“ジョーカーになりきらなければ、事件は起こせなかったと思う”。男が法廷で語ったのは、事件に至った自らの“弱さ”だった。【写真を見る】「ジョーカーになりきらなければ…」京王線刺傷事件の被告(26)が24万円かけた仮装で覆い隠した“弱さ”2021年10月31日、ハロウィーンと衆議院選挙が重なったその日、京王線の車内で乗客を襲い、車両に火を放った男。事件そのものの凶悪さ、犯行後の車内で映画の悪役「ジョーカー」姿でたばこをくゆらす映像が残した印象とは、かけ離れた“弱さ”が法廷にはあった。大量殺害計画の実行までに、男に何があったのだろうか?東京地裁立川支部で7月21日結審した裁判員裁判を振り返る。

「自分の存在価値わからなくなった」9年間付き合った交際相手との別れと慣れ親しんだ職場との別れ【被告人質問】「自分に対する評価、存在価値がかなり低いと考えています。僕なりに被害者のことを考えると、生きていく価値はないとは正直思います」社会を震撼させた大胆な犯行時とは打って変わって、証言台で顔を赤らめながら、自分について語った無職の服部恭太被告(26)。京王線の車内で乗客の男性(当時72)をナイフで刺して大けがをさせ、さらに車内にライターオイルをまいて火をつけ、乗客12人を殺害しようとした殺人未遂などの罪に問われている。法廷では、犯行に至る“2つのきっかけ”を語った。1つは9年間付き合った交際相手との別れだ。この女性とは結婚を前提に同棲もしていた。【被告人質問】「両家の顔合わせや結婚指輪の種類、入籍の日程などがおおむね決まっていました」 しかし2020年11月8日、服部被告は自分の誕生日に突然別れを告げられた。婚約破棄の主な理由は服部被告の金銭状況。当時電話会社で契約社員として働いていた服部被告の貯金額は30万円。「『金銭的余裕がある人がいい』と言われた」(服部被告)。その日は両家の顔合わせに着ていくスーツを2人で買いに行く予定だった。【被告人質問】「彼女だけが信頼、信用できる人で大きな存在でした。結婚できると思っていたのでショックが大きかったです」さらに別れて半年後、女性が結婚したことを知る。約9年間交際した女性がわずか半年で別の誰かと結婚したことについて服部被告は「驚いたというかショックでした」と述べた。もう1つの“きっかけ”は職場の部署異動だった。電話会社でアルバイトから契約社員に登用されていたが、客への対応ミスを起こしたことをきっかけに部署異動を告げられた。【被告人質問】「いい評価をもらえる部署でしたし、自己評価が低くなっていた中で、評価されていました。できれば離れたくないと思いました」「自分の存在価値が分からなくなってしまって死にたいと自殺願望を持つようになりました」「自分が死ぬためには死刑になるしかない」目標としての「ジョーカー」しかし、自分では死ねないとも感じていた。服部被告はイジメや職場での人間関係のトラブルを苦に、過去に2度自殺を試みたが果たせなかったのだという。【被告人質問】「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」服部被告は部署異動後、すぐに電話会社を退職。翌日には犯行で使用されたサバイバルナイフをネットで注文している。法廷で裁判員に示された実物は、ナイフというより小刀というべき長さだった。服部被告はさらに「モチベーションを保つため」日記を付け始める。日記には「人が死ぬ瞬間どんな表情をするか見てみたい」などと殺人に興味があるような言葉を記し、自己暗示のように考えを深めていく。【被告人質問】「事件を起こすしかないんだ。興味を持たなければいけないんだという方向に持って行こうとしました」「ジョーカー」への思いも大きくなっていく。人を殺すための目標になるキャラクターを探しているうちにたどり着いた。【被告人質問】(検察官:あなたにとってジョーカーの存在はどういうもの?)「人の命を軽く見ている、殺人についてなんとも思っていないようなキャラクターに見えました。それくらいの感覚を持たないと殺人を犯すことができない。