中古車販売の大手ビッグモーターによる保険金不正請求の横行で、25日に創業者の兼重宏行社長らが会見、辞任を表明。顧客から預かった車を傷つけて修理代を水増し、損保会社に保険金を不正請求していたというのは、サービスの信頼が根底から崩壊する大問題だが、そもそも、この企業がかなりのブラック企業だという証言も続々と浮上している。
首都圏のある店舗に約2年ほど営業職で勤めた男性Aさんによると、給与体系や仕事内容は入社前後で全く異なっていたという。
それに耐えかね、退職を決意したが、「4ヵ月前に言わないと辞めることはできない」と上司から言われ、さらにはハラスメントを受けることになる。
【前編】『「営業成績を譲るのは礼儀」…ビッグモーター元社員が語る「最悪の労働環境」の実態』で見たように、結局Aさんは5ヵ月間働かされ、思いもしない展開に発展していく。
「店長が、辞めると言っている僕に異動の辞令を出してきたんです。行き先は新潟と栃木、どっちか選べと。そんなの行くわけないので、どっちにも行きませんよ、と言ったら、『会社に問題がない自主退職ということね』と言われました」
店長が唐突に不可解な辞令を出した理由は、退職届を手に取って分かった。
「退職理由の欄に、一身上の都合と定年、結婚の3つしか選択できなくなっていて、これだとほとんどの人は一身上の都合にせざるをえない。辞める人はみんな社員の勝手な都合で辞めるだけ、ということにしたいんでしょう。あと、会社の中傷をしないとか、いろいろ書かれた念書というのにも署名させられました」
Aさんによると、同僚の中には、持っていた自分の車を会社に売り、さらに会社から中古車を買い、これをすべて先輩の成績にする、ということをやらされた者がいたという。
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保険金不正請求の問題は昨年あたりから広く伝えられていた話だが、Aさんによると「車を故意に傷つけて修理代を高くしている」という不正についてはハッキリ関与したり見たことはなかったが、同期に近い整備士Bさんから耳にしていたという。
このBさんに話を聞かせてもらうと、「実は、前に勤めていた別の会社でも似たようなことをさせられていたんですが、ビッグモーターはやってる回数や規模が大きくて、もっと悪質で驚きました。だから友達や親戚には、ウチの会社に修理を頼まないように伝えた」という。
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現役社員による貴重な話ゆえ、Bさんにはもっとじっくり話を聞く予定だったのだが、7月からの騒動拡大で上司が「マスコミに話をしたことが分かったら損害賠償を請求する」と言い出したという。Bさんは「スマホの着信歴さえチェックするような上司が怖いのでしばらくは連絡しないようお願いします」と怯えるように取材を断られてしまった。
どこからどう見てもブラック企業と言う感じだが、ビッグモーターは店長クラスでも問題が過去に報じられており、16年にはノルマを下回った店長が、成績の良い店長に金を払うルールがあったことを産経新聞などに報じられた。ただ、このときも同社は「社内に規定はなく、会社と関係なく店長間で慣習的に行なわれていた」と説明。今回の「部下が勝手にやったこと」というような無責任な創業者のスタンスと同じである。
経営計画書には、「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の殺生与奪権を与える」とまでハッキリ書かれ、上司が「生かすも殺すも好きにできる権利」まで存在していた人権無視のビッグモーター。
さすがに批判を受けて撤回があったようだが、今年だけでも複数の店舗での不正車検で運輸局から処分があり、街路樹への除草剤散布や下請け業者への車検強要なども報じられるなど、これでもかと問題が噴出。
まさにAさんが言った「罪悪感がまったく感じられない」という人々による会社ようだ。前社長は会見で一貫して「知らぬ存ぜぬ」で通していたのもまた、いかにもブラックの親玉っぽい。これだけモラルなき企業がCM放送するほど成長していたというのは、近年の「日本の衰退」を象徴するかのようでもある。
さらに【もっと読む】『ビッグモーター、問題が起きたのに「退職者が6人」なのはなぜ…社員が語る「社内で起きている大騒動」』では、追加情報を追っていく。