茨城県内で深夜に爆音をとどろかせて走るバイクが住民を悩ませている。
最近は暴走族のような固定メンバーではなく、SNSを通じて集まった少人数によるゲリラ的な暴走も目立ち、実態の把握が難しくなっている。ただ、爆音バイクに対する通報は後を絶たず、県警は取り締まりを強化している。
■「なんとかしてほしい」
「毎週金曜夜に日付が変わる頃まで爆音が鳴りやまず、寝られない」。水戸市の男性(70)は、憤りを隠さない。水戸駅周辺では、週末を中心に消音器(マフラー)を改造したバイクが爆音を鳴らして周囲を走り回る。男性は「90歳を超える両親も爆音で寝付けない。なんとかしてほしい」とため息をつく。
県警が把握する暴走族は、統計の残る2014年の18団体から昨年時点で3団体と大幅に減少した。ただ、暴走族や爆音バイクなどの取り締まりを求める通報は9月時点で1412件と、昨年同期比で約200件増加。水戸市の市街地や大洗町の沿岸部、県南や県西での通報が多いという。
今年度に県が行った県民への意識調査では、治安が悪いと感じる理由で、「暴走族の多さ」が「犯罪発生の多さ」などを押しのけて2番目に多かった。
■「暴走族ではない」
水戸署と茨城運輸支局などは8月、住民の通報が多い大洗町の国道51号周辺で大規模な取り締まりを実施した。パトカーで道路を封鎖するなど集団走行していたバイク14台を停止させ、装備などを確認。県警は消音器の未設置などの道路交通法違反容疑で摘発した。
県警によると、SNSで集まった若者たちは、爆音で走行する一方、信号無視やヘルメット未着用といった違反が少ないという。
取り締まりを受けた若者らは、人気テレビ番組名から「月曜から夜ふかし」などと称して集合。20歳代男性は取材に暴走族ではないと答え、「大きい音は気持ちが良いし、面白いと思っている。信号は守るし、ヘルメットもつけて事故に気をつけている」と話した。
■いたちごっこ
爆音の改造バイクが減らないのには事情がある。消音器やミラーを不正に取り外した場合、運輸支局から「整備命令書」が交付される。ただ、15日以内に運輸支局などが車両を確認し、違反がなければ命令は解除される。直後に再改造されるケースもあり、県警幹部は「いたちごっこになっている」と現状を明かす。
取り締まりも難しい。爆音バイクを見つけても逃走する場合が多く、追いかければ事故の危険性も生じる。蛇行運転や並走などによる道交法違反(共同危険行為)での摘発も視野に入れるが、最近の爆音バイクはこうした違反が少ないという。SNSで集まる「神出鬼没」さも取り締まりを困難にしている。
県警幹部は「迷惑をかけて許されるはずもない。住民からの要望も多く、取り締まりを地道にやっていくしかない」としている。