元幹部自衛官で、現役のセクシー女優。現在は性産業に携わりながら、政治家女子48党のメンバーとして活動――。異色の経歴を武器に2022年12月、政治家女子48党のメンバーとなった吉川蓮民さん(はすみん・26歳・@harehare729)。 政界とは無縁の状態から、「AV新法をぶっ壊す!」などをマニフェストに掲げ、2023年4月の統一地方選挙に世田谷区から出馬した。落選したものの、現在も日本初の“セクシー女優と政治家の二足の草鞋”を目指して奮闘中だ。
昨今、話題に挙がっている吉川蓮民とは一体何者なのか。なぜ性産業に携わりながら政治家を目指しているのか。26歳の彼女の素性に迫った。
◆両親は医療従事者。名古屋生まれ
吉川さんは1997年、名古屋で生まれた。両親は医療従事者で、幼少期から漠然と同じ道に進みたいと感じていた。しかし幼少期から両親が不仲で、母が父に殴られたり、母が包丁を持ち出して父と言い争う場面を見るなど、家庭内の雰囲気を窮屈に感じていたという。
中学生まで実家で過ごすも、家族内の雰囲気に耐えられず、高校入学時に父方の母の家に移り住む。しかし父方の母とも馬が合わず、高校卒業を機に地元を出ようと決心する。
◆学費を稼ぐために防衛医科大学に進学
「父方の母は、母親をはじめ親族の悪口を言う人で、このまま地元にいたら気が滅入ってしまうと思いました。そこで大学は、地元から離れた場所に行こうと考えたのですが、両親からは『独り立ちするなら自分で学費を稼ぐように』と言われたんです。
そこで、全寮制かつ給料も毎月10万円ほどもらえる防衛医科大学校の看護学科に進学しようと考えました。当時、倍率は20倍以上ありましたが、高校が進学校だったこともあり合格できました」
希望通り親元を離れ、2016から2019年まで大学に通い、卒業後は自衛隊福岡病院に配属される。そこで自衛隊看護師として勤務を続けるが、次第に心身ともに疲弊していくようになる。
◆パワハラで適応障害一歩手前に
「看護師の業務って、オムツ交換、入浴やトイレ介助、食事の配膳など多岐にわたるんですよ。もともと私も、マルチタスクが苦手で、集中力も全然続かない。それでも1年目は先輩が手厚く教育してくれたので、なんとかついていこうと仕事に励んでいました。
ただ部署が移って、パワハラ気質な女上司に当たるんです。『こんなこともできないの?』『看護師やめたほうが良いよ』などと言われました。まあよくあるいびりですよね。そこに追い討ちをかけるかのようにコロナ禍がきて、忙しさがケタ違いになりました。
もう神経もすり減るし、パワハラでストレスも溜まるし、抑うつ状態になって適応障害ギリギリのところまで追い詰められました。それで22年3月末にようやく退職するんですけど、コロナになってからはずっと職場から逃げたいと思ってました」
◆自衛隊でありながら風俗店に在籍
紆余曲折あり、自衛隊福岡病院を退職した吉川さんだが、ここで金銭的な問題を抱えることになる。
「防衛医科大学校では、卒業後6年以内に自衛隊を退職した場合、国に返済義務が発生するんです。償還金と言われるものです。大学時代に税金から学費や生活費を出してもらったから、働いて国に返すのが筋という理屈なんでしょう。
私は3年で退職してしまったので、約400万円の償還金が課せられたんです。抗うつや適応障害手前だからといって、業務には関係ないと減額は認められなかったですね。しかも原則、退職した翌月に一括返済する決まりで、延滞した場合は年利が14.5%かかる」
◆あまったお金で鼻を整形、資格取得

まあ、ぶっちゃけ400万円はある程度働いたら貯まって、あとは鼻を整形したり、ピラティスの資格を取ったり、ダンスのレッスンにお金を使って発散していました。もう当時は、病院勤務のストレスでメンタルをやられていたので、自己投資や息抜きなどの現実逃避がないとやってられなかったんです」
無事、違約金を払い終えて無職となった吉川氏。もともと憧れがあった東京に移り住み、生活費を稼ぐため吉原の風俗店で働くようになる。この時はセクシー女優活動も、政治活動もまったく考えてなく、ピラティスのジムを経営しようと開業資金を貯める日々を送っていた。
◆渋谷でセクシー女優のスカウトを受ける
それから約半年後、吉川氏の人生は目まぐるしく変わっていく。きっかけは2022年11月、渋谷でセクシー女優のスカウトを受けたことから始まる。
「たまたま渋谷の路上で声をかけられて。その時はお金が稼げるならいいかなと思い、軽い気持ちでオファーを承諾しました」
さらに直後、YouTubeで、インフルエンサーのDJ社長らがプロデュースしているアイドルのメンバー募集の広告を見つける。それが「アイドルをしながら地方議員もできる」をコンセプトに掲げた「政治家女子48」だった。
「これまで整形やダンスなど自己投資をしていたぐらいですし、アイドルや女優など芸能活動で、表舞台に立ってみたいという漠然とした憧れがありました。応募条件も25歳以上とクリアしていたのでちょうど良いと思い、応募しました」
◆党首と幹事長からの一言に背中を押される
「応募概要には『地方統一選挙に出よう!』と書かれていたので、なんとなく政治活動に関わるんだろうとは察していました。ただ、応募当時はアイドルとして挑戦したいという気持ちが強かったですし、セクシー女優・風俗嬢・アイドル・政治家としてマルチに活動したら、話題になってファンも増えるだろうと思いました」
結果、吉川さんはオーディションに合格。当時の心境をこう語る。
「応募書類には、元自衛官であることは書きましたが、セクシー女優であることは隠しました。それで合格した後、立花孝志さんに『セクシー女優なんですけど、政治活動して大丈夫ですか?』とカミングアウトしたんです。
そしたら立花さんは『確定申告してるなら、風俗で働いていると公表したほうが強みになるよ』って言ってくださって。そこでふっ切れたというか、政治家を目指すなら隠し事はいけないなと痛感しました。かつて自衛隊看護師に、風俗も兼業していたとカミングアウトしたのも、幹事長の黒川敦彦さんの一言に背中を押されたからです」
<取材・文/佐藤隼秀>
【吉川蓮民】1997年、愛知県名古屋生まれ。防衛医科大学校卒。元幹部自衛官、現役セクシー女優。2023年4月に政治家女子48党公認で東京都世田谷区議選に立候補して落選(1,263票)。Twitter:@harehare729