ラブホテル(通称・レジャーホテル)といえば、切り離せない景観の一つとして、併設された駐車場の入り口に垂れるゴムやビニール製の「のれん」が挙げられる。この通称「ゴムのれん」が最近、なくなりつつあるという。その意外な理由と、不倫現場に与える影響とは――。
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【写真】昭和の“奇抜”趣向が爆発! 異世界「ラブホテル」巡り 関東圏でレジャーホテルを経営するオーナーの一人がこう話す。「私は“わかめ”と呼んでいましたが、利用客からの苦情が入るようになって、昨年“ゴムのれん”を撤去しました。もともと設置は法律で義務付けられたものでなく、各オーナーの裁量で付けられていたもの。要は“人目を忍んで逢引きするカップルには、出入りの際に目隠しがあったほうがいいだろう”との判断。それが好評で付けるのが当たり前のようになった時期もあるが、最近はウチと同じく“ゴムのれん”を撤去するホテルが増えていると聞きます」

消えゆく「ゴムのれん」 苦情の内容とは、以下のようなものに集約されるという。「自動ブレーキ(AEBS)搭載車だと“ゴムのれん”を障害物と認識するようで、駐車場に入ろうとすると急停車してしまう。悪目立ちするし、興が削がれるので何とかならないか」 都内在住の会社員A氏(40代・既婚男性)も自身の体験談をこう話す。「マッチングアプリで知り合った女性と2年前から不倫中で、逢瀬の場所はいつもレジャーホテル。でも“ゴムのれん”のあるホテルに入ろうとすると、アイサイト(スバル社製の運転支援システム)が反応して一時停止することも。警告音は鳴るし、不倫相手も“雰囲気が台ナシ”と不機嫌になって困ったことがある」思わぬ余波 実際に“ゴムのれん”を撤去したホテルはどれくらいの数に上るのか。業界団体である「日本レジャーホテル協会」に訊ねたが、「各オーナーが決めていることなので(撤去済みホテルの)実数等は把握していません。ただ撤去に際してはデザイン性やコスト面など、他の理由が含まれているケースもあると思います」 と回答した。それを裏付けるように、別の業界関係者は「車に傷がつくのを嫌がる利用客が増えたため、“ゴムのれん”を撤去したホテルも少なくない」と指摘する。 さらに取材を進めると、「のれん撤去」の影響が意外なところにまで波及していることが判明。不倫調査専門の探偵事務所に籍を置くベテラン調査員がこう話す。「レジャーホテルから“ゴムのれん”がなくなっている現状については、私たちも注目していました。不倫調査では“不貞の証拠”として、ホテルへの出入りの瞬間を写真やビデオにおさめることが何より重要。そのためホテル駐車場の入り口前の道路などに車を停め、カメラやビデオを構えて何時間でも待機する。しかし“ゴムのれん”がないと相手から我々の車が丸見えになるケースも多く、ヒヤリとするシーンが何度かあった。観察している限りでは、“ゴムのれん”がないホテルを利用する際は出入り時に周囲を窺うなど警戒心が高まり、行動が慎重になる対象者は少なくありません」(同)「不倫カップル」は敬遠 調査員が続ける。「“ゴムのれん”の撤去とどこまで関係があるかは不明ですが、そもそも不倫カップルが逢引きの場所にレジャーホテルを使うケース自体、ここ数年でかなり減りました。代わりに、彼らが使うのはビジネスホテルやシティホテル。不倫の証拠を集めて依頼者(妻もしくは夫)に渡すと、大抵の場合、依頼者夫婦は離婚や慰謝料請求などの争いへと発展します。その際、レジャーホテルで密会していれば、即“不倫”と認定されますが、現場がビジネスホテルやシティホテルだと裁判官の判断が揺らぐケースもある」(同) たとえば不貞を問われた夫が、女性とシティホテルに入ったのは「他人に聞かれては困る仕事上の打ち合わせのためだった」と抗弁した結果、裁判官が「不倫」と認定しなかった事例が実際にあるという。「最近、シティホテルでも時間貸しするところは増えており、今後、不倫カップルがリスクの高いレジャーホテルを利用する機会はますます減るのではないかと危惧しています。密会場所がレジャーホテルであれば、出入りの瞬間を押さえればよく、我々も仕事がしやすい面があった。けれど“ゴムのれん”の撤去が進んでいくと、不倫の動かぬ証拠を掴むのはいま以上に難しくなるでしょう」 近年、利用客の減少からカップル以外にも門戸を開くなど、レジャーホテル業界にも変化の波が押し寄せているという。「のれん消失」はその結果か、あるいは変革のスピードを加速させる起爆剤か。デイリー新潮編集部