目標というか、なりきろうという気持ちがありました」“ジョーカー”衣装に24万円 入念に進められた犯行計画服部被告には「2人以上殺害しないと死刑にならない」という認識があった。当初は人が多いハロウィーンの渋谷で無差別殺人を考えたというが、2021年8月に起きた小田急線車内での刺傷事件の影響を受け、電車内での犯行に計画を変えた。【被告人質問】「密室で逃げる場所がなく、より確実に多くの人を殺せると思いました」 2021年9月に八王子のホテルに入った服部被告はジョーカーになりきるために、24万円あまりをかけスーツや靴などを買いそろえた。この間、洗面所でライターオイルが燃えるのか実験を行い、ペットボトルに水を入れどうすれば効率よくオイルをまけるのかを確認。スーツケースをナイフで刺し貫通力を確かめるなど、入念に準備を進めていた。そして10月31日、「単に東京に来てから最も利用していたから」という理由で、京王線に乗り込んだ。「正直かなり緊張していた」語られた犯行直前の心境【被告人質問】(京王線で電車を待っていた際、どういう心境だった?)「正直かなり緊張していました」(大量殺人を起こすことについてはどう思った?)「直前までためらい、躊躇がありました。できればしたくないと思っていました」(躊躇があったのになぜ犯行を?)「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」被害を受けるであろう人のことについては「考えないためにイメージしたのがジョーカーで、それになりきろうとした」と話した服部被告。自分以外の何者かになりきることで、自分の弱さを覆い隠していたのかもしれない。「そのままの自分で事件を起こせたのか?」と、問われると「起こせなかったと思う」と答えた。「申し訳ないと思っている」ようやく語った被害者への謝罪の言葉約3か月かけて準備した無差別大量殺人は「失敗に終わった」。それでも男性(当時72歳)の胸をナイフで刺し、3か月の重傷を負わせた。裁判9日目、弁護側から被害者への気持ちを問われ、初めて謝罪の言葉を口にした。【被告人質問】(男性への気持ちは?)「申し訳ないと思ってます」「被害者とされている方々に申し訳ないという気持ちがあります」事件については「起こすべきではなかった」、「被害者のことを考えると自分はいなくなった方が良いという気持ちがある」と時折、言葉に詰まりながら後悔や謝罪の言葉を口にしている。一方、被害者らは厳罰を望む。刺されて大けがをした男性(当時72)は、裁判で今も手足に後遺症が残り、車いすでの生活を余儀なくされていることを明らかにした。「憎しみが消えることはありませんし十分罪を償って欲しい」と意見陳述している。ライターオイルをかけられた女性は「裁判で急に謝られても信じられません」、「ずっと刑務所で苦しんでほしい」と綴った。検察側は懲役25年を求刑している。判決は7月31日、言い渡される。TBSテレビ司法記者クラブ司法担当 山康平
“ジョーカーになりきらなければ、事件は起こせなかったと思う”。男が法廷で語ったのは、事件に至った自らの“弱さ”だった。
【写真を見る】「ジョーカーになりきらなければ…」京王線刺傷事件の被告(26)が24万円かけた仮装で覆い隠した“弱さ”2021年10月31日、ハロウィーンと衆議院選挙が重なったその日、京王線の車内で乗客を襲い、車両に火を放った男。事件そのものの凶悪さ、犯行後の車内で映画の悪役「ジョーカー」姿でたばこをくゆらす映像が残した印象とは、かけ離れた“弱さ”が法廷にはあった。大量殺害計画の実行までに、男に何があったのだろうか?東京地裁立川支部で7月21日結審した裁判員裁判を振り返る。

