名門女子大でも閉学に追い込まれるなど、志願者数減少に苦しむ大学が相次いでいる。こうした背景には“残念な共通点”があるという。専門家に話を聞いた。
【映像】名門校でも「閉学」 志願者が減少する大学の“残念な共通点” 2024年度以降の大学と大学院の学生募集停止を発表した恵泉女学園。1929年の創立以降、90年もの歴史を誇る学校だが、歯止めのかからない少子化などが影響し、閉学を前提とする経営判断に至ったという。 恵泉女学園大学の閉学について、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は次のように考えを述べる。

「確かに少子化によって学生数は減ってきていた。しかし、それ以上に大きいのが『人文学部』と『人間社会学部』2つの学部のみの小規模校であることと、最寄りの駅からバスで10分ほどかかる立地の影響が大きいのではないか」 そう話す石渡氏は「時代の変化によって女子大そのものの需要も減りつつある」と明かす。「2000年代に入って女子の進学率は上がっていった。女性のキャリアも結婚したら退職して専業主婦になるというものから、結婚・出産後も共働きで仕事を続けるのが主流になってきている。共学校は、多様化した進路のニーズをうまく汲み取っているものの、昔ながらの『文学部』『家政学部』だけという大学は苦戦しているのがここ10年くらいの傾向だ。 かつては20%を超えていた女子の短大進学率も、90年代後半をピークに下がっていて、今は女子の短大進学率が10%を切っている状態だ。短大進学者が少ないことで、青山学院女子短期大学や立教女学院短期大学など、かつての名門校も閉校に追い込まれている」 一方、大学進学率は上昇傾向にあり時代の変化に対応する大学も相次いでいる。鹿児島純心女子大学と神戸親和女子大学は4月から男女共学化し、名称も変更するという。 石渡氏は、女子大が苦戦する要因について「キャリア志向を考える女子学生たちが選択肢の多い大規模校を好む傾向が進み、小規模な女子大や短大が選択肢から外れている」と分析する。「“女子だけで学ぶ”ことが全く無意味とは思わない。下手に共学化を図るよりも女子大学のままの方がいいという話もある。しかし、キャリアを伸ばしていくという点で共学校がいいと考える女子学生が増えるのも当然の話だ。大規模校だと、昭和女子大学のようにキャリア志向に対応できる学部を新設したところはまだ十分な存在意義を示せるだろう。中間に位置する大学は“女子大学のまま”なのか“共学化の道を考える”のか、今後も変化していくだろう」 相次ぐ女子短大や女子大学の閉学について、教育経済学が専門の慶応義塾大学教授・中室牧子氏は「別学と共学というより、重要なのは“学ぶ中身”だ」と指摘する。「別学化・共学化は経済学でも随分研究されていて、別学で学ぶメリットもたくさんあると言われている。しかし、重要なのは“学ぶ中身”だ。(女子大学などの学部は)だんだん時代と合わなくなっているのではないか。海外で行われた別の研究では、どこの大学に行くかよりもどの学部に行くかが賃金に大きな影響を与えるという結果が出ている。やはり、“大学で何を学ぶか”が、その後の収入に影響するということなのだろう」 1991年度に25.5%だった大学進学率は2022年度に56.6%と、倍以上になった。一方で、2022年に598校ある私大の47.5%が定員割れだという。この現状について、石渡氏は「高度情報化で大学進学がより必要になったこと、低所得者層の進学支援が進んだことなどで今後も大学進学率は上昇するだろう」と述べている。 今後、大学はどうなっていくのだろうか。中室氏は「大学の新陳代謝を進めていくことが大事だ」として、次のように話した。「今後も大学進学率は上昇していくだろう。その中で、今回のように閉学するところもあれば開学するところもある。重要なのは、大学の新陳代謝を進めていくことだ。現在の国のルールでは大学を設置する基準については、細かいルールがあるものの、閉学するときのルールは十分に議論されていない。経営上の理由で閉学する大学は今後もあるだろう。そうなった際、在学生の権利や利益を保護できるかも大事な視点だ。 一方で、日本では設置基準が非常に厳しいので、なかなか新しい大学を開学できない。海外だと、特定のキャンバスを持たず、授業は全てオンラインとした『ミネルバ大学』などができたが、日本では難しいだろう。設置基準による厳しい規制については見直していかなければならないだろう」(『ABEMAヒルズ』より)
