意見書を受け取る鈴木俊一財務相(中央右、写真・時事通信)
5月29日、財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会」が、政府が6月にまとめる「骨太の方針」についての意見書を、鈴木俊一財務大臣に手渡した。
「意見書では、少子化対策、子育て支援、高齢者医療、男女共同参画などについての政策や財源について提言していますが、そこに参考資料として示されていたデータが衝撃的で、関係者の間で話題になっています」(経済担当記者)
意見書では「医療」についての課題として、《コロナからの正常化を進める中で、改めて今後の医療の在り方を議論すべき時》とし、その一例として、新型コロナワクチンの《集団接種単価及びコールセンター単価にバラツキが生じ》たことをあげている。
「参考資料の『集団接種単価とコールセンター単価』を見て唖然としました。接種を担った医師の時給が書いてあるのですが、最小は3404円、平均で1万8884円。ところが、最大で17万9800円との記述があるのです。意見書も《一部、著しく高額になっている自治体もある》と指摘しています」(同)
《新型コロナにおいて十分な数の病床が提供されたとは言いがたい》という反省とともに、多くの患者たちが路頭に迷った病床問題については、2020年から2021年にかけて《合計90万床程度のうち、確保したコロナ病床は全体の5%程度》と報告している。
「さらに、《我が国ではコロナ発生以来3年間にわたり、コロナ病床確保のインセンティブとして、総額約5兆円の病床確保料が各病院に交付されている》として、平時の入院診療収益が病床1床あたり1日3万5974円なのに、重点医療機関のICUでは43万6000円と12倍もの病床確保料を交付していたことも明かされています」(同)
そのため、国公立病院を含む病院の利益率は0.6%の赤字(2019年)から7.5%の黒字(2021年)にV字回復。《この3年間、病床確保料、ワクチン接種支援に加えて、感染防止対策、ワクチン接種・検査の費用など医療提供体制のために主なものだけで 21兆円程度の国費による支援が行われている》だけのことはある。
非常時だったとはいえ、病院を大きく儲けさせた国と自治体のコロナ対策について、医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏がこう語る。
「医療を “産業” や “ビジネス” として捉えてきた日本の医療制度に問題があるでしょう。アメリカを例外として、世界の先進国は医療を “国民の安全保障” とみなし、ビジネスに開放していません。
日本人は比較的健康なのに、人口あたりの病床数は世界一で、欧米の5倍もあるんです。本来なら病床が埋まるはずがないのに、埋めないと経営が成り立たないから埋めているのです」
これは、コロナ前から厳然として存在していた日本医療の「不都合な真実」だという。
「世界一の病床を持っていたにもかかわらず、その5%しかコロナ病床に使えなかったのは、ふんだんな病床を昔から無駄な治療で埋めているからです。
そして、それを知っていても国は手を出せません。なぜなら、医療を “自由なビジネス” として病院にまかせているため、お金を交付する方法でしか、病院の方針を誘導できないのです」
日本が新たなパンデミックに襲われたとしても、根本が変わらないかぎり、同じ失敗を繰り返しそうだ。