「自分の存在価値わからなくなった」9年間付き合った交際相手との別れと慣れ親しんだ職場との別れ【被告人質問】「自分に対する評価、存在価値がかなり低いと考えています。僕なりに被害者のことを考えると、生きていく価値はないとは正直思います」社会を震撼させた大胆な犯行時とは打って変わって、証言台で顔を赤らめながら、自分について語った無職の服部恭太被告(26)。京王線の車内で乗客の男性(当時72)をナイフで刺して大けがをさせ、さらに車内にライターオイルをまいて火をつけ、乗客12人を殺害しようとした殺人未遂などの罪に問われている。法廷では、犯行に至る“2つのきっかけ”を語った。1つは9年間付き合った交際相手との別れだ。この女性とは結婚を前提に同棲もしていた。【被告人質問】「両家の顔合わせや結婚指輪の種類、入籍の日程などがおおむね決まっていました」 しかし2020年11月8日、服部被告は自分の誕生日に突然別れを告げられた。婚約破棄の主な理由は服部被告の金銭状況。当時電話会社で契約社員として働いていた服部被告の貯金額は30万円。「『金銭的余裕がある人がいい』と言われた」(服部被告)。その日は両家の顔合わせに着ていくスーツを2人で買いに行く予定だった。【被告人質問】「彼女だけが信頼、信用できる人で大きな存在でした。結婚できると思っていたのでショックが大きかったです」さらに別れて半年後、女性が結婚したことを知る。約9年間交際した女性がわずか半年で別の誰かと結婚したことについて服部被告は「驚いたというかショックでした」と述べた。もう1つの“きっかけ”は職場の部署異動だった。電話会社でアルバイトから契約社員に登用されていたが、客への対応ミスを起こしたことをきっかけに部署異動を告げられた。【被告人質問】「いい評価をもらえる部署でしたし、自己評価が低くなっていた中で、評価されていました。できれば離れたくないと思いました」「自分の存在価値が分からなくなってしまって死にたいと自殺願望を持つようになりました」「自分が死ぬためには死刑になるしかない」目標としての「ジョーカー」しかし、自分では死ねないとも感じていた。服部被告はイジメや職場での人間関係のトラブルを苦に、過去に2度自殺を試みたが果たせなかったのだという。【被告人質問】「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」服部被告は部署異動後、すぐに電話会社を退職。翌日には犯行で使用されたサバイバルナイフをネットで注文している。法廷で裁判員に示された実物は、ナイフというより小刀というべき長さだった。服部被告はさらに「モチベーションを保つため」日記を付け始める。日記には「人が死ぬ瞬間どんな表情をするか見てみたい」などと殺人に興味があるような言葉を記し、自己暗示のように考えを深めていく。【被告人質問】「事件を起こすしかないんだ。興味を持たなければいけないんだという方向に持って行こうとしました」「ジョーカー」への思いも大きくなっていく。人を殺すための目標になるキャラクターを探しているうちにたどり着いた。【被告人質問】(検察官:あなたにとってジョーカーの存在はどういうもの?)「人の命を軽く見ている、殺人についてなんとも思っていないようなキャラクターに見えました。それくらいの感覚を持たないと殺人を犯すことができない。目標というか、なりきろうという気持ちがありました」“ジョーカー”衣装に24万円 入念に進められた犯行計画服部被告には「2人以上殺害しないと死刑にならない」という認識があった。当初は人が多いハロウィーンの渋谷で無差別殺人を考えたというが、2021年8月に起きた小田急線車内での刺傷事件の影響を受け、電車内での犯行に計画を変えた。【被告人質問】「密室で逃げる場所がなく、より確実に多くの人を殺せると思いました」 2021年9月に八王子のホテルに入った服部被告はジョーカーになりきるために、24万円あまりをかけスーツや靴などを買いそろえた。この間、洗面所でライターオイルが燃えるのか実験を行い、ペットボトルに水を入れどうすれば効率よくオイルをまけるのかを確認。スーツケースをナイフで刺し貫通力を確かめるなど、入念に準備を進めていた。そして10月31日、「単に東京に来てから最も利用していたから」という理由で、京王線に乗り込んだ。「正直かなり緊張していた」語られた犯行直前の心境【被告人質問】(京王線で電車を待っていた際、どういう心境だった?)「正直かなり緊張していました」(大量殺人を起こすことについてはどう思った?)