大浴場や露天風呂などがある温泉宿や公衆浴場によって衛生管理は、マナーではなく法律で定められた義務。今年2月、福岡県内の老舗温泉旅館で基準値の約3700倍ものレジオネラ菌が検出されていたことが大きく報じられたが、同旅館がお湯の交換をしていたのは年2回の休館日のみ。そのずさんな管理が明らかになって炎上したが、なかには迷惑客によって不衛生極まりない嫌がらせを受けることもあるようだ。◆「トイレにあるはずの物体」がなぜ…
大学時代にスーパー銭湯でアルバイトしていた北谷恒佑さん(仮名・32歳)は、営業中の大浴槽に沈んでいる排せつ物を実際に目撃。その衝撃的すぎる体験を昨日のことのように覚えているという。
「更衣室でバスマットを交換していると、大浴場から上がってきた20代くらいの若い男性が『すみません、浴槽に何か沈んでるんですけど……』と困惑した表情で話しかけてきたんです。この時点では状況を理解していませんでしたが、案内された浴槽を上からのぞき込むと、茶褐色の物体が隅っこのほうに沈んでいました。ただ、男性は『アレですよね……』と言っていたため、最初からブツの正体には気づいていたようです」
◆斜め上の展開に思わず…
ただし、北谷さんは想定すらしていなかった斜め上の展開にテンパってしまい、思わず口から出たのは「ありがとうございます」の一言。これには思わず男性も「エッ?」という表情でキョトンとしていたそうだ。
「『連絡してくださり、ありがとうございました』と言うつもりだったのですが、完全に言葉足らずでした(苦笑)。慌てて言い直したら理解してくれましたが、大変だったのはここからでした」
◆支配人からの指示で回収させられるハメに
フロントで接客中だった支配人に内線で状況を伝えると、すぐに現場にすっ飛んできて現場を確認。すると、問題の浴槽だけ閉鎖することをその場で決断。そのうえで「本当に申し訳ないけど、(排せつ物の)回収しておいてもらえるかな」との指示を受けるハメに。
「支配人は怒りを露わにすることもなく、冷静に対応していたのでこちらも安心しました。ただ、ブツの回収命令には内心カンベンしてくれとは思いましたけどね」
◆清掃・消毒を経て2時間半後に再開
この直後、お風呂の入口に「閉鎖中」の立て看板を設置。用具入れに先端に網が付いた長い棒があったため、浴槽に入らずに外からすくって回収します。ところが、網にブツがくっついてしまい、ゴム手袋越しながら直接ブツを触って取り出すことに。もちろん、彼が排せつ物に触れたのはこれが人生で初めてだ。
「従業員用トイレの大便器に捨てる際の数秒のことでしたが、思ったより固くて明らかに便秘気味っぽかったです。ニオイもそこまでひどいものではなく、微かに臭いって程度。精神的に『ウワッ、ばっちぃ!』とは思いましたが、そこまで嫌悪感はなかったです。むしろ、ユルいブツじゃなくてよかったなって。もし柔らかいのだったら、水に溶けちゃうじゃないですか。浴槽には何もないのにお湯から悪臭って想像したくもないですしね」
ちなみに浴槽はお湯を抜いた後は、通常の清掃に加えて特殊な薬剤を散布。そして、再びお湯を張り、約2時間半後には閉鎖を解除したとか。それらもすべて支配人の指示だったが、今はあの対応が本当に正しかったのかはわからないという。
◆犯人は結局見つからず…

だが、一番悪いのは浴槽内で排泄行為をした人物。でも、浴室内には防犯カメラが設置されておらず、フロントや休憩所などに設置された別のカメラでは犯人の特定には至らなかったそうだ。
「私は映像を見ていませんが、後日支配人に尋ねたらそう話していました。しかも、あの日問題の時刻まで子供のお客さんは1人もいなかったらしく、『やったのは間違いなく大人の仕業』だって。普通にお風呂に入ってるだけでは絶対に出ないし、確信犯だとしても単なる羞恥プレーじゃないですか。いったい何のつもりであんな真似をしたのか教えてほしいですよ」
◆年に数回起こる“銭湯あるある”だった
とはいえ、驚いたのは支配人が似たようなトラブルにこれまで何度も遭遇していたこと。先輩アルバイトの中にも北谷さんのように過去に処理や清掃を担当した者もいたため、「またあったんだ」とあまり驚いている風には様子はなかったそうだ。
「店長曰く“銭湯あるある”らしく、『頻発してるわけじゃないけど、ウチの店だけでも年に数回は起きてるよ』って。気になって当時ネットで調べたら従業員などの内部関係者やお客さんからと思われる特定の書き込みがいくつもあって、全然珍しいことじゃなかった。私はこのスーパー銭湯で2年半働いてましたけど、このとき以外にもう1回、未解決の汚物テロ事件に遭遇しましたから(笑)」
幼い子供が我慢できずに……というケースならいざ知らず、やらかしたのが大人なら言い訳はできない。悪ふざけなのか特殊な性癖の持ち主による犯行なのかは不明だが、こんなマネはくれぐれもやめてもらいたいものだ。
<TEXT/トシタカマサ>