【経済ニュースの核心】
「麻布台ヒルズ」200億円住戸はすでに売約済みも…賃貸なら普通の人も“ヒルズ族”になれる?「男冥利に尽きる」などと言えばいささか語弊があろうか。会社の出張に愛人とおぼしき女性を同伴させ、この女性が関与する飲食店で連日のように豪遊。おまけに経費は会社に付け回す。 自身が所有する会社のオーナー兼社長ならどうということはない。周囲のひんしゅくを買うか、せいぜい税務署に目をつけられるくらいだ。 しかし、パブリックカンパニーの経営者が同様の営為を繰り返せばただでは済まない。善管注意義務違反として民事上の責任を追及されるのはもちろん、背任容疑で刑事責任さえ問われかねない。まして「経費の私的流用」となれば、より重罪の「特別背任」の嫌疑さえ浮上する。

東証プライム上場の光学レンズ大手、タムロンは先週22日、鰺坂司郎社長が経費の不正使用の疑いで辞任したと発表した。会社側によると、今年7月9日、同社の内部通報制度の外部窓口に鯵坂社長と社外の知人女性との「同伴出張」を告発する“タレ込み”があり、監査役と社外取締役らで調査したところ不正が発覚したという。「魔が差した」わけではない。鰺坂前社長は「少なくとも過去5年間、この知人女性が関与する店で毎月複数回飲食を重ね、会社から経費を引き出していた」(関係者)とされているからだ。要するに「確信犯」というわけだ。 タムロンは望遠ズームレンズなどカメラ用交換レンズの世界的メーカーだ。足元の業績は「絶好調」(証券筋)。今12月期上半期の最終利益は前年同期比約17%増の53億円強と上期としての過去最高を更新。通期でも最高記録の塗り替えが「ほぼ確実」(同)視されている。 財務も盤石だ。自己資本比率は8割を超え、実質無借金経営。手元現預金は323億円もある。それだけに鰺坂氏に支払われていた役員報酬も高額で、22年で1.26億円に及ぶ。なのになぜ会社のカネなどに手をつける必要があったのか。 鰺坂氏は鹿児島県出身の69歳。1978年にタムロンに入社した。社長就任は2016年で、7年間にわたりトップに君臨してきた。周辺筋からは「長期支配と好業績に気が緩み、すっかり公私の境界線も曖昧になっていた」との声もしきりだが、まさに好事魔多し──。(重道武司/経済ジャーナリスト)
「男冥利に尽きる」などと言えばいささか語弊があろうか。会社の出張に愛人とおぼしき女性を同伴させ、この女性が関与する飲食店で連日のように豪遊。おまけに経費は会社に付け回す。
自身が所有する会社のオーナー兼社長ならどうということはない。周囲のひんしゅくを買うか、せいぜい税務署に目をつけられるくらいだ。
しかし、パブリックカンパニーの経営者が同様の営為を繰り返せばただでは済まない。善管注意義務違反として民事上の責任を追及されるのはもちろん、背任容疑で刑事責任さえ問われかねない。まして「経費の私的流用」となれば、より重罪の「特別背任」の嫌疑さえ浮上する。
東証プライム上場の光学レンズ大手、タムロンは先週22日、鰺坂司郎社長が経費の不正使用の疑いで辞任したと発表した。会社側によると、今年7月9日、同社の内部通報制度の外部窓口に鯵坂社長と社外の知人女性との「同伴出張」を告発する“タレ込み”があり、監査役と社外取締役らで調査したところ不正が発覚したという。
「魔が差した」わけではない。鰺坂前社長は「少なくとも過去5年間、この知人女性が関与する店で毎月複数回飲食を重ね、会社から経費を引き出していた」(関係者)とされているからだ。要するに「確信犯」というわけだ。
タムロンは望遠ズームレンズなどカメラ用交換レンズの世界的メーカーだ。足元の業績は「絶好調」(証券筋)。今12月期上半期の最終利益は前年同期比約17%増の53億円強と上期としての過去最高を更新。通期でも最高記録の塗り替えが「ほぼ確実」(同)視されている。
財務も盤石だ。自己資本比率は8割を超え、実質無借金経営。手元現預金は323億円もある。それだけに鰺坂氏に支払われていた役員報酬も高額で、22年で1.26億円に及ぶ。なのになぜ会社のカネなどに手をつける必要があったのか。
鰺坂氏は鹿児島県出身の69歳。1978年にタムロンに入社した。社長就任は2016年で、7年間にわたりトップに君臨してきた。周辺筋からは「長期支配と好業績に気が緩み、すっかり公私の境界線も曖昧になっていた」との声もしきりだが、まさに好事魔多し──。
(重道武司/経済ジャーナリスト)