「直前までためらい、躊躇がありました。できればしたくないと思っていました」(躊躇があったのになぜ犯行を?)「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」被害を受けるであろう人のことについては「考えないためにイメージしたのがジョーカーで、それになりきろうとした」と話した服部被告。自分以外の何者かになりきることで、自分の弱さを覆い隠していたのかもしれない。「そのままの自分で事件を起こせたのか?」と、問われると「起こせなかったと思う」と答えた。「申し訳ないと思っている」ようやく語った被害者への謝罪の言葉約3か月かけて準備した無差別大量殺人は「失敗に終わった」。それでも男性(当時72歳)の胸をナイフで刺し、3か月の重傷を負わせた。裁判9日目、弁護側から被害者への気持ちを問われ、初めて謝罪の言葉を口にした。【被告人質問】(男性への気持ちは?)「申し訳ないと思ってます」「被害者とされている方々に申し訳ないという気持ちがあります」事件については「起こすべきではなかった」、「被害者のことを考えると自分はいなくなった方が良いという気持ちがある」と時折、言葉に詰まりながら後悔や謝罪の言葉を口にしている。一方、被害者らは厳罰を望む。刺されて大けがをした男性(当時72)は、裁判で今も手足に後遺症が残り、車いすでの生活を余儀なくされていることを明らかにした。「憎しみが消えることはありませんし十分罪を償って欲しい」と意見陳述している。ライターオイルをかけられた女性は「裁判で急に謝られても信じられません」、「ずっと刑務所で苦しんでほしい」と綴った。検察側は懲役25年を求刑している。判決は7月31日、言い渡される。TBSテレビ司法記者クラブ司法担当 山康平
2021年10月31日、ハロウィーンと衆議院選挙が重なったその日、京王線の車内で乗客を襲い、車両に火を放った男。事件そのものの凶悪さ、犯行後の車内で映画の悪役「ジョーカー」姿でたばこをくゆらす映像が残した印象とは、かけ離れた“弱さ”が法廷にはあった。大量殺害計画の実行までに、男に何があったのだろうか?東京地裁立川支部で7月21日結審した裁判員裁判を振り返る。
【被告人質問】「自分に対する評価、存在価値がかなり低いと考えています。僕なりに被害者のことを考えると、生きていく価値はないとは正直思います」
社会を震撼させた大胆な犯行時とは打って変わって、証言台で顔を赤らめながら、自分について語った無職の服部恭太被告(26)。京王線の車内で乗客の男性(当時72)をナイフで刺して大けがをさせ、さらに車内にライターオイルをまいて火をつけ、乗客12人を殺害しようとした殺人未遂などの罪に問われている。法廷では、犯行に至る“2つのきっかけ”を語った。1つは9年間付き合った交際相手との別れだ。この女性とは結婚を前提に同棲もしていた。
【被告人質問】「両家の顔合わせや結婚指輪の種類、入籍の日程などがおおむね決まっていました」 しかし2020年11月8日、服部被告は自分の誕生日に突然別れを告げられた。婚約破棄の主な理由は服部被告の金銭状況。当時電話会社で契約社員として働いていた服部被告の貯金額は30万円。「『金銭的余裕がある人がいい』と言われた」(服部被告)。その日は両家の顔合わせに着ていくスーツを2人で買いに行く予定だった。
【被告人質問】「彼女だけが信頼、信用できる人で大きな存在でした。結婚できると思っていたのでショックが大きかったです」
さらに別れて半年後、女性が結婚したことを知る。約9年間交際した女性がわずか半年で別の誰かと結婚したことについて服部被告は「驚いたというかショックでした」と述べた。もう1つの“きっかけ”は職場の部署異動だった。電話会社でアルバイトから契約社員に登用されていたが、客への対応ミスを起こしたことをきっかけに部署異動を告げられた。
【被告人質問】「いい評価をもらえる部署でしたし、自己評価が低くなっていた中で、評価されていました。できれば離れたくないと思いました」「自分の存在価値が分からなくなってしまって死にたいと自殺願望を持つようになりました」
