食中毒は夏に多く発生する印象ですが、春と秋にも多く発生しています。専門家に、食中毒の予防策について聞きました。 ■中学校で教師が作ったヨーグルトを食べた生徒ら5人が腹痛や嘔吐 3月1日、名古屋市名東区の中学校で、生徒など5人が食中毒のような症状を訴え、救急搬送される生徒もいました。 5人が食べたのは、教師が作ったヨーグルトでした。非常勤の男性教師は、理科の授業で乳酸菌をテーマに、牛乳に種菌となる市販のヨーグルトを使い、自宅に持ち帰って湯たんぽと共にクーラーボックスに入れて発酵させていたといいます。

名古屋文理大学短期大学部の佐藤名誉教授:「食中毒の予防は『(菌を)つけない・増やさない・殺す』という三原則があります。いわゆる殺菌・消毒が十分じゃなかったと考えられます」 名古屋市教育委員会の担当者:「口に入れる物については、慎重に扱う必要があると思います。きちんと調べて指導したり、厳正に対処していきたいと思っております」 名古屋市教育委員会によると、原因は増殖が早い黄色ブドウ球菌による食中毒で、症状を訴えた5人は全員回復したということです。 ■食中毒を防ぐポイント 菌を「つけない・増やさない・やっつける」 食中毒の発生件数は月別では、3月は10月に継ぐワースト2位です(2017~2021年の5カ年平均)。平均で毎年93件・約1300人の患者が出ています。 名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授によると、春と秋に食中毒が多いのは“油断”が原因だといいます。 夏は気を付けているけれど、春は「気温がまだ低いから大丈夫かな」、秋は「気温が下がってきたから大丈夫かな」といったような油断が危険だということです。 食中毒の予防について、今回食中毒が発生したヨーグルトづくりを元に、佐藤名誉教授に教えてもらいました。 食中毒を防ぐポイントは、菌を「つけない」、もしついても「増やさない」、そして菌を「やっつける」ことですが、今回食中毒が発生した手作りヨーグルトの場合は少し違います。佐藤名誉教授:「牛乳にヨーグルトになるための乳酸菌を加えることによって、乳酸菌が牛乳の中の糖を食べます。食べると乳酸を作り出します」 乳酸菌を活発にさせ発酵を行いますが、その環境は食中毒の原因菌にとっても居心地の良い環境になり、増殖します。このため、悪影響を与える菌を徹底的に取り除かなければなりません。佐藤名誉教授:「まず手をキレイに洗っていただいて、そこから始まるということになります」 少しでも菌が残れば増殖するため、手洗いは手首や親指の付け根なども入念に、30秒を目安に行います。 次に、食品に使えるアルコール濃度80%程度の消毒液で、手を殺菌・消毒します。その上で、さらにビニール手袋をしました。 佐藤名誉教授:「黄色ブドウ球菌という食中毒菌には、これは絶対必要です。手や皮膚についている、割と身近なところにいっぱいいる菌ですから」 これだけ対策しても菌が落ちきらないことがあるため、徹底した対策にはビニール手袋は必須です。 また佐藤名誉教授は、「口の中にも黄色ブドウ球菌がいる可能性がある」ため、マスクをすることも非常に大切だと話しています。 マスクをしたら、容器と器具を、5分を目安に煮沸消毒します。耐熱ガラスがおすすめです。 その間に調理台も消毒しましょう。佐藤名誉教授:「 (菌を)つけない対策としては、ここまで万全であろうと思います」 ここまでして、ようやくヨーグルト作りです。カップに牛乳を500cc注ぎます。開封済みの牛乳パックを使う場合は、600ワットのレンジで2分加熱すると安心です。 ヨーグルトを大さじ2杯入れて軽く混ぜ、容器に移して24時間室内に置けば完成。牛乳から、とろみを持ったヨーグルトができました。 