2023年2月2日から、中学受験界隈のSNSが「芝国際」というキーワードで荒れた。
【画像】「入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった」と断罪された芝国際〈〈終わった。芝国際を第一志望にしてしまったことで、すべての努力が無駄になった〉〈芝国際、さすがにこれは酷い。アパレルや飲食店でわざと供給絞って人気ぶりをアピールする手法はよくあるけど、生身の受験生でそれやるとか論外。この学校を信じて応募したのにこんなくだらないマーケ仕草の犠牲になった1000人以上の子供たちに、2月の1日と2日を返してあげて〉
〈芝国際中学校がコンサルとメディアに持ち上げられ開校→発表遅延,出題ミス,偏差値吊り上げの被害で死屍累累の最悪の入試に-メディアとコンサルに踊らされ人生を狂わされた中学受験生が悲痛の叫び〉〉 芝国際とは、2023年4月に開校する芝国際中学校・高等学校(東京都港区)のことである。 1903年創立の東京女子学園を改名し、共学化。学校説明会で、グローバル教育もデータサイエンス教育も起業家教育も放課後予備校もやるとアピールすると、定員120人に対してのべ4681名の出願者を集める人気を博した。 この学校に一体何が起きたのか?12階建ての新校舎にはインターナショナルスクールも同居する(公式サイトより)「偏差値を上げるために子どもを落としたと見られてしまっても仕方がない部分がある」“人気校”に何が…? 2月1日から5日にかけて行われた同校の入試は、合格発表遅延、出題ミス、不合格者もいる横で合格証授与、試験終了後の大混乱による受験生親子足止めなど、トラブル続出だった。 しかし炎上の本丸は、入試直前の1月28日まで、クラス数増の可能性も匂わせながら「合格者はたくさん出す」「合格はかなり多く出す」などと説明会でくり返していたにもかかわらず、蓋を開けてみると合格者は少なく、異常な倍率になったこと。 例えば、最も受験者が多い「粁燹米耽淵ラス)」の倍率は、2月1日午前が約30倍、午後が約36倍、2月2日午後が27倍だった。国際生の「CORE」クラスにいたっては、2月1日午前の合格者が0名だった。 ある中学受験塾幹部は「多くの子どもたちが不合格に泣き、他校を受ける機会を逃してしまったことは、想定が甘かったとして、受験生側だけに責任を押し付けてしまってよいものか、疑問に感じます」と訴える。 ある業界関係者は「偏差値を上げるために子どもを落としたと見られてしまっても仕方がない部分がある」と指摘する。どういうことか。「大量の不合格者」と引き換えに生み出されるもの 入試回数や種類をたくさん設定し、それぞれの定員を絞り、できるだけ多くの受験生をかき集め、一部の成績優秀層にだけ合格を出せば、見た目の結果偏差値は高く算出される。偏差値的には一躍人気進学校の仲間入りだ。 特に今回の芝国際の場合、入試の種類はぜんぶでなんと50種類。1回の定員が5名、10名という入試が並び、しかもそれぞれのなかに、4教科、2教科、1教科、適性検査型などの種類があり、ほかの枠へのスライド合格もあるという複雑怪奇なものだった。 大量の不合格者と引き換えに、いわば「バブル偏差値(※https://bunshun.jp/articles/-/9563)」のできあがりなのである。 騒ぎを受けて、2月下旬、理事長の命で校内に入試検証委員会が立ち上がる。その内部資料「検証結果報告書」を入手した。ネットで集中的に批判を受けた次の6点についての検証結果が述べられている。〈(1)2月1日の合格発表遅延(2)2月2日の出題ミスおよび1日、3日、5日の問題訂正(3)受験生待機場所の隣で合格証授与が行われていたこと(4)たくさん合格を出すと言っていたのに実際には少ないこと(5)いちど公表した入試結果速報を非公開にしたこと(6)試験終了後、受験生と保護者の引き合わせに多大な時間を要したこと〉(1)(2)はあってはならぬことではあるが、毎年どこかの学校で起こるミスではある。(3)(6)は校舎が建設中であったための動線設計ミスとのこと。報告書では多くの紙幅を(4)にあてている。(5)はそれに付随する二次的な問題だ。 報告書は、「以上のように、帰国生入試では“たくさん”の合格者が出たが、2月入試では一般的に言っても“たくさん”というにはほど遠い数字であることがわかる」と総括している。「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」 近年、女子校から共学化して校名も変えて人気校の座に躍り出た例としては、広尾学園小石川(旧・村田女子)、三田国際(旧・戸板女子)、かえつ有明(旧・嘉悦女子)が有名。前年度まで定員割れしていた3校だが、リニューアル初年度の一般生入試では、定員の3.5~4.7倍の合格者を出している。芝国際の“たくさん”を聞いて、中学受験に詳しいひとほど、これらの数字を思い浮かべたはずだ。しかし実際には、一般生の定員85名に対して合格者は159名で、定員の1.9倍だった。 先述の報告書によれば、2023年度の入学者数は2月17日の時点で、国際生クラス57 名(11月・12月入試53 名、2 月入試4名)、一般生クラス79 名、合計136 名。国際生は定員35名よりも多いが、その大半は昨年11月・12月に行われた帰国生向け入試からの入学。一般生は定員85名を満たしていない。 今回さらに、クラス編成がわかる内部文書を入手した。砧爐諒臀個螳60名に対して57名、粁爐諒臀個螳25名+若干名に対して17名の入学者しかいないことがわかった。 報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
