札幌市中央区の繁華街ススキノの一角にあるラブホテルの客室で2日午後、首が切断された状態の男性の遺体が見つかった。ホテルの防犯カメラには男性と一緒に入室した別の人物が退出した様子が写っており、道警は殺人、死体遺棄事件として、この人物の行方を追っている。しかし、なぜ男性を殺害し、頭部だけを持ち去ったのか――。
道警によると、遺体が見つかったのは浴室。チェックアウトしないことを不審に思った従業員が2日午後3時ごろ、部屋を訪ねた。司法解剖の結果、死因は出血性ショックで、死亡後に首が切断されたという。
男性は年齢が45~70歳、身長は160~170センチの中肉中背。現場には携帯電話や身分証などの所持品はなかった。一緒に入室した人物が、身元の特定を遅らせる目的で持ち去った可能性もあるとみて調べている。刃物など切断に使われた道具は見つかっていない。現場はススキノの一角で、ラブホテルが立ち並んでいる。
頭部切断事件とは衝撃的だ。先月末には千葉県市川市で、45歳の娘が70代の母親の遺体を切断し、10袋以上に分けて入れたバラバラ事件があったばかり。「霊媒師になるため殺し、遺体の一部を食べた」などと供述している。遺体を切断した動機としてはレアケースだ。それでも、過去の頭部切断事件の犯人が取り調べや公判で理由を語っているケースから、推測できる動機がいくつかある。
元警察関係者は「一つは遺体を傷つけ、頭部を手元に置いておくこと自体が目的の猟奇殺人事件です。犯人が妄想を抱いており、生き返らなくするために頭部を切断した事件もありました。他には、遺体を運びやすくするために全身をバラバラにする過程において、人間らしさを消すためにまず頭部を切断するということです。しかし、頭部を切断した時点で、疲労困ぱいし、気力もそがれ、それ以上バラバラにできずにあきらめてしまうケースがありました」と指摘する。今回は遺体を保管できる自宅ではなく、長期滞在型ホテルでもなかったため、他の理由が考えられる。
「被害者の身元特定を遅らせるために、頭部を持ち去ったのでしょう。指紋は前科者などしか登録されてないので、歯型照合できないと身元の特定をしにくいのです。ホテルの備品では頭部切断は無理なので、あらかじめ切断する道具を持ち込んだと思われます。身元特定できないようにすることが被害者と話がついていた嘱託殺人や自殺ほう助か、強い殺意をもっての計画的な犯行かもしれません。後者の場合、被害者の身元が特定されると人脈から簡単に犯人にたどりつくような人物でしょう」(同)
2017年には神奈川・座間でネットを通じた自殺願望の若者9人がアパートで殺害される事件が発生し、衝撃が走った。その後も全国各地で同様の嘱託殺人事件が起きている。