「新鮮すぎます!見たことない映像が多すぎて興奮しています!」
【写真を見る】宮内庁職員も驚いた「見たことない皇后さまの笑顔」のワケと浮上した“課題”東京で、インドネシアから伝送される映像を見ていた元宮内庁担当記者は、インドネシアで同行取材していた私にそう矢継ぎ早にメッセージを送ってきた。即位後初の国際親善訪問として、インドネシアを訪問していた天皇皇后両陛下。滞在3日目、カメラの前での皇后さまの弾けるような笑顔は、皇室取材経験の長い記者にとっても衝撃的だったようだ。

この日、皇后さまはジョコ大統領夫人の取り計らいで、バティックというインドネシア伝統的な染め物の絵付けなどを体験された。日本であれば、1、2分の冒頭撮影といったところだが、インドネシアは違った。ずっとカメラ撮影OKなのだ。映像には、実に様々な表情の皇后さまが記録されていた。たくさんのバティックの中から、「あちらのブルーのを・・・」と選ばれる皇后さま。少し遠慮気味に「着せていただけるんですか?」と言うと、自ら選んだバティックを試着し、カメラに対しあの弾けるような笑顔を見せられた。この皇后さまの笑顔は即座にニュースになり世界中を駆け巡った。同行している宮内庁職員は、このニュースをみて、驚きを隠すことなくこう言った。「あんな皇后さまのご様子を見るのは初めてです」21年ぶりの国際親善訪問での皇后さまの笑顔はどのようにして生まれたのだろうか?“見たことない皇后さまの笑顔”が生まれた背景皇后さまのあの笑顔がうまれたのは、ジョコ大統領夫人との会見でのことだった。この場合の「会見」とは、いわゆる記者会見のようなものではなく、「会うこと」を指す。日本で両陛下と外国の賓客との会見が行われる場合は、両陛下がお住まいの御所で、丸テーブルを囲みいくつかのテーマに沿って会話が繰り広げられる。しかしインドネシアスタイルは勝手が違った。大統領夫人が、バティックというインドネシア伝統の染め物など様々な文化的なプログラムを用意していて、皇后さまがそれを体験するという形で行われた。驚いたのは、インドネシア政府が、この会見の一部始終のカメラ撮影を許可したことだ。そもそも、この大統領主催の公式行事は、インドネシア政府のYoutubeで生配信されていたのだが、日本から同行したカメラマンも、ここまで撮れるとは想定外だったであろう。国内であれば、皇后さまの撮影は、三脚に固定したカメラで遠くからとるのが常だ。それが今回は、カメラを担いでのいわば「密着取材」スタイルで行われたのだ。かくして宮内庁職員ですら「見たことない」と言った皇后さまの笑顔がとらえられた。しかし、日々取材している立場からすると、「“カメラの前での”あんな笑顔は見たことない」というのが正確なところだと思う。カメラ撮影ができない場所で垣間見える皇后さまのお人柄普段、こうしたカメラ取材ができないだけで、今、皇后さまの自然体の笑顔は間違いなく、あるのだ。コロナによる規制が少なくなり、様々な行事にお出ましになるようになった両陛下。皇后さまは時に声をあげて笑われ、自ら冗談を言われることもある。今年4月、とある式典で案内役を担当した和田内閣府副大臣と田和内閣府次官に対し、皇后さまは「和田さんと田和さん・・・あ、私は(元)小和田です」といって、周囲を大いに笑わせられた。6月4日に岩手県を訪問した際には、奉迎者の熱烈な「陛下ー!雅子さまー!」という声に応え、予定にはなかったがその人たちのもとへ歩み寄られた。「あ~雅子さまおきれい!」と言われると、笑いながら「ありがとうございます」と応え、しばし会話を楽しまれた。いずれも、記者はいるが、カメラ撮影は許可されていない場面でのことだった。映像がないと伝えられないことも多く、両陛下の人柄がにじみ出るこうした場面を広く伝えたいと、現場でもどかしく思うことが多々ある。宮内庁から提供される映像は「無音」・・・会話の内容も不明天皇陛下をはじめ、皇族の方の取材は、メディアによる取材と、宮内庁からの提供映像の2パターンがある。メディアによる取材では、カメラの前で報道陣からの問いかけに答えられることもある。4月に御料牧場に行かれた際には、桜を見ようとした両陛下のおでこがぶつかり、陛下が「ごめんなさい!」皇后さまが「ごっつんこ」と言い、仲睦まじい様子が大きく報じられた。