〈〈終わった。芝国際を第一志望にしてしまったことで、すべての努力が無駄になった〉
〈芝国際、さすがにこれは酷い。アパレルや飲食店でわざと供給絞って人気ぶりをアピールする手法はよくあるけど、生身の受験生でそれやるとか論外。この学校を信じて応募したのにこんなくだらないマーケ仕草の犠牲になった1000人以上の子供たちに、2月の1日と2日を返してあげて〉
〈芝国際中学校がコンサルとメディアに持ち上げられ開校→発表遅延,出題ミス,偏差値吊り上げの被害で死屍累累の最悪の入試に-メディアとコンサルに踊らされ人生を狂わされた中学受験生が悲痛の叫び〉〉
芝国際とは、2023年4月に開校する芝国際中学校・高等学校(東京都港区)のことである。
1903年創立の東京女子学園を改名し、共学化。学校説明会で、グローバル教育もデータサイエンス教育も起業家教育も放課後予備校もやるとアピールすると、定員120人に対してのべ4681名の出願者を集める人気を博した。
この学校に一体何が起きたのか?
12階建ての新校舎にはインターナショナルスクールも同居する(公式サイトより)
2月1日から5日にかけて行われた同校の入試は、合格発表遅延、出題ミス、不合格者もいる横で合格証授与、試験終了後の大混乱による受験生親子足止めなど、トラブル続出だった。
しかし炎上の本丸は、入試直前の1月28日まで、クラス数増の可能性も匂わせながら「合格者はたくさん出す」「合格はかなり多く出す」などと説明会でくり返していたにもかかわらず、蓋を開けてみると合格者は少なく、異常な倍率になったこと。
例えば、最も受験者が多い「粁燹米耽淵ラス)」の倍率は、2月1日午前が約30倍、午後が約36倍、2月2日午後が27倍だった。国際生の「CORE」クラスにいたっては、2月1日午前の合格者が0名だった。
ある中学受験塾幹部は「多くの子どもたちが不合格に泣き、他校を受ける機会を逃してしまったことは、想定が甘かったとして、受験生側だけに責任を押し付けてしまってよいものか、疑問に感じます」と訴える。
ある業界関係者は「偏差値を上げるために子どもを落としたと見られてしまっても仕方がない部分がある」と指摘する。どういうことか。「大量の不合格者」と引き換えに生み出されるもの 入試回数や種類をたくさん設定し、それぞれの定員を絞り、できるだけ多くの受験生をかき集め、一部の成績優秀層にだけ合格を出せば、見た目の結果偏差値は高く算出される。偏差値的には一躍人気進学校の仲間入りだ。 特に今回の芝国際の場合、入試の種類はぜんぶでなんと50種類。1回の定員が5名、10名という入試が並び、しかもそれぞれのなかに、4教科、2教科、1教科、適性検査型などの種類があり、ほかの枠へのスライド合格もあるという複雑怪奇なものだった。 大量の不合格者と引き換えに、いわば「バブル偏差値(※https://bunshun.jp/articles/-/9563)」のできあがりなのである。 騒ぎを受けて、2月下旬、理事長の命で校内に入試検証委員会が立ち上がる。その内部資料「検証結果報告書」を入手した。ネットで集中的に批判を受けた次の6点についての検証結果が述べられている。〈(1)2月1日の合格発表遅延(2)2月2日の出題ミスおよび1日、3日、5日の問題訂正(3)受験生待機場所の隣で合格証授与が行われていたこと(4)たくさん合格を出すと言っていたのに実際には少ないこと(5)いちど公表した入試結果速報を非公開にしたこと(6)試験終了後、受験生と保護者の引き合わせに多大な時間を要したこと〉(1)(2)はあってはならぬことではあるが、毎年どこかの学校で起こるミスではある。(3)(6)は校舎が建設中であったための動線設計ミスとのこと。報告書では多くの紙幅を(4)にあてている。(5)はそれに付随する二次的な問題だ。 報告書は、「以上のように、帰国生入試では“たくさん”の合格者が出たが、2月入試では一般的に言っても“たくさん”というにはほど遠い数字であることがわかる」と総括している。「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」 近年、女子校から共学化して校名も変えて人気校の座に躍り出た例としては、広尾学園小石川(旧・村田女子)、三田国際(旧・戸板女子)、かえつ有明(旧・嘉悦女子)が有名。前年度まで定員割れしていた3校だが、リニューアル初年度の一般生入試では、定員の3.5~4.7倍の合格者を出している。