関東圏でレジャーホテルを経営するオーナーの一人がこう話す。
「私は“わかめ”と呼んでいましたが、利用客からの苦情が入るようになって、昨年“ゴムのれん”を撤去しました。もともと設置は法律で義務付けられたものでなく、各オーナーの裁量で付けられていたもの。要は“人目を忍んで逢引きするカップルには、出入りの際に目隠しがあったほうがいいだろう”との判断。それが好評で付けるのが当たり前のようになった時期もあるが、最近はウチと同じく“ゴムのれん”を撤去するホテルが増えていると聞きます」
苦情の内容とは、以下のようなものに集約されるという。
「自動ブレーキ(AEBS)搭載車だと“ゴムのれん”を障害物と認識するようで、駐車場に入ろうとすると急停車してしまう。悪目立ちするし、興が削がれるので何とかならないか」
都内在住の会社員A氏(40代・既婚男性)も自身の体験談をこう話す。
「マッチングアプリで知り合った女性と2年前から不倫中で、逢瀬の場所はいつもレジャーホテル。でも“ゴムのれん”のあるホテルに入ろうとすると、アイサイト(スバル社製の運転支援システム)が反応して一時停止することも。警告音は鳴るし、不倫相手も“雰囲気が台ナシ”と不機嫌になって困ったことがある」
実際に“ゴムのれん”を撤去したホテルはどれくらいの数に上るのか。業界団体である「日本レジャーホテル協会」に訊ねたが、
「各オーナーが決めていることなので(撤去済みホテルの)実数等は把握していません。ただ撤去に際してはデザイン性やコスト面など、他の理由が含まれているケースもあると思います」
と回答した。それを裏付けるように、別の業界関係者は「車に傷がつくのを嫌がる利用客が増えたため、“ゴムのれん”を撤去したホテルも少なくない」と指摘する。
さらに取材を進めると、「のれん撤去」の影響が意外なところにまで波及していることが判明。不倫調査専門の探偵事務所に籍を置くベテラン調査員がこう話す。
「レジャーホテルから“ゴムのれん”がなくなっている現状については、私たちも注目していました。不倫調査では“不貞の証拠”として、ホテルへの出入りの瞬間を写真やビデオにおさめることが何より重要。そのためホテル駐車場の入り口前の道路などに車を停め、カメラやビデオを構えて何時間でも待機する。しかし“ゴムのれん”がないと相手から我々の車が丸見えになるケースも多く、ヒヤリとするシーンが何度かあった。観察している限りでは、“ゴムのれん”がないホテルを利用する際は出入り時に周囲を窺うなど警戒心が高まり、行動が慎重になる対象者は少なくありません」(同)
調査員が続ける。
「“ゴムのれん”の撤去とどこまで関係があるかは不明ですが、そもそも不倫カップルが逢引きの場所にレジャーホテルを使うケース自体、ここ数年でかなり減りました。代わりに、彼らが使うのはビジネスホテルやシティホテル。不倫の証拠を集めて依頼者(妻もしくは夫)に渡すと、大抵の場合、依頼者夫婦は離婚や慰謝料請求などの争いへと発展します。その際、レジャーホテルで密会していれば、即“不倫”と認定されますが、現場がビジネスホテルやシティホテルだと裁判官の判断が揺らぐケースもある」(同)
たとえば不貞を問われた夫が、女性とシティホテルに入ったのは「他人に聞かれては困る仕事上の打ち合わせのためだった」と抗弁した結果、裁判官が「不倫」と認定しなかった事例が実際にあるという。
「最近、シティホテルでも時間貸しするところは増えており、今後、不倫カップルがリスクの高いレジャーホテルを利用する機会はますます減るのではないかと危惧しています。密会場所がレジャーホテルであれば、出入りの瞬間を押さえればよく、我々も仕事がしやすい面があった。けれど“ゴムのれん”の撤去が進んでいくと、不倫の動かぬ証拠を掴むのはいま以上に難しくなるでしょう」
近年、利用客の減少からカップル以外にも門戸を開くなど、レジャーホテル業界にも変化の波が押し寄せているという。「のれん消失」はその結果か、あるいは変革のスピードを加速させる起爆剤か。
デイリー新潮編集部