今年のGWは帰省をする人も多いようです。ただ、SNSでは「義実家に行きたくない」という、「嫁」の立場にある女性たちの声もちらほら見かけます。
その理由の一つが、義母との関係です。あまり良好な関係ではないどころか、中には「嫁いびり」をしてくる義母もいるようで、妻たちを一層、憂うつにさせています。
たとえば、「え、ここまでやるの?」と驚くのが、「私に甲殻類のアレルギーがあることを知っているのに、義母がわざとカニ料理を出す」「事前に卵アレルギーがあることを伝えてあったのに、義母は卵づくしの料理をつくる」といったエピソードです。
アレルギーのある食品を食べた場合、通院や入院が必要なほど重症化したり、ひどいケースだと死亡してしまうこともあります。
命にもかかわる義母の「嫁いびり」、法的な責任を問うことはできるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
――義母のこうした行動は罪に問えますか?
食品アレルギーがある人に対して、そう知りながらアレルギー食材を食べるよう提供することは、殺人未遂罪に該当する場合がありえます。
食品アレルギーは、対象となる食品を食べると、アナフィラキシーショックを起こして最悪死に至る可能性があるものです。
そうと知りながら、食品アレルギーのある食品を提供することには、「この人が死んでも構わない」という、いわゆる「未必の故意」があると評価できます。
そして、その食品を食べざるを得ないような状況に追い込んでいるといえるのであれば、死の結果は発生していなくても、その現実的危険性が生じていると考えられるので、この場合には殺人未遂罪にあたりうると考えられます。
――では、殺人未遂罪に問えるのでしょうか?
ただ、そこまで追い詰められた状況ではなく、義母が単に「食べられないものを出して困っている様子を見て楽しんでいる」というだけで、かつ食べない自由が確保されているのであれば、殺人未遂罪にはならないでしょう。
一方で、殺人未遂罪にはならなかったとしても、このような行為は、故意によって、アレルギー食品を回避する自由を侵害して、精神的苦痛を与えるものであるので、慰謝料請求の対象となりえます。
たった1回やっただけであれば、高額の慰謝料を支払う必要はありませんが、回数を繰り返せば繰り返すほど、慰謝料の金額は高額になるでしょう。
義母としてみれば、単なる嫌がらせ・いじわるのつもりでも、刑事や民事の責任が生じる場合もありえます。何事もほどほどにすることが大切です。
【取材協力弁護士】寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所事務所URL:http://nts-law.jp