芝国際の“たくさん”を聞いて、中学受験に詳しいひとほど、これらの数字を思い浮かべたはずだ。しかし実際には、一般生の定員85名に対して合格者は159名で、定員の1.9倍だった。 先述の報告書によれば、2023年度の入学者数は2月17日の時点で、国際生クラス57 名(11月・12月入試53 名、2 月入試4名)、一般生クラス79 名、合計136 名。国際生は定員35名よりも多いが、その大半は昨年11月・12月に行われた帰国生向け入試からの入学。一般生は定員85名を満たしていない。 今回さらに、クラス編成がわかる内部文書を入手した。砧爐諒臀個螳60名に対して57名、粁爐諒臀個螳25名+若干名に対して17名の入学者しかいないことがわかった。 報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
ある業界関係者は「偏差値を上げるために子どもを落としたと見られてしまっても仕方がない部分がある」と指摘する。どういうことか。
入試回数や種類をたくさん設定し、それぞれの定員を絞り、できるだけ多くの受験生をかき集め、一部の成績優秀層にだけ合格を出せば、見た目の結果偏差値は高く算出される。偏差値的には一躍人気進学校の仲間入りだ。
特に今回の芝国際の場合、入試の種類はぜんぶでなんと50種類。1回の定員が5名、10名という入試が並び、しかもそれぞれのなかに、4教科、2教科、1教科、適性検査型などの種類があり、ほかの枠へのスライド合格もあるという複雑怪奇なものだった。
大量の不合格者と引き換えに、いわば「バブル偏差値(※https://bunshun.jp/articles/-/9563)」のできあがりなのである。
騒ぎを受けて、2月下旬、理事長の命で校内に入試検証委員会が立ち上がる。その内部資料「検証結果報告書」を入手した。ネットで集中的に批判を受けた次の6点についての検証結果が述べられている。
〈(1)2月1日の合格発表遅延
(2)2月2日の出題ミスおよび1日、3日、5日の問題訂正
(3)受験生待機場所の隣で合格証授与が行われていたこと
(4)たくさん合格を出すと言っていたのに実際には少ないこと
(5)いちど公表した入試結果速報を非公開にしたこと
(6)試験終了後、受験生と保護者の引き合わせに多大な時間を要したこと〉
(1)(2)はあってはならぬことではあるが、毎年どこかの学校で起こるミスではある。(3)(6)は校舎が建設中であったための動線設計ミスとのこと。報告書では多くの紙幅を(4)にあてている。(5)はそれに付随する二次的な問題だ。
報告書は、「以上のように、帰国生入試では“たくさん”の合格者が出たが、2月入試では一般的に言っても“たくさん”というにはほど遠い数字であることがわかる」と総括している。
「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」 近年、女子校から共学化して校名も変えて人気校の座に躍り出た例としては、広尾学園小石川(旧・村田女子)、三田国際(旧・戸板女子)、かえつ有明(旧・嘉悦女子)が有名。前年度まで定員割れしていた3校だが、リニューアル初年度の一般生入試では、定員の3.5~4.7倍の合格者を出している。芝国際の“たくさん”を聞いて、中学受験に詳しいひとほど、これらの数字を思い浮かべたはずだ。しかし実際には、一般生の定員85名に対して合格者は159名で、定員の1.9倍だった。 先述の報告書によれば、2023年度の入学者数は2月17日の時点で、国際生クラス57 名(11月・12月入試53 名、2 月入試4名)、一般生クラス79 名、合計136 名。国際生は定員35名よりも多いが、その大半は昨年11月・12月に行われた帰国生向け入試からの入学。一般生は定員85名を満たしていない。 今回さらに、クラス編成がわかる内部文書を入手した。砧爐諒臀個螳60名に対して57名、粁爐諒臀個螳25名+若干名に対して17名の入学者しかいないことがわかった。 報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
近年、女子校から共学化して校名も変えて人気校の座に躍り出た例としては、広尾学園小石川(旧・村田女子)、三田国際(旧・戸板女子)、かえつ有明(旧・嘉悦女子)が有名。前年度まで定員割れしていた3校だが、リニューアル初年度の一般生入試では、定員の3.5~4.7倍の合格者を出している。芝国際の“たくさん”を聞いて、中学受験に詳しいひとほど、これらの数字を思い浮かべたはずだ。しかし実際には、一般生の定員85名に対して合格者は159名で、定員の1.9倍だった。
先述の報告書によれば、2023年度の入学者数は2月17日の時点で、国際生クラス57 名(11月・12月入試53 名、2 月入試4名)、一般生クラス79 名、合計136 名。国際生は定員35名よりも多いが、その大半は昨年11月・12月に行われた帰国生向け入試からの入学。一般生は定員85名を満たしていない。 今回さらに、クラス編成がわかる内部文書を入手した。砧爐諒臀個螳60名に対して57名、粁爐諒臀個螳25名+若干名に対して17名の入学者しかいないことがわかった。 報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