しかし、黄色ブドウ球菌など食中毒の原因菌が増殖してしまっても、ニオイや味に大きな変化がなく、誤って食べてしまうことが多いといいます。佐藤名誉教授:「どの食中毒にも共通するんですが、『迅速』『作ったら早く食べなさい』、これが一番です。『(菌が)ついたけれど増えていない』ということであれば、食中毒は起こらない」 ■カレーの作り置きやお弁当は?…今日からできる食中毒対策 ヨーグルトづくりだけでなく、日常の様々なシーンで食中毒の危険があります。今日からできる対策を、佐藤名誉教授に教えてもらいました。 まずは「飲みかけのペットボトル」です。口の中の菌が飲み物に入り、時間を置くと増殖してしまいます。特に注意が必要なのが、コーラなど糖分が多いものや、カフェオレなどの乳製品で、菌のエサになってより増殖しやすいといいます。ペットボトル飲料は「すべて飲みきる」「口を直接つけずに、コップなどに移して飲む」と安心です。 次は「カレーの作り置き」です。寝かせると美味しくなるともいわれますが、常温で放置すると、後で加熱してもやっつけられない、熱に強い菌・ウエルシュ菌が増殖します。対策のポイントは「常温で置かないこと」です。容器に移し、冷蔵庫に入れ急速に冷やして、食べるときに再加熱しましょう。 最後は、食べるまでに時間を置く「弁当」です。例として、おにぎり・唐揚げ・酢の物・サラダ・ミニトマトが入った弁当について考えます。この中で菌が増殖しやすいものは、おにぎり・サラダ・ミニトマトです。 おにぎりは、手に黄色ブドウ球菌などの菌がついている恐れがあるので、手袋やラップを使って握るなどして、手が触れないようにしましょう。 サラダは、水分が多いため菌が増殖しやすいです。また、ドレッシングなどがかかっていると、その塩分で水分がさらに出てしまいます。水切りをしっかりした上で、ドレッシングは別にすると良いということです。 ミニトマトは、ヘタに細かい凹凸があり菌がつきやすいので、ヘタは外して入れましょう。 最後に佐藤名誉教授は「食中毒対策は手洗いに始まり、手洗いに終わる」と話していました。2023年3月10日放送
食中毒は夏に多く発生する印象ですが、春と秋にも多く発生しています。専門家に、食中毒の予防策について聞きました。
3月1日、名古屋市名東区の中学校で、生徒など5人が食中毒のような症状を訴え、救急搬送される生徒もいました。
5人が食べたのは、教師が作ったヨーグルトでした。非常勤の男性教師は、理科の授業で乳酸菌をテーマに、牛乳に種菌となる市販のヨーグルトを使い、自宅に持ち帰って湯たんぽと共にクーラーボックスに入れて発酵させていたといいます。
名古屋文理大学短期大学部の佐藤名誉教授:「食中毒の予防は『(菌を)つけない・増やさない・殺す』という三原則があります。いわゆる殺菌・消毒が十分じゃなかったと考えられます」
名古屋市教育委員会の担当者:「口に入れる物については、慎重に扱う必要があると思います。きちんと調べて指導したり、厳正に対処していきたいと思っております」
名古屋市教育委員会によると、原因は増殖が早い黄色ブドウ球菌による食中毒で、症状を訴えた5人は全員回復したということです。
食中毒の発生件数は月別では、3月は10月に継ぐワースト2位です(2017~2021年の5カ年平均)。平均で毎年93件・約1300人の患者が出ています。
名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授によると、春と秋に食中毒が多いのは“油断”が原因だといいます。
夏は気を付けているけれど、春は「気温がまだ低いから大丈夫かな」、秋は「気温が下がってきたから大丈夫かな」といったような油断が危険だということです。
食中毒の予防について、今回食中毒が発生したヨーグルトづくりを元に、佐藤名誉教授に教えてもらいました。
