今年に入ってからネット上で次々と炎上している迷惑動画。大きな社会問題となっているが、これらの数多く存在する迷惑客のごく一部に過ぎない。それに遭っているのは飲食店だけではない。 ビジネスホテルチェーンに勤める中野良晴さん(仮名・36歳)も宿泊客の迷惑行為にたびたび悩まされているひとり。以前、『ビジネスホテルの困った客たち。電気ケトルの“ヘン”な使い方を…』という記事でキムチ鍋を電気ケトルで作っていた宿泊客について証言してくれた人物だが、ほかにもさまざまな迷惑客がいたという。
◆騒音トラブルは日常茶飯事?
「よくあるのは騒音。ビジネスホテルは集合住宅に比べると部屋同士の壁が薄い構造になっているところが多く、『隣の部屋がうるさいんですけど……』などの苦情は日常的にあります。だから、こちらも感覚が麻痺して慣れっこな部分もありますが、そんな私どもですらドン引きするようなケースもあります」
特に印象に残っているのは、アダルト映像の音声をめぐるトラブル。とある深夜、内線で「隣の部屋がうるさい。どうにかしてくれ!」と苦情が入り、問題の部屋の前まで行くと、アダルト映像のものと思われる嬌声が廊下まで漏れ聞こえていたそうだ。
◆廊下まで漏れ聞こえる喘ぎ声…
「ペイチャンネルなのかネット動画なのかは不明ですが、間違いなくあれは喘ぎ声。うっすらですが廊下まで音が漏れるほどでボリュームが相当大きいことは理解できました。そこで音量を下げてもらうようにお願いするため、部屋をノックしたのですが返事はなし。2~3回繰り返しても反応がなかったので今度は先程より強めに叩きました。すると、音声が消えて何秒か間が空いてから『はい』って声がようやく聞こえました」
部屋のドアは空くことはなかったが、「申し訳ございませんが、深夜ですのでボリュームを下げていただけないでしょうか」と用件だけ伝えた中野さん。室内の男性からは「すみません」と返事があったのでフロントに戻ったが、それから10分もしないうちに再び同じ部屋からの騒音のクレーム。連絡をくれたのは先程の男性でボリュームが消えたと思ったら、すぐに大音量の嬌声が聞こえてきたという。
◆何度も注意しても“鑑賞”をやめない
「ほとんどの場合は一度伝えればやめてくださるため、こちらも困惑しました。しかも、ただ飲んで騒いでいるのではなく、ああいう映像の音声ですからね。ただし、今度はフロントから問題の部屋に内線をかけましたが、なかなか出てくれる気配がなくて。それでも中に居るのはわかっていますし、一度切ってすぐに改めて内線をかけると今度は出てくれましたが、声のトーンは低く明らかに不機嫌な様子でした」
ここでもドア越しだったが二度目なので最初のときよりも強めの口調で伝えることに。それでも「わかりました」と言ったので引き上げたが、今度は前回より短い5分後くらいに三度同じ男性から苦情の内線が入ったそうだ。
そこで中野さんは迷惑をかけたお詫びを伝えたうえで、違うフロアは部屋に移動してもらうことは可能かを提案。相手がこれを了承してくれたので新しいカードキーを持って伺い、改めて今回のことを謝罪したそうだ。
◆通報するべきか迷ったが…
「一応、せめてもの誠意としてたまたまツインルームが空いていたため、シングルルームからランクアップさせていただきました。こちらの方は隣室の男性には憤りを見せていましたが、ホテル側に対しては怒っていなかったのがせめてもの救いでした。むしろ、『ああいう客の対応もしなきゃいけないから大変ですね』と同情されてしまいました(苦笑)」

だが、男性を別フロアまで案内した後、確認のために問題の部屋の前に戻ると騒音はなくなり、普段通りの静かな館内に戻っていたという。
◆犯人はごく普通のビジネスマンだった?
「面倒なことになったと思っていたので内心ホッとしました。しかし、なぜボリュームがあそこまで大きかったのかは謎のまま。テレビのイヤホン端子にちゃんと挿さっておらず、スピーカーから音がダダ洩れになっていたのかもしれませんし、意図的に大音量にしていた可能性もある。それに隣室の男性からの証言などからトータルの鑑賞時間は40~50分。普通、そこまで長時間鑑賞することってないと思うんですけどね」
この日、夜勤だった中野さんは早朝に業務を終えたが、チェックアウトを対応した別の従業員によると、問題の人物はスーツ姿の40代くらいのビジネスマン。とても迷惑行為をする人間には見えなかったそうだ。
「ホテルによっては標準的な大きさのボリュームでも隣室に音声が聞こえてしまうケースもあります。もしイヤホンを持っていなければボリュームを小さくする、またはミュートにするなど音漏れ対策をされたほうがいいと思います」
既婚者の場合、出張先のホテルでアダルト映像の鑑賞をする人は意外と多い。本人にとっては密かな愉しみのつもりでも隣の部屋にはバレていることもあるのでくれぐれも注意しよう。
<TEXT/トシタカマサ>