き来して人目につくのでガードは手薄になりますし、ターゲットに持病があれば定期的に通院せざるを得ません。そうなると、狙う側は計画を立てやすい。次に、テレビに映った立てこもり犯が思いのほか高齢に見えたこと。一般の方が想像するヒットマンは、捨て身で手柄を立てて組織内での出世を図る若い衆だと思います。ただ、いまは暴対法で“暴力行為の賞揚”が規制されているため、組織のために事件を起こしても放免祝いで金品を貰ったり、昇格したりすることが難しくなった。また、組織のために長期刑も辞さないという若い衆が珍しくなったのも事実です。そこで増えているのが高齢者のヒットマン。とりわけ末期がんで余命いくばくもない高齢の暴力団関係者には、人生の最後にヒットマンとしてひと花咲かし、家族に報奨金が渡ればありがたいと考える者もいると思います」
他にも、こんな点が気になったそうだ。それは容疑者の“眉毛”だ。
「逮捕された容疑者が警察車両で移送される時のニュース映像では、彼の眉毛に目が行きましたね。86歳にもなれば当然、髪の毛も眉毛も薄くなっていきます。それは容疑者も同じですが、映像を見ると、眉頭の部分だけが影のように黒く残っていた。実は、暴力団関係者が刺青を入れる際、眉毛にも墨を入れて太くすることがあるんですね。そのため、ニュースを見た関係者は“容疑者はこっちの稼業の人間か……”と感じたのではないでしょうか」
いまのところ、今回の事件に組織的な背景は窺えない。とはいえ、拳銃が用いられ、多くの人命が危機に瀕した凶悪事件に変わりはない。
「映像で見る限り、事件に使用されたのはおそらくトカレフ。裏社会では30年ほど前から大量に出回っていて、それこそ1丁を10万円以下で購入できた時代もあった。元組員であれば足を洗った後も護身用として所持したり、あるいは処分に困って自宅に隠し持っていたりするケースはあると思います。とはいえ、組織的な背景がない限り、高齢の元組員が新品の拳銃を自ら入手するとは考えづらい。押収された拳銃はきれいに見えましたが、おそらく油紙を巻いて自宅に保管していたのでしょう。トカレフは発砲時の反動が強烈で、それこそ天井に向けて撃つと肩が外れるほどの威力があると聞きます。あの年齢で何発も撃っている以上、拳銃の扱いに慣れていた可能性もあります」
今後、本格的に動機の解明が進められるが、
「正直なところ、高齢の元組員の生活はかなり厳しい。払ってこなかったので年金はもらえないし、働ける場所は一般人よりも限られます。今回の“暴発”にも、やはり生活苦が影を落としているように感じます」
デイリー新潮編集部