つくづく往生際の悪い男である。籠城を決め込んでいたドバイから帰国を余儀なくされ、今月4日に常習的脅迫などの容疑で逮捕された「ガーシー」こと東谷義和(51)。警視庁が逮捕状を取ったのちパスポートは失効、国際刑事警察機構にも国際手配され万事休すとなりながらも、最後まで悪あがきをみせていたという。
***
【写真を見る】機内でスマホを触るガーシー LINEの内容は? 成田空港から警視庁へ移送される際には、不敵な笑みを浮かべていた東谷。警視庁担当記者が言う。

「東谷は現在、東京湾岸署に勾留されています。弁護人は16日、ユーチューブ上で『取り調べには真摯に対応している』『勾留が延長して佳境に入ってきている』などと説明していましたが、本人は動画を配信した事実については認めながらも、犯意は一貫して否定。供述調書に署名をしない状態が続いています」着の身着のままで送還 そもそも再三にわたる事情聴取の要請を拒んだことで、心証はこの上なく悪いわけだが、「ミスター東谷は、新しい国籍を大至急、手に入れたいとのことでした」 そう明かすのは、ドバイに事務所を構える国籍ブローカーである。「ドバイの弁護士の紹介で、彼のアシスタントとみられる女性からコンタクトがあったのは4月初めでした。私はトルコやマルタ、バヌアツやドミニカ共和国、そしてカリブ海の小国であるセントクリストファー・ネービスなどの『投資家市民権プログラム』を用いた国籍取得を請け負っています。取得に要する時間は国によって異なりますが、優先審査でも最低2カ月は必要。ところが彼は『1カ月で手配してほしい』と言うのです」(同)南米には難色を 続けて、こう振り返る。カリブ海の小国を目指した「マルタの国籍取得には100万ユーロの投資が必要で、最低1年かかる。またトルコも50万ドルの投資が条件で半年は待たされます。バヌアツは13万ドルと格安ですが、欧州渡航にはビザが必要。彼は新たな市民権を取得してパスポートも手に入れ、国籍を切り替えてドバイに住み続けたかったのでしょう。カリブ海の国々について詳しく尋ねてきました」 そこでこのブローカーは、セントクリストファー・ネービスを提案したという。初期費用4万ドルとは別に20万ドルの投資が必要だが、同国のパスポートはビザなしで150カ国以上へ渡航が可能。取得に必要な顔写真や指紋などの情報を東谷から受け取り、ブローカーは手続きを進めたのだが、「その過程で、彼が国会議員を除名され、捜査対象になっていると知りました。これではセントクリストファー・ネービスの国籍取得は難しいため、私は『ボリビアかベネズエラなら居住権を取得できる』と代案を提示したのですが、彼は気が進まなかったようで、しばらく連絡が途絶えてしまいました」「4月末に決心していれば…」 ちょうどその頃、警視庁の捜査員がUAE入りし、当局者に身柄移送を要請していた。そうした動きを察知し、背に腹は代えられないと悟ったのか、「結局5月30日になって先方から『南米でいい』『費用は翌週には支払う』と連絡がありました。ボリビアやベネズエラだと優先審査を含む手続に2万ドル、そして不動産投資に2万ドルの総額4万ドルで済みます。また居住権の期限は数年ですが、更新の際には永住権に変更できるのです」(同) が、その5日後には“強制送還”と相成った。「最初に南米を提案した4月末に決心していれば、彼は捜査の手から逃れていたかもしれませんね」(同) 天網恢恢疎にして漏らさず。「週刊新潮」2023年6月29日号 掲載
成田空港から警視庁へ移送される際には、不敵な笑みを浮かべていた東谷。警視庁担当記者が言う。
「東谷は現在、東京湾岸署に勾留されています。弁護人は16日、ユーチューブ上で『取り調べには真摯に対応している』『勾留が延長して佳境に入ってきている』などと説明していましたが、本人は動画を配信した事実については認めながらも、犯意は一貫して否定。供述調書に署名をしない状態が続いています」
そもそも再三にわたる事情聴取の要請を拒んだことで、心証はこの上なく悪いわけだが、
「ミスター東谷は、新しい国籍を大至急、手に入れたいとのことでした」
そう明かすのは、ドバイに事務所を構える国籍ブローカーである。
「ドバイの弁護士の紹介で、彼のアシスタントとみられる女性からコンタクトがあったのは4月初めでした。私はトルコやマルタ、バヌアツやドミニカ共和国、そしてカリブ海の小国であるセントクリストファー・ネービスなどの『投資家市民権プログラム』を用いた国籍取得を請け負っています。取得に要する時間は国によって異なりますが、優先審査でも最低2カ月は必要。ところが彼は『1カ月で手配してほしい』と言うのです」(同)
続けて、こう振り返る。
「マルタの国籍取得には100万ユーロの投資が必要で、最低1年かかる。またトルコも50万ドルの投資が条件で半年は待たされます。バヌアツは13万ドルと格安ですが、欧州渡航にはビザが必要。彼は新たな市民権を取得してパスポートも手に入れ、国籍を切り替えてドバイに住み続けたかったのでしょう。カリブ海の国々について詳しく尋ねてきました」
そこでこのブローカーは、セントクリストファー・ネービスを提案したという。初期費用4万ドルとは別に20万ドルの投資が必要だが、同国のパスポートはビザなしで150カ国以上へ渡航が可能。取得に必要な顔写真や指紋などの情報を東谷から受け取り、ブローカーは手続きを進めたのだが、
「その過程で、彼が国会議員を除名され、捜査対象になっていると知りました。これではセントクリストファー・ネービスの国籍取得は難しいため、私は『ボリビアかベネズエラなら居住権を取得できる』と代案を提示したのですが、彼は気が進まなかったようで、しばらく連絡が途絶えてしまいました」
ちょうどその頃、警視庁の捜査員がUAE入りし、当局者に身柄移送を要請していた。そうした動きを察知し、背に腹は代えられないと悟ったのか、
「結局5月30日になって先方から『南米でいい』『費用は翌週には支払う』と連絡がありました。ボリビアやベネズエラだと優先審査を含む手続に2万ドル、そして不動産投資に2万ドルの総額4万ドルで済みます。また居住権の期限は数年ですが、更新の際には永住権に変更できるのです」(同)
が、その5日後には“強制送還”と相成った。
「最初に南米を提案した4月末に決心していれば、彼は捜査の手から逃れていたかもしれませんね」(同)
天網恢恢疎にして漏らさず。
「週刊新潮」2023年6月29日号 掲載