各地で厳しい暑さが続き、夜でも25度を下回らない「熱帯夜」になる日も増えている。熱中症にならなくても、暑くてなかなか寝付けない、眠りが浅いという人も少なくないだろう。東京大などの研究チームの分析によると、日本の都市部ではこの暑さによる睡眠障害の被害は、熱中症に匹敵する可能性があるのだという。
【重症度別】しびれ、頭痛…こんな症状には要注意 熱中症の場合、救急搬送者数や死者数などから、比較的社会全体での影響を把握しやすいが、睡眠障害の影響は認識しにくい。チームは睡眠障害と熱中症の影響を比較するために、死亡や病気などによる損失を年数に換算して比較できる指標「障害調整生存年」を活用した。この指標は、重症度が0・3の病気や障害が10年間続くと「3年の損失」などと算出する。睡眠障害の重症度は0・1で、合併症のない糖尿病などと同等という。

分析にあたり、世界的に採用されている1カ月間の睡眠の質を評価するための質問票を1日ずつ評価できるものに改良。2011年8月と12年7~8月、名古屋市在住の20~70歳の男女計1284人に毎日の睡眠の質などについて回答してもらった。 日最低気温が25度以上の日を「熱帯夜」とみなし、回答や毎日の気温などから、人口に占める「熱帯夜のせいで睡眠障害になっている人の割合」を推定。損失について分析した。 その結果、名古屋市内の場合、10~14年の睡眠障害による損失はどの年も熱中症に匹敵することが分かった。全国的に記録的な猛暑となった10年は、熱中症が「約80年の損失」だったのに対し、睡眠障害が「約280年の損失」と大きく上回ったという。研究成果は日本睡眠学会誌で発表した。 気象庁によると、8月中旬にかけて気温は全国的に高くなる見込みで、熱帯夜になる地点や日数も少なくなさそうだ。 チームの井原智彦・東京大准教授(環境社会システム学)は「睡眠障害は生活の質を下げるだけでなく、仕事や学習の効率が落ちるといった影響が考えられる。室温が26~27度を超えると寝付きが悪くなったり睡眠の質が低下したりするとされており、夜間のエアコンの適切な使用を呼びかける必要がある」と話す。【渡辺諒】
熱中症の場合、救急搬送者数や死者数などから、比較的社会全体での影響を把握しやすいが、睡眠障害の影響は認識しにくい。チームは睡眠障害と熱中症の影響を比較するために、死亡や病気などによる損失を年数に換算して比較できる指標「障害調整生存年」を活用した。この指標は、重症度が0・3の病気や障害が10年間続くと「3年の損失」などと算出する。睡眠障害の重症度は0・1で、合併症のない糖尿病などと同等という。
分析にあたり、世界的に採用されている1カ月間の睡眠の質を評価するための質問票を1日ずつ評価できるものに改良。2011年8月と12年7~8月、名古屋市在住の20~70歳の男女計1284人に毎日の睡眠の質などについて回答してもらった。
日最低気温が25度以上の日を「熱帯夜」とみなし、回答や毎日の気温などから、人口に占める「熱帯夜のせいで睡眠障害になっている人の割合」を推定。損失について分析した。
その結果、名古屋市内の場合、10~14年の睡眠障害による損失はどの年も熱中症に匹敵することが分かった。全国的に記録的な猛暑となった10年は、熱中症が「約80年の損失」だったのに対し、睡眠障害が「約280年の損失」と大きく上回ったという。研究成果は日本睡眠学会誌で発表した。
気象庁によると、8月中旬にかけて気温は全国的に高くなる見込みで、熱帯夜になる地点や日数も少なくなさそうだ。
チームの井原智彦・東京大准教授(環境社会システム学)は「睡眠障害は生活の質を下げるだけでなく、仕事や学習の効率が落ちるといった影響が考えられる。室温が26~27度を超えると寝付きが悪くなったり睡眠の質が低下したりするとされており、夜間のエアコンの適切な使用を呼びかける必要がある」と話す。【渡辺諒】