コロナ禍が収束し、離れて暮らす父母と久しぶりに再会したら、かつての姿からは想像できないほど思想が変化していた。しかも、それを子供に押しつける。なかでも多いのが親のネトウヨ化や、陰謀論に染まるケース。なぜそうなったのか?◆外国人観光客に暴言!いつかは警察沙汰に!?
ゴールデンウイークに帰省した際、平野鎮一さん(仮名・44歳)は71歳父の変化を目の当たりにした。
「久しぶりに食事をご馳走しようと思い、両親と居酒屋に行ったんです。隣のテーブルには中国人か韓国人の観光客グループがいて、英語で注文していたんですが、店員が戸惑っていた。それを見たほろ酔いの父は突然、外国人グループに向かって『おい、ガイジン、日本に来たなら日本語で話せ』と噛みついた。店員も私もびっくりでした」
上海やロンドンで駐在経験のある商社マンだった父が退職して5年あまり。定年後はパチンコ店と家の往復だったというが、コロナ禍で家に籠もるようになった。
「居酒屋での件やその後の言動でもしやと思い、リビングのテレビのYouTube再生履歴をチェックしたんです。案の定、ネトウヨコンテンツだらけ。保守論客ならまだいいのですが、父がハマっていたのはテキストやテロップだけの、素人が作った嫌中嫌韓系のヘイト動画でした」
母に相談した平野さんだったが、寝室も行動も別々の家庭内別居状態。「関わりたくない」と母は断ったという。
「そのうち、先鋭化して外国人やマイノリティに危害を加え、警察沙汰になるんじゃないかとヒヤヒヤしています」
◆軽度の認知症をきっかけに排外主義に染まった母
きっかけは軽度の認知症と診断された3年前。グループホームに通うようになってから、高橋智之さん(仮名・37歳)の母(70歳)はネトウヨになった。
「東南アジア系のヘルパーに対し『外国から来てるクセに日本でたくさんカネ稼いで。オマエたちの給料をよこせ!』とか、『裏でなんか悪いことしてるんじゃないの?』と罵声を浴びせていると聞き、絶望的な気持ちになりました」
さらに自宅に水道修理にやってきた業者に対し「あなたは在日か?」という発言も。
「認知症の影響で読書もできなくなり、スマホもYouTubeも見ていない。どうやらグループホームでそういう“思想”に染まったようです」
高橋さんが子供の頃、母は中国人留学生をホームステイさせてあげたこともあった。その学生が生活に困らぬよう、中国語教室を開いて生活費を稼がせてあげたことも。さらに近隣に住む外国人のための生活支援相談員を長くボランティアでやっていたとも。
「『昔、日本はアジアの人々に悪いことをした』『日本に来てくれる外国人を大切にしなければいけない』というのが口癖でした。そんな母が今や嫌中嫌韓、排外主義になって、僕や家族にも憚らず公言するようになった。とても悲しいですよ……」
高橋さんは母と今、距離を置いて生活している。
取材・文・撮影/SPA!「親がネトウヨ」取材班