あなたはコロナ禍で、必要以上に商品を買いだめしたことはないだろうか?明治学院大学などの研究で、そんな「パニック購買」をするのは、普段あまり日用品や食品を買わない男性が多いことが分かったという。ウェットティッシュを普段の22倍も買う人とは?明治学院大学の中野暁専任講師らは、20~69歳の3万8213人の購買状況を分析し、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月の政府による一斉休校要請と、同4月の緊急事態宣言、それぞれの後に一時的な購買増加が起きたタイミングを把握した。
さらに個人単位の購買を調べるため、アンケート調査などの詳細なデータが揃っている968人を分析し、以下のような5つのグループに分類した。・強くパニック購買する人たち(全体の5.8%)・弱くパニック購買する人たち(15.8%)・合理的に買い溜める人たち(15.0%)・無関心な人たち(24.3%)・通常より少し多くの備蓄をする購買経験の豊富な人たち(39.2%)このうち「強くパニック購買する人たち」は2月の一斉休校要請の後に、ウエットティッシュを普段の約22倍、家庭用手袋を約18倍、ペット用品を約12倍多く購入していた。一方「弱くパニック購買する人たち」が最も買っていたのは、パックご飯などで約2.6倍。「合理的に買い溜める人たち」は、家庭用手袋を3.6倍。「無関心な人たち」はフルーツ缶詰を1.2倍。「購買経験の豊富な人たち」はウェットティッシュを2.4倍買っていた。「強くパニック購買する人たち」は、普段あまり日用品や食品を買わない男性が多く、心理的には不安感や衝動性が関係しているという。そのほか、子どもが多い人、スマホのニュースをよく見る人、ネット通販よりも実店舗を使う人が多いという傾向が見られた。研究グループは、パニック購買する消費者の割合は少ないため、一部の過度な買い占めを防ぐことができれば、全体への供給が安定することが示唆されるとまとめている。また、不安感や衝動性にかられた購買を避けるため、家庭で普段の買い物をしている人が、購入する量の調整を行うなど、家族で注意喚起することが有効だという。パニック購買者…男性が多いのは想定外でしたパニック購買によって特定の商品が買い占められてしまうと、それが本当に必要な人は大いに困ることになってしまう。そんな事態を防ぐにはどうしたらいいのか?なぜ彼らはパニック購買をしてしまうのか?明治学院大学経済学部専任講師の中野暁さんに聞いてみた。――そもそも、なぜパニック購買を調べようと思った?パニック購買はコロナ初期に大きな社会問題になりました。しかし、パニック購買している消費者を実際のデータで確認した取り組みは少なく、店頭に押し寄せた人々の映像などの印象論で語られることが多かったように思います。それに対して、本研究は実際のデータを使って、特に以下2点を新しい課題として取り組みました。第一に、個人単位の長期的な購買データを使って、過去の自分自身の購買状況(平時の購買状況)と比較して、この機会にどれだけ多くを買ったかという実際の行動を定量的に明らかにすることです。第二に、そうした行動の背後にある心理を、異なる種類のデータ(行動データとアンケートデータ)を組合せて検証していくことです。これにより、消費者の特性について詳細に議論をしていきました。――はじめから「強くパニック購買する人たち」は男性が多いと思っていた?はじめは、家事を普段担当する女性や高齢者などをイメージしていました。今回の研究では食品・日用品全般の実データを分析していくことによって、新しい視点が見えてきました。――なぜパニック購買をする?保存に適した量が分からないから?根本には不安感や衝動性を感じやすい人たちであるという心理的な特性が関係していると思われます。そうした人たちのうち、日頃購入していない人は、こうした機会に必要以上に求めてしまう傾向があるといえます。――子どもの数が多いと、なぜパニック購買の傾向が強くなる?適量を把握することの難しさや「念のため、買っておこう」という意識がより強く働いてしまうことが関係すると思われます。――5.8%の「強くパニック購買する人たち」の買い占めを防げば供給が安定する?この人たちだけをコントロールするだけではだめですが、例えば「弱くパニック購買する人たち(15.8%)」等の他の層への影響も含めて、一部の人たちの買い占めを防ぐ施策は重要だと考えます。――例えば、一部消費者の買い占めを防ぐには、どんな方法が考えられる?一人あたりの購入数量を制限することはやはり重要だと思います。それ以外にも、不安感や衝動性による購買を避けるような注意喚起をしていくことも大切です。例えば、普段の生活で実際にどれくらいの食品・日用品の量が必要になるか、その目安となる情報を公開していくことも、不安感や衝動性を低下させることのできる施策だと思います。また、家庭内でも日頃から日用品・食品を買っている主たる家事担当者が購入量の調整を行うなど、家族の中で注意喚起していくことも有用だと思います。古くはオイルショックのトイレットペーパー騒動を始め、東日本大震災でもパニック購入が起きたことは多くの人が覚えているだろう。コロナ禍ではマスク不足などで医療現場にも影響が出てしまった。パニック購買がさらなるパニックを呼ぶ負の連鎖をうまないためには、各家庭や一人一人の心がけも必要なのかもしれない。