2024年度以降の大学と大学院の学生募集停止を発表した恵泉女学園。1929年の創立以降、90年もの歴史を誇る学校だが、歯止めのかからない少子化などが影響し、閉学を前提とする経営判断に至ったという。
恵泉女学園大学の閉学について、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は次のように考えを述べる。
「確かに少子化によって学生数は減ってきていた。しかし、それ以上に大きいのが『人文学部』と『人間社会学部』2つの学部のみの小規模校であることと、最寄りの駅からバスで10分ほどかかる立地の影響が大きいのではないか」
そう話す石渡氏は「時代の変化によって女子大そのものの需要も減りつつある」と明かす。
「2000年代に入って女子の進学率は上がっていった。女性のキャリアも結婚したら退職して専業主婦になるというものから、結婚・出産後も共働きで仕事を続けるのが主流になってきている。共学校は、多様化した進路のニーズをうまく汲み取っているものの、昔ながらの『文学部』『家政学部』だけという大学は苦戦しているのがここ10年くらいの傾向だ。
かつては20%を超えていた女子の短大進学率も、90年代後半をピークに下がっていて、今は女子の短大進学率が10%を切っている状態だ。短大進学者が少ないことで、青山学院女子短期大学や立教女学院短期大学など、かつての名門校も閉校に追い込まれている」
一方、大学進学率は上昇傾向にあり時代の変化に対応する大学も相次いでいる。鹿児島純心女子大学と神戸親和女子大学は4月から男女共学化し、名称も変更するという。
石渡氏は、女子大が苦戦する要因について「キャリア志向を考える女子学生たちが選択肢の多い大規模校を好む傾向が進み、小規模な女子大や短大が選択肢から外れている」と分析する。
「“女子だけで学ぶ”ことが全く無意味とは思わない。下手に共学化を図るよりも女子大学のままの方がいいという話もある。しかし、キャリアを伸ばしていくという点で共学校がいいと考える女子学生が増えるのも当然の話だ。大規模校だと、昭和女子大学のようにキャリア志向に対応できる学部を新設したところはまだ十分な存在意義を示せるだろう。中間に位置する大学は“女子大学のまま”なのか“共学化の道を考える”のか、今後も変化していくだろう」
相次ぐ女子短大や女子大学の閉学について、教育経済学が専門の慶応義塾大学教授・中室牧子氏は「別学と共学というより、重要なのは“学ぶ中身”だ」と指摘する。
「別学化・共学化は経済学でも随分研究されていて、別学で学ぶメリットもたくさんあると言われている。しかし、重要なのは“学ぶ中身”だ。(女子大学などの学部は)だんだん時代と合わなくなっているのではないか。海外で行われた別の研究では、どこの大学に行くかよりもどの学部に行くかが賃金に大きな影響を与えるという結果が出ている。やはり、“大学で何を学ぶか”が、その後の収入に影響するということなのだろう」
1991年度に25.5%だった大学進学率は2022年度に56.6%と、倍以上になった。一方で、2022年に598校ある私大の47.5%が定員割れだという。この現状について、石渡氏は「高度情報化で大学進学がより必要になったこと、低所得者層の進学支援が進んだことなどで今後も大学進学率は上昇するだろう」と述べている。
今後、大学はどうなっていくのだろうか。中室氏は「大学の新陳代謝を進めていくことが大事だ」として、次のように話した。
「今後も大学進学率は上昇していくだろう。その中で、今回のように閉学するところもあれば開学するところもある。重要なのは、大学の新陳代謝を進めていくことだ。現在の国のルールでは大学を設置する基準については、細かいルールがあるものの、閉学するときのルールは十分に議論されていない。経営上の理由で閉学する大学は今後もあるだろう。そうなった際、在学生の権利や利益を保護できるかも大事な視点だ。
一方で、日本では設置基準が非常に厳しいので、なかなか新しい大学を開学できない。海外だと、特定のキャンバスを持たず、授業は全てオンラインとした『ミネルバ大学』などができたが、日本では難しいだろう。設置基準による厳しい規制については見直していかなければならないだろう」
(『ABEMAヒルズ』より)