36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われている青葉真司被告(45)の第18回公判が29日、京都地裁で開かれ、遺族らが意見陳述した。「命をもって償ってほしい」「娘を返して」。遺族らは事件から4年が過ぎても癒えることのない痛みを吐露し、被告への厳しい処罰を求めた。
【図解】青葉被告の生い立ちと事件の経緯 この日は犠牲者の遺族6人が法廷に立ち、初めて被害感情を語った。27日から量刑に絞った審理が始まっており、陳述は刑事訴訟法に基づき情状証拠となる。

「娘は夢や希望を持っていただろう。悔しくてならない」。25歳だった娘を亡くした父親はこう心境を語った。事件の前年に入社したばかりの娘はいつも笑顔で、家でも時間さえあれば絵を描いていた。父親は「自分の命と引き換えに娘の命を救いたかったと、私も妻も思っている」と震える声で話し、「被告には命をもって罪を償ってほしい。謝罪や反省で償える犯行ではない」と語気を強めた。 「自慢の娘だった」と語ったのは栗木亜美さん(当時30歳)の母親だ。変わり果てた娘と対面した際、その場を離れたくなくて「さようなら」ではなく、「またね」と声を掛けたという。陳述で「『娘を返して』と叫びたい」と声を詰まらせた。 4年の経過で被告への憎しみや恨みは深くなるばかり。母親は裁判員らに向かって「自分の大切な家族が奪われたら、許すことができますか」と問いかけた。被告に対しては「(犠牲になった)36人が受けた恐怖、絶望、苦しみを同じように受けてほしい。極刑を望みます」と語った。 渡辺紗也加さん(同27歳)の父親は「健康な姿の娘を返してほしい、平穏だった日常に戻してほしい」と涙ながらに訴えた。事件当日の朝、「行ってらっしゃい」「行ってきます」といつも通り交わした言葉が最後の会話になった。「『ただいま』と帰ってくるのではと思っている。さみしい」。続けて「被告には最も重い刑罰の判決しかないと思います」と述べた。 「私たちは母親、妻を殺された。あなたを許すことができると思いますか」。寺脇(池田)晶子さん(同44歳)の夫(51)は声を詰まらせながら、30分以上にわたり被告に問いかけた。事件当時に小学2年だった長男は6年生になり、「ママは天国で生まれ変わる準備をしている」と話すようになったという。「息子には、母親の記憶が増えることはもうない。あなたの行為で、苦しい人生を歩まなければならなくなった人が何十人もいることを知ってほしい」と呼びかけた。 意見陳述が続く中、青葉被告は落ち着かない様子で、遺族の方を見ることはほとんどなかった。ただ、閉廷後に取材に応じた寺脇さんの夫によると、「青葉さん」と呼びかけると何度も目が合ったという。夫は「伝えようとする努力はできた。晶子には『やれることはやったで。お前が言いたいだろうことは伝えたで』と報告できるかな」と話した。【久保聡、南陽子】
この日は犠牲者の遺族6人が法廷に立ち、初めて被害感情を語った。27日から量刑に絞った審理が始まっており、陳述は刑事訴訟法に基づき情状証拠となる。
「娘は夢や希望を持っていただろう。悔しくてならない」。25歳だった娘を亡くした父親はこう心境を語った。事件の前年に入社したばかりの娘はいつも笑顔で、家でも時間さえあれば絵を描いていた。父親は「自分の命と引き換えに娘の命を救いたかったと、私も妻も思っている」と震える声で話し、「被告には命をもって罪を償ってほしい。謝罪や反省で償える犯行ではない」と語気を強めた。
「自慢の娘だった」と語ったのは栗木亜美さん(当時30歳)の母親だ。変わり果てた娘と対面した際、その場を離れたくなくて「さようなら」ではなく、「またね」と声を掛けたという。陳述で「『娘を返して』と叫びたい」と声を詰まらせた。
4年の経過で被告への憎しみや恨みは深くなるばかり。母親は裁判員らに向かって「自分の大切な家族が奪われたら、許すことができますか」と問いかけた。被告に対しては「(犠牲になった)36人が受けた恐怖、絶望、苦しみを同じように受けてほしい。極刑を望みます」と語った。
渡辺紗也加さん(同27歳)の父親は「健康な姿の娘を返してほしい、平穏だった日常に戻してほしい」と涙ながらに訴えた。事件当日の朝、「行ってらっしゃい」「行ってきます」といつも通り交わした言葉が最後の会話になった。「『ただいま』と帰ってくるのではと思っている。さみしい」。続けて「被告には最も重い刑罰の判決しかないと思います」と述べた。
「私たちは母親、妻を殺された。あなたを許すことができると思いますか」。寺脇(池田)晶子さん(同44歳)の夫(51)は声を詰まらせながら、30分以上にわたり被告に問いかけた。事件当時に小学2年だった長男は6年生になり、「ママは天国で生まれ変わる準備をしている」と話すようになったという。「息子には、母親の記憶が増えることはもうない。あなたの行為で、苦しい人生を歩まなければならなくなった人が何十人もいることを知ってほしい」と呼びかけた。
意見陳述が続く中、青葉被告は落ち着かない様子で、遺族の方を見ることはほとんどなかった。ただ、閉廷後に取材に応じた寺脇さんの夫によると、「青葉さん」と呼びかけると何度も目が合ったという。夫は「伝えようとする努力はできた。晶子には『やれることはやったで。お前が言いたいだろうことは伝えたで』と報告できるかな」と話した。【久保聡、南陽子】