一方、宮内庁の提供映像は、御所や宮殿での行事のほか、お誕生日や記念日の映像などがあるが、いずれも「無音」である。最近だと、両陛下の結婚30年にあわせ、愛子さまと一緒に大変にこやかに会話されている映像が公開された。しかし、ご一家がどんな会話をされ楽しそうにされているのかは、宮内庁側に質問したが「分かりません」とのことだった。去年、悠仁さまの誕生日映像で初めて「音声」が入った。しかし、悠仁さま本人の声ではなく、セミの鳴き声や鳥のさえずりといった音声だった。それでも、宮内庁は「今年は音声をいれております」と説明し、宮内記者会の間では驚きを持って受け止められた。こうした、宮内庁提供の映像について、不満というよりも、単純にもったいないと思ってしまう。宮内庁は、皇室の活動や人柄を伝えるためには、これで十分だと考えているのか。記者会見で幹部に聞く機会があった。宮内庁はどう考えているのか?次長会見で聞いた6月27日の会見で、宮内庁の池田次長は、今回の両陛下のインドネシア訪問について「一つ一つの行事や、場面でのお姿やお言葉から、両陛下のお気持ちが伝わっていった」と振り返った。ならば、「宮内庁の今後の広報体制や取材の在り方について感じたことはないか?」と質問した。回答は「国民の皆さんに両陛下のご活動それからお人柄なども広く伝わることが適切だというふうに思っておりまして、広報の充実にも今後進めてまいりたい」とのことだったので、もっと伝わるように変えていきたいということか?と重ねて質問した。しかし、「今まで申し上げている通りです。広報の充実については図っていきたいというふうに考えています。具体的にどのようにしていくかということはそれぞれの場面で考え、今後検討していくということです」との回答にとどまった。本当はそこにある「皇后さまの笑顔」を伝える意義ある側近は、「今回の撮影は、海外で、ハプニング的だったから成立したわけで、今後もすべての行事をとなると、皇后さまの負担が大きい」と話した。確かに、長期療養中の皇后さまは、カメラで撮られることが辛い時期を経験されている。現在も体調には波がおありだ。今すぐにすべてをオープンに変えるべきだとは思わないが、本当はそこにある「見たこともない皇后さまの笑顔」が、もっと国民に伝わればと思う。「お世継ぎ問題」など様々な苦労を乗り越え、皇后としての務めを一生懸命に果たされようとしている姿をしっかりと伝えることは、皇室を支える国民からの支持と信頼に関わる大切なことではないだろうか。宮内庁は今年4月、「広報室」を新設した。皇室に関する情報発信強化のためだとしている。また、天皇陛下は、今年の誕生日会見で「国民との交流を重ね、国民と皇室の信頼関係を築く上では、皇室に関する情報を、適切なタイミングで国民の皆さんに分かりやすくお知らせしていくことも大事なことであると考えます」と述べられた。今後、宮内庁が取材機会や発信方法をよりよいものとし、今回の皇后さまの笑顔が特別なものとして残るのではなく、後に「あのインドネシアが転機だった」となるよう期待したい。
東京で、インドネシアから伝送される映像を見ていた元宮内庁担当記者は、インドネシアで同行取材していた私にそう矢継ぎ早にメッセージを送ってきた。即位後初の国際親善訪問として、インドネシアを訪問していた天皇皇后両陛下。滞在3日目、カメラの前での皇后さまの弾けるような笑顔は、皇室取材経験の長い記者にとっても衝撃的だったようだ。
この日、皇后さまはジョコ大統領夫人の取り計らいで、バティックというインドネシア伝統的な染め物の絵付けなどを体験された。日本であれば、1、2分の冒頭撮影といったところだが、インドネシアは違った。ずっとカメラ撮影OKなのだ。映像には、実に様々な表情の皇后さまが記録されていた。たくさんのバティックの中から、「あちらのブルーのを・・・」と選ばれる皇后さま。少し遠慮気味に「着せていただけるんですか?」と言うと、自ら選んだバティックを試着し、カメラに対しあの弾けるような笑顔を見せられた。この皇后さまの笑顔は即座にニュースになり世界中を駆け巡った。同行している宮内庁職員は、このニュースをみて、驚きを隠すことなくこう言った。
「あんな皇后さまのご様子を見るのは初めてです」
21年ぶりの国際親善訪問での皇后さまの笑顔はどのようにして生まれたのだろうか?
