ジャニーズ事務所の性加害問題を巡り、国連人権理事会の作業部会は4日、政府が「透明な捜査を確保し、被害者の実効的救済を確保する必要性」があると指摘した。
「届かない矢を放ち続けて35年、やっと事態が動いた」。平成元年からジャニー喜多川氏による性加害の告発を続けてきた元ジャニーズJr.の平本淳也さん(57)は感慨を語るとともに、「事務所には被害者と向き合ってほしい」と訴えた。
未成年タレントらが寝起きする「合宿所」に出入りしていたジャニーズJr.当時、平本さんは喜多川氏に夜な夜な体をまさぐられた。「恋人レベルにならないとスターになれない」と感じつつ、それ以上の接触には耐えられなかった。「痛っ」と叫ぶ仲間の声も聞いた。
事務所を離れた後に被害を訴えても、「警察も世間もマスコミも、まともに取り合ってくれなかった」と振り返る。「だから、できることは全部やろうと思った」。著書「ジャニーズのすべて」を発表し、英公共放送BBCのドキュメンタリー番組にも約5年前の制作当初から協力してきた。
そして今年3月の放送。「世間の反応が一瞬で変わった。ありがたいけれど、こんなにも日本は外圧に弱いのかと実感した」。それまで訴えを無視し続けてきた事務所も5月、藤島ジュリー景子社長が謝罪し、被害を「知らなかった」とする見解を公表した。
「自分も役員を務める会社で、叔父がやったことを知らなかったわけがない」。事務所が設置した再発防止特別チームについても「世間に対するポーズで、問題の風化を待っている」と感じた。
その後、ジャニーズ性加害問題当事者の会を結成。そしてこの日、国連人権理の会見を聞いた。
「1人で訴えていたころを考えると奇跡みたいだ。ここまで踏み込んでもらえるとは。まず事務所には、被害者と向き合ってほしい」
(三宅令)