あなたはコロナ禍で、必要以上に商品を買いだめしたことはないだろうか?明治学院大学などの研究で、そんな「パニック購買」をするのは、普段あまり日用品や食品を買わない男性が多いことが分かったという。
明治学院大学の中野暁専任講師らは、20~69歳の3万8213人の購買状況を分析し、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月の政府による一斉休校要請と、同4月の緊急事態宣言、それぞれの後に一時的な購買増加が起きたタイミングを把握した。
さらに個人単位の購買を調べるため、アンケート調査などの詳細なデータが揃っている968人を分析し、以下のような5つのグループに分類した。
・強くパニック購買する人たち(全体の5.8%)・弱くパニック購買する人たち(15.8%)・合理的に買い溜める人たち(15.0%)・無関心な人たち(24.3%)・通常より少し多くの備蓄をする購買経験の豊富な人たち(39.2%)
このうち「強くパニック購買する人たち」は2月の一斉休校要請の後に、ウエットティッシュを普段の約22倍、家庭用手袋を約18倍、ペット用品を約12倍多く購入していた。
一方「弱くパニック購買する人たち」が最も買っていたのは、パックご飯などで約2.6倍。「合理的に買い溜める人たち」は、家庭用手袋を3.6倍。「無関心な人たち」はフルーツ缶詰を1.2倍。「購買経験の豊富な人たち」はウェットティッシュを2.4倍買っていた。
「強くパニック購買する人たち」は、普段あまり日用品や食品を買わない男性が多く、心理的には不安感や衝動性が関係しているという。そのほか、子どもが多い人、スマホのニュースをよく見る人、ネット通販よりも実店舗を使う人が多いという傾向が見られた。
研究グループは、パニック購買する消費者の割合は少ないため、一部の過度な買い占めを防ぐことができれば、全体への供給が安定することが示唆されるとまとめている。また、不安感や衝動性にかられた購買を避けるため、家庭で普段の買い物をしている人が、購入する量の調整を行うなど、家族で注意喚起することが有効だという。
パニック購買によって特定の商品が買い占められてしまうと、それが本当に必要な人は大いに困ることになってしまう。そんな事態を防ぐにはどうしたらいいのか?なぜ彼らはパニック購買をしてしまうのか?明治学院大学経済学部専任講師の中野暁さんに聞いてみた。
――そもそも、なぜパニック購買を調べようと思った?
パニック購買はコロナ初期に大きな社会問題になりました。しかし、パニック購買している消費者を実際のデータで確認した取り組みは少なく、店頭に押し寄せた人々の映像などの印象論で語られることが多かったように思います。
それに対して、本研究は実際のデータを使って、特に以下2点を新しい課題として取り組みました。第一に、個人単位の長期的な購買データを使って、過去の自分自身の購買状況(平時の購買状況)と比較して、この機会にどれだけ多くを買ったかという実際の行動を定量的に明らかにすることです。
第二に、そうした行動の背後にある心理を、異なる種類のデータ(行動データとアンケートデータ)を組合せて検証していくことです。これにより、消費者の特性について詳細に議論をしていきました。
――はじめから「強くパニック購買する人たち」は男性が多いと思っていた?
はじめは、家事を普段担当する女性や高齢者などをイメージしていました。今回の研究では食品・日用品全般の実データを分析していくことによって、新しい視点が見えてきました。
――なぜパニック購買をする?保存に適した量が分からないから?
根本には不安感や衝動性を感じやすい人たちであるという心理的な特性が関係していると思われます。そうした人たちのうち、日頃購入していない人は、こうした機会に必要以上に求めてしまう傾向があるといえます。
――子どもの数が多いと、なぜパニック購買の傾向が強くなる?
適量を把握することの難しさや「念のため、買っておこう」という意識がより強く働いてしまうことが関係すると思われます。
――5.8%の「強くパニック購買する人たち」の買い占めを防げば供給が安定する?
この人たちだけをコントロールするだけではだめですが、例えば「弱くパニック購買する人たち(15.8%)」等の他の層への影響も含めて、一部の人たちの買い占めを防ぐ施策は重要だと考えます。
――例えば、一部消費者の買い占めを防ぐには、どんな方法が考えられる?
一人あたりの購入数量を制限することはやはり重要だと思います。それ以外にも、不安感や衝動性による購買を避けるような注意喚起をしていくことも大切です。
例えば、普段の生活で実際にどれくらいの食品・日用品の量が必要になるか、その目安となる情報を公開していくことも、不安感や衝動性を低下させることのできる施策だと思います。
また、家庭内でも日頃から日用品・食品を買っている主たる家事担当者が購入量の調整を行うなど、家族の中で注意喚起していくことも有用だと思います。
古くはオイルショックのトイレットペーパー騒動を始め、東日本大震災でもパニック購入が起きたことは多くの人が覚えているだろう。コロナ禍ではマスク不足などで医療現場にも影響が出てしまった。パニック購買がさらなるパニックを呼ぶ負の連鎖をうまないためには、各家庭や一人一人の心がけも必要なのかもしれない。