「パパ活」ほどの需要はないとはいえ、若い男性が年上の女性とデートしてお小遣いをいただくという「ママ活」も一部ではニーズがある。なかでもシングルマザーの事情は切実だ。予算のない彼女らは出張ホストを呼ぶことができず、ママ活男子とギリギリの値段交渉を繰り広げている。 マッチングアプリや出会い系サイトを20年以上ウォッチし、著書に『美男子のお値段』などがあるライターの内藤みか(@micanaitoh)が実態をリポートする。
◆低予算のシングルマザー
ある程度余裕がある女性なら「出張ホスト」や「レンタル恋人」を呼び、擬似デートを楽しむことができる。しかしこうした遊びにはお金がかかる。1時間で5000円ほどの料金に加え、男性の交通費や飲食費などもすべて女性が負担しなくてはならない。
3歳と4歳の男児を育てるシングルマザーの京子さん(仮名・33歳)はその費用が捻出できないという。
「私も時には男性と遊びたいけど、レンタル恋人と数時間遊んだら3万円はかかる。ギリギリの生活をしてるんでそんなに出せないです。だからマッチングアプリでママ活を行っている男性を探してます。そちらのほうが安く済むんです」(京子さん、以下同じ)
◆価格が決まっていないママ活市場
ママ活市場の価格はあってないようなものである。なにしろママ活希望の男性に対し、ママの数が圧倒的に少ないのが現状だ。男女比は10:1以上とも言われ、多くの男性はマッチングすらままならないという。そのため相場も下がり続け、今では1~2時間のカフェデートで5000円もらえればいいほうだという話も。
「ママ活希望の元モデルや元ホストはかっこいいけど、交渉慣れしていて安く遊ぶのは難しい。でも平均的レベルの男性は、ママと会うことにこぎつけることすら難しいらしくて、誘うと飛びついてくる。なかには『初回無料でいいです』なんて人もいるんですよ」
◆限界の価格交渉
「安ければ安いほどありがたい」と語る京子さんは、初回無料の男性とデートしたことがある。普通のサラリーマンをしているという太郎(仮名・25)とだ。普段は2人の男児の世話に息つく暇もないが、月に一度ほど実家の母親に預けているので、その日に彼と会った。
新宿のカフェでお茶をしたのだが、太郎はクラスに1人はいる、人の良さそうな明るい盛り上げ役というムードの男性で、好感を持てた。おしゃれして出かけた大人の男性との時間は、お茶をするだけでも十分癒されるものだった。
「また会いたかったので、来月は一緒にテーマパークに行きたいと伝えました。『1日遊ぶのなら2万円はお手当をもらわないと』と言う彼に、それなら他を探すと値引き交渉を頑張り、1万円でデートしてもらえることになったんです」
◆子どもと行った場所に
翌月、京子さんが太郎と向かったテーマパークは、ゴールデンウィークに子どもたちと行ったところだった。
「子どもは小さいから絶叫マシーンにも乗れないし、レストランでゆっくり食事を楽しむこともできなくて、すごく悔しかったんです。だから誰か大人と一緒に行き直したかった」
太郎は京子がシングルマザーだということも知らないので、普通のカップルのように2人ではしゃぎ、園内を手をつないで歩いた。絶叫マシンにもう一度乗りたいとせがむと、太郎は嫌な顔ひとつせずに、一緒に行列に並び直してくれた。
「レストランでもゆっくりコースを味わえたのはよかったですけど、入場券や食費を彼の分まで払わなくちゃならないから大出費でした」
◆ガチ恋はできない

「すごくいい人だし、好きになってしまいそうでした。でも、好きになっちゃいけないなって。私はやっぱり子どもが一番だし」と、京子さんはなんとか踏みとどまったという。
恋愛感情が育たなかったのは太郎も同じだった。駅に向かう道の街灯の陰で交通費を含む1万2000円を入れた封筒を渡すと、「今日は特別にこの値段でいいですけど、次からは2万円ですからね」と、クールに告げてきたのだ。
◆ATM扱いされる苦痛
「彼とはもう会わないと思います。2万円も払ったら、レンタル恋人と変わらないくらい高いし、それだったらプロのレンタル恋人のほうを呼びますよね。色恋っていうか、太郎が私を好きになったフリをしてくれてたら、私も傾いちゃったかもしれないけど」(京子さん)
さらに、駅前のショッピングセンターをのぞいた時の太郎の態度も好きになれなかったという。
「微妙にねだられたんですよね。タオルとかキーホルダーとかを手にしては、これ欲しいなとつぶやかれたら『買ってあげるよ』と言うしかないじゃないですか。向こうもそれを期待してたのがわかったし。ATM扱いされてるのが、すごく苦痛でした」と京子さんは苦い顔をした。
◆当分は初回無料で
京子さんは今後も毎月1度は、ママ活男子とデートするつもりだそうだ。
「初回無料と言ってる人を選べば、1回は無料で男の人とデートできますよね。気が合う子がいれば、今度は水族館に行きたいです」
京子さんは、今後もママ活代金ができるだけ安くなるよう交渉していくという。好みのルックスよりも、安さを重視するつもりだそうだ。お金をかけずに遊びたいシングルマザーと、ママ活で稼ぎたい男性との攻防は、今後も続きそうだ。
高いと判断されると女性はすぐ他の男に流れてしまうので、男性側が大幅値引きをしているのが現状なのかもしれない。
ママの数が圧倒的に少ないので、ママ側は男性を選び放題。交渉決裂すると女性はすぐ他の男に流れてしまうので、男性側は大幅値引きに応じることも少なくない。1日デートして1万円ならば、普通のアルバイトをしたほうが稼げるだろう。簡単に大金が儲かるというイメージとは程遠い、しょっぱい現実があるようだ。
<TEXT/内藤みか>