皇后さまのあの笑顔がうまれたのは、ジョコ大統領夫人との会見でのことだった。この場合の「会見」とは、いわゆる記者会見のようなものではなく、「会うこと」を指す。
日本で両陛下と外国の賓客との会見が行われる場合は、両陛下がお住まいの御所で、丸テーブルを囲みいくつかのテーマに沿って会話が繰り広げられる。
しかしインドネシアスタイルは勝手が違った。大統領夫人が、バティックというインドネシア伝統の染め物など様々な文化的なプログラムを用意していて、皇后さまがそれを体験するという形で行われた。驚いたのは、インドネシア政府が、この会見の一部始終のカメラ撮影を許可したことだ。そもそも、この大統領主催の公式行事は、インドネシア政府のYoutubeで生配信されていたのだが、日本から同行したカメラマンも、ここまで撮れるとは想定外だったであろう。
国内であれば、皇后さまの撮影は、三脚に固定したカメラで遠くからとるのが常だ。それが今回は、カメラを担いでのいわば「密着取材」スタイルで行われたのだ。かくして宮内庁職員ですら「見たことない」と言った皇后さまの笑顔がとらえられた。
しかし、日々取材している立場からすると、「“カメラの前での”あんな笑顔は見たことない」というのが正確なところだと思う。
普段、こうしたカメラ取材ができないだけで、今、皇后さまの自然体の笑顔は間違いなく、あるのだ。コロナによる規制が少なくなり、様々な行事にお出ましになるようになった両陛下。皇后さまは時に声をあげて笑われ、自ら冗談を言われることもある。今年4月、とある式典で案内役を担当した和田内閣府副大臣と田和内閣府次官に対し、皇后さまは「和田さんと田和さん・・・あ、私は(元)小和田です」といって、周囲を大いに笑わせられた。6月4日に岩手県を訪問した際には、奉迎者の熱烈な「陛下ー!雅子さまー!」という声に応え、予定にはなかったがその人たちのもとへ歩み寄られた。「あ~雅子さまおきれい!」と言われると、笑いながら「ありがとうございます」と応え、しばし会話を楽しまれた。いずれも、記者はいるが、カメラ撮影は許可されていない場面でのことだった。映像がないと伝えられないことも多く、両陛下の人柄がにじみ出るこうした場面を広く伝えたいと、現場でもどかしく思うことが多々ある。
天皇陛下をはじめ、皇族の方の取材は、メディアによる取材と、宮内庁からの提供映像の2パターンがある。メディアによる取材では、カメラの前で報道陣からの問いかけに答えられることもある。4月に御料牧場に行かれた際には、桜を見ようとした両陛下のおでこがぶつかり、陛下が「ごめんなさい!」皇后さまが「ごっつんこ」と言い、仲睦まじい様子が大きく報じられた。
一方、宮内庁の提供映像は、御所や宮殿での行事のほか、お誕生日や記念日の映像などがあるが、いずれも「無音」である。最近だと、両陛下の結婚30年にあわせ、愛子さまと一緒に大変にこやかに会話されている映像が公開された。しかし、ご一家がどんな会話をされ楽しそうにされているのかは、宮内庁側に質問したが「分かりません」とのことだった。
去年、悠仁さまの誕生日映像で初めて「音声」が入った。しかし、悠仁さま本人の声ではなく、セミの鳴き声や鳥のさえずりといった音声だった。それでも、宮内庁は「今年は音声をいれております」と説明し、宮内記者会の間では驚きを持って受け止められた。
こうした、宮内庁提供の映像について、不満というよりも、単純にもったいないと思ってしまう。
宮内庁は、皇室の活動や人柄を伝えるためには、これで十分だと考えているのか。記者会見で幹部に聞く機会があった。
6月27日の会見で、宮内庁の池田次長は、今回の両陛下のインドネシア訪問について「一つ一つの行事や、場面でのお姿やお言葉から、両陛下のお気持ちが伝わっていった」と振り返った。ならば、「宮内庁の今後の広報体制や取材の在り方について感じたことはないか?」と質問した。回答は「国民の皆さんに両陛下のご活動それからお人柄なども広く伝わることが適切だというふうに思っておりまして、広報の充実にも今後進めてまいりたい」とのことだったので、もっと伝わるように変えていきたいということか?と重ねて質問した。しかし、「今まで申し上げている通りです。広報の充実については図っていきたいというふうに考えています。具体的にどのようにしていくかということはそれぞれの場面で考え、今後検討していくということです」との回答にとどまった。
ある側近は、「今回の撮影は、海外で、ハプニング的だったから成立したわけで、今後もすべての行事をとなると、皇后さまの負担が大きい」と話した。確かに、長期療養中の皇后さまは、カメラで撮られることが辛い時期を経験されている。現在も体調には波がおありだ。今すぐにすべてをオープンに変えるべきだとは思わないが、本当はそこにある「見たこともない皇后さまの笑顔」が、もっと国民に伝わればと思う。
「お世継ぎ問題」など様々な苦労を乗り越え、皇后としての務めを一生懸命に果たされようとしている姿をしっかりと伝えることは、皇室を支える国民からの支持と信頼に関わる大切なことではないだろうか。
宮内庁は今年4月、「広報室」を新設した。皇室に関する情報発信強化のためだとしている。また、天皇陛下は、今年の誕生日会見で「国民との交流を重ね、国民と皇室の信頼関係を築く上では、皇室に関する情報を、適切なタイミングで国民の皆さんに分かりやすくお知らせしていくことも大事なことであると考えます」と述べられた。
今後、宮内庁が取材機会や発信方法をよりよいものとし、今回の皇后さまの笑顔が特別なものとして残るのではなく、後に「あのインドネシアが転機だった」となるよう期待したい。