しかし、自分では死ねないとも感じていた。服部被告はイジメや職場での人間関係のトラブルを苦に、過去に2度自殺を試みたが果たせなかったのだという。
【被告人質問】「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」
服部被告は部署異動後、すぐに電話会社を退職。翌日には犯行で使用されたサバイバルナイフをネットで注文している。法廷で裁判員に示された実物は、ナイフというより小刀というべき長さだった。服部被告はさらに「モチベーションを保つため」日記を付け始める。日記には「人が死ぬ瞬間どんな表情をするか見てみたい」などと殺人に興味があるような言葉を記し、自己暗示のように考えを深めていく。
【被告人質問】「事件を起こすしかないんだ。興味を持たなければいけないんだという方向に持って行こうとしました」
「ジョーカー」への思いも大きくなっていく。人を殺すための目標になるキャラクターを探しているうちにたどり着いた。
【被告人質問】(検察官:あなたにとってジョーカーの存在はどういうもの?)「人の命を軽く見ている、殺人についてなんとも思っていないようなキャラクターに見えました。それくらいの感覚を持たないと殺人を犯すことができない。目標というか、なりきろうという気持ちがありました」
服部被告には「2人以上殺害しないと死刑にならない」という認識があった。当初は人が多いハロウィーンの渋谷で無差別殺人を考えたというが、2021年8月に起きた小田急線車内での刺傷事件の影響を受け、電車内での犯行に計画を変えた。
【被告人質問】「密室で逃げる場所がなく、より確実に多くの人を殺せると思いました」 2021年9月に八王子のホテルに入った服部被告はジョーカーになりきるために、24万円あまりをかけスーツや靴などを買いそろえた。この間、洗面所でライターオイルが燃えるのか実験を行い、ペットボトルに水を入れどうすれば効率よくオイルをまけるのかを確認。スーツケースをナイフで刺し貫通力を確かめるなど、入念に準備を進めていた。そして10月31日、「単に東京に来てから最も利用していたから」という理由で、京王線に乗り込んだ。
【被告人質問】(京王線で電車を待っていた際、どういう心境だった?)「正直かなり緊張していました」
(大量殺人を起こすことについてはどう思った?)「直前までためらい、躊躇がありました。できればしたくないと思っていました」
(躊躇があったのになぜ犯行を?)「自分が死ぬためには死刑になるしかないんだという思いがあり、事件を起こすしかないと思いました」
被害を受けるであろう人のことについては「考えないためにイメージしたのがジョーカーで、それになりきろうとした」と話した服部被告。自分以外の何者かになりきることで、自分の弱さを覆い隠していたのかもしれない。「そのままの自分で事件を起こせたのか?」と、問われると「起こせなかったと思う」と答えた。
約3か月かけて準備した無差別大量殺人は「失敗に終わった」。それでも男性(当時72歳)の胸をナイフで刺し、3か月の重傷を負わせた。裁判9日目、弁護側から被害者への気持ちを問われ、初めて謝罪の言葉を口にした。
【被告人質問】(男性への気持ちは?)「申し訳ないと思ってます」「被害者とされている方々に申し訳ないという気持ちがあります」
事件については「起こすべきではなかった」、「被害者のことを考えると自分はいなくなった方が良いという気持ちがある」と時折、言葉に詰まりながら後悔や謝罪の言葉を口にしている。
一方、被害者らは厳罰を望む。刺されて大けがをした男性(当時72)は、裁判で今も手足に後遺症が残り、車いすでの生活を余儀なくされていることを明らかにした。「憎しみが消えることはありませんし十分罪を償って欲しい」と意見陳述している。ライターオイルをかけられた女性は「裁判で急に謝られても信じられません」、「ずっと刑務所で苦しんでほしい」と綴った。
検察側は懲役25年を求刑している。判決は7月31日、言い渡される。