事実上の“死刑宣告”だという。「ビッグモーター」社の90億円借り換え要請を銀行団が拒絶した。いよいよ同社「倒産」の二文字が現実味を帯びてきている。
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【写真を見る】「さすがにデカすぎ」成金趣味全開な“20億円の自宅”には茶室に噴水、滝まで… 兼重氏が住む約500坪の大豪邸と、別荘2棟の全容をみる 不正請求発覚から1カ月。同社の現場は悲惨である。「電話をすれば“犯罪者集団!”と怒鳴られますよ」 こう嘆くのは、営業部門で働くさる現役従業員。「“まだ営業していたんですか”と本気で驚かれることも。“信頼を取り戻すために頑張っております”と返すと、“無理だと思いますよ”と嫌味を言われるんです」

兼重宏行前社長 ようやく話をするところまでこぎ着けても、「“査定するなら、他社も一緒ならOK”と言われました。“こちらが見ていない時にゴルフボールで車体を傷つけられないかと心配で……”と言われて」 不正発覚後は、アポ取得率が半減したという。 今月14日には、返済期限を迎えた借入金90億円について、銀行団が同社の借り換え要請を拒絶していたことが明らかになったのだ。決別宣言「この場合の借り換えとは、借入金を期日で返さず、契約を更新してそのまま借り続けることを意味します」 と解説するのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏。「通常の企業相手であれば、取引をしている銀行は当然、この要請に応じますし、場合によってはもう少し借りてくれ、となるはずです」 しかし三井住友、三菱UFJ、みずほなどからなる銀行団はこれを断った。「銀行がビッグ社を見放したということです。少々雲行きが怪しい会社でも、金利を高くして借り換えを認めるケースはある。しかしそれすら拒否したというのは、はっきり言えば“もう手を切ります”と決別宣言をしたに等しいのです」 なぜか。「ひとつは、同社の業績が急降下していること。売り上げ大幅減と報じられ、銀行はビッグ社がもう立ち直れないと判断し、リスクを減らす方向に舵を切っている。また何より借り換えに応じることによって、ビッグ社に手を貸しているというイメージが付くことを非常に恐れていますね」今後、推計600億円の負債が… 今回の90億円は期限日までに返済したとのこと。だが、同社の有利子負債の総額は600億円と推計されていて、これらについても今後、返済期限は来る。「しかし銀行は今回同様、借り換えには応じないでしょうし、当然新たな融資もしないはず」 同社はこれまで店舗を拡大し、莫大な広告宣伝費を投入するモデルで成長を遂げてきた。つまり多額の手元資金を必要とする手法だけに、借り換え拒否は大変な痛手となるのだ。ちなみに同社の現預金は約320億円といわれる。 自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は言う。「キャッシュ不足は深刻ですが、一般顧客にはそっぽを向かれている。そこで、同社は業者向けのオークションに、現在保有する中古車を大量出品する案を検討中だそうです。これまでにはなかった話で、ここからも窮状がわかりますよね」 ビッグ社に聞くと、「(オークション出品を)検討した事実はありません」 と言うけれど、「当面売り上げが戻ることはないでしょうし、融資も受けられない。資産を取り崩すしかなく、倒産の可能性が高い。同社にコンサル法人が付いたとの報道がありましたが、破綻を見越して“その後”のことを考えているはずです」(小宮氏) となれば、オーナー・兼重家の持つ株も紙くずに。不正で成り上がった経営者らしい末路である。「週刊新潮」2023年8月31日号 掲載
不正請求発覚から1カ月。同社の現場は悲惨である。
「電話をすれば“犯罪者集団!”と怒鳴られますよ」
こう嘆くのは、営業部門で働くさる現役従業員。
「“まだ営業していたんですか”と本気で驚かれることも。“信頼を取り戻すために頑張っております”と返すと、“無理だと思いますよ”と嫌味を言われるんです」
ようやく話をするところまでこぎ着けても、
「“査定するなら、他社も一緒ならOK”と言われました。“こちらが見ていない時にゴルフボールで車体を傷つけられないかと心配で……”と言われて」
不正発覚後は、アポ取得率が半減したという。
今月14日には、返済期限を迎えた借入金90億円について、銀行団が同社の借り換え要請を拒絶していたことが明らかになったのだ。
「この場合の借り換えとは、借入金を期日で返さず、契約を更新してそのまま借り続けることを意味します」
と解説するのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏。
「通常の企業相手であれば、取引をしている銀行は当然、この要請に応じますし、場合によってはもう少し借りてくれ、となるはずです」
しかし三井住友、三菱UFJ、みずほなどからなる銀行団はこれを断った。
「銀行がビッグ社を見放したということです。少々雲行きが怪しい会社でも、金利を高くして借り換えを認めるケースはある。しかしそれすら拒否したというのは、はっきり言えば“もう手を切ります”と決別宣言をしたに等しいのです」
なぜか。
「ひとつは、同社の業績が急降下していること。売り上げ大幅減と報じられ、銀行はビッグ社がもう立ち直れないと判断し、リスクを減らす方向に舵を切っている。また何より借り換えに応じることによって、ビッグ社に手を貸しているというイメージが付くことを非常に恐れていますね」
今回の90億円は期限日までに返済したとのこと。だが、同社の有利子負債の総額は600億円と推計されていて、これらについても今後、返済期限は来る。
「しかし銀行は今回同様、借り換えには応じないでしょうし、当然新たな融資もしないはず」
同社はこれまで店舗を拡大し、莫大な広告宣伝費を投入するモデルで成長を遂げてきた。つまり多額の手元資金を必要とする手法だけに、借り換え拒否は大変な痛手となるのだ。ちなみに同社の現預金は約320億円といわれる。
自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は言う。
「キャッシュ不足は深刻ですが、一般顧客にはそっぽを向かれている。そこで、同社は業者向けのオークションに、現在保有する中古車を大量出品する案を検討中だそうです。これまでにはなかった話で、ここからも窮状がわかりますよね」
ビッグ社に聞くと、
「(オークション出品を)検討した事実はありません」
と言うけれど、
「当面売り上げが戻ることはないでしょうし、融資も受けられない。資産を取り崩すしかなく、倒産の可能性が高い。同社にコンサル法人が付いたとの報道がありましたが、破綻を見越して“その後”のことを考えているはずです」(小宮氏)
となれば、オーナー・兼重家の持つ株も紙くずに。不正で成り上がった経営者らしい末路である。
「週刊新潮」2023年8月31日号 掲載