食中毒を防ぐポイントは、菌を「つけない」、もしついても「増やさない」、そして菌を「やっつける」ことですが、今回食中毒が発生した手作りヨーグルトの場合は少し違います。
佐藤名誉教授:「牛乳にヨーグルトになるための乳酸菌を加えることによって、乳酸菌が牛乳の中の糖を食べます。食べると乳酸を作り出します」
乳酸菌を活発にさせ発酵を行いますが、その環境は食中毒の原因菌にとっても居心地の良い環境になり、増殖します。このため、悪影響を与える菌を徹底的に取り除かなければなりません。
佐藤名誉教授:「まず手をキレイに洗っていただいて、そこから始まるということになります」
少しでも菌が残れば増殖するため、手洗いは手首や親指の付け根なども入念に、30秒を目安に行います。
次に、食品に使えるアルコール濃度80%程度の消毒液で、手を殺菌・消毒します。その上で、さらにビニール手袋をしました。
佐藤名誉教授:「黄色ブドウ球菌という食中毒菌には、これは絶対必要です。手や皮膚についている、割と身近なところにいっぱいいる菌ですから」
これだけ対策しても菌が落ちきらないことがあるため、徹底した対策にはビニール手袋は必須です。
また佐藤名誉教授は、「口の中にも黄色ブドウ球菌がいる可能性がある」ため、マスクをすることも非常に大切だと話しています。
マスクをしたら、容器と器具を、5分を目安に煮沸消毒します。耐熱ガラスがおすすめです。
その間に調理台も消毒しましょう。
佐藤名誉教授:「 (菌を)つけない対策としては、ここまで万全であろうと思います」
ここまでして、ようやくヨーグルト作りです。カップに牛乳を500cc注ぎます。開封済みの牛乳パックを使う場合は、600ワットのレンジで2分加熱すると安心です。
ヨーグルトを大さじ2杯入れて軽く混ぜ、容器に移して24時間室内に置けば完成。牛乳から、とろみを持ったヨーグルトができました。
しかし、黄色ブドウ球菌など食中毒の原因菌が増殖してしまっても、ニオイや味に大きな変化がなく、誤って食べてしまうことが多いといいます。
佐藤名誉教授:「どの食中毒にも共通するんですが、『迅速』『作ったら早く食べなさい』、これが一番です。『(菌が)ついたけれど増えていない』ということであれば、食中毒は起こらない」
ヨーグルトづくりだけでなく、日常の様々なシーンで食中毒の危険があります。今日からできる対策を、佐藤名誉教授に教えてもらいました。
まずは「飲みかけのペットボトル」です。口の中の菌が飲み物に入り、時間を置くと増殖してしまいます。特に注意が必要なのが、コーラなど糖分が多いものや、カフェオレなどの乳製品で、菌のエサになってより増殖しやすいといいます。ペットボトル飲料は「すべて飲みきる」「口を直接つけずに、コップなどに移して飲む」と安心です。
次は「カレーの作り置き」です。寝かせると美味しくなるともいわれますが、常温で放置すると、後で加熱してもやっつけられない、熱に強い菌・ウエルシュ菌が増殖します。対策のポイントは「常温で置かないこと」です。容器に移し、冷蔵庫に入れ急速に冷やして、食べるときに再加熱しましょう。
最後は、食べるまでに時間を置く「弁当」です。例として、おにぎり・唐揚げ・酢の物・サラダ・ミニトマトが入った弁当について考えます。この中で菌が増殖しやすいものは、おにぎり・サラダ・ミニトマトです。
おにぎりは、手に黄色ブドウ球菌などの菌がついている恐れがあるので、手袋やラップを使って握るなどして、手が触れないようにしましょう。
サラダは、水分が多いため菌が増殖しやすいです。また、ドレッシングなどがかかっていると、その塩分で水分がさらに出てしまいます。水切りをしっかりした上で、ドレッシングは別にすると良いということです。
ミニトマトは、ヘタに細かい凹凸があり菌がつきやすいので、ヘタは外して入れましょう。
最後に佐藤名誉教授は「食中毒対策は手洗いに始まり、手洗いに終わる」と話していました。