先述の報告書によれば、2023年度の入学者数は2月17日の時点で、国際生クラス57 名(11月・12月入試53 名、2 月入試4名)、一般生クラス79 名、合計136 名。国際生は定員35名よりも多いが、その大半は昨年11月・12月に行われた帰国生向け入試からの入学。一般生は定員85名を満たしていない。
今回さらに、クラス編成がわかる内部文書を入手した。砧爐諒臀個螳60名に対して57名、粁爐諒臀個螳25名+若干名に対して17名の入学者しかいないことがわかった。
報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
報告書の最後には「今年の芝国際の入試は、入試で考えられる『ミス』がすべて出てしまった入試であった」とも記載がある。これらが偶発的なミスではなく、構造的に起きたミスであったことを示唆する証言が、複数の学校関係者から得られた。
「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」短すぎる準備期間が招いた混乱 4月以降の体制についても不透明だという。「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」 そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。 私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。 受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。 あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。 いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。直撃に対し、校長の答えは… 3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。--今回の一連の騒動について。「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」新設校ブームの行方 3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。 今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。(おおた としまさ)
「入試問題の多くは外注作成で、入試当日に初めて問題と模範解答を見て記述問題の採点作業に関わった教員もいました」
4月以降の体制についても不透明だという。
「高校入学者が多かったため急遽4月から教員を増やす必要がありました。一部では、教員免許をもたない塾講師が特別非常勤講師としてやってくる予定です」
「実績がないのに、説明会では、あれもこれもやると大風呂敷を広げていました。あのときの説明通りだったと満足してもらうためには、かなりの難しさがあると思う」
そもそも共学化は急転直下に決まったことで、もともと新校舎は1学年100人規模の女子校として設計されていた。各フロアのトイレは個室ばかりで男子用小便器はごくわずか。教室で着替える前提だったから更衣室もない。
私立中高一貫校に詳しい教育関係者は、「このような事態を生じさせないため、開校準備には2年以上をかけて周囲の反応を確かめるのが常識。今回の芝国際のやり方は、中学入試や私学経営のあり方として、検証されなければいけない面がある。いくら出願者が急増して偏差値が一気に上がったとしても、これを『成功』としてはいけない」と指摘する。
受験生の不利益になりかねない複雑な入試制度について自主規制を求める可能性はないのか、東京私立中学高等学校協会に見解を求めた。
あくまでも事務局長個人による非公式な見解として、「現在具体的な議論はないが、都内私立中学校全体の信頼性に影響をおよぼすような状況が懸念される場合は、協会内で申し合わせを検討する可能性があります」と回答があった。
いわずもがな東京女子学園在校生や芝国際新入生に罪はない。彼らの愛着と期待には誠意をもって応えてほしい。まずは批判への真摯な対応と積極的な情報開示がその試金石になるはずだ。
3月16日、山崎達雄新校長を直撃した。取材前日には学校HPに、芝国際が塾の模試会場として使用されたことを報告する記事が掲載され、その中に「2月の入試ではご迷惑をおかけすることがありました」との記述があり、入試結果の概要へのリンクも張られていた。以下、新校長の発話から要点を抜粋する。
--今回の一連の騒動について。
「本当にご迷惑をおかけした。ここについてはお詫びするしかない」
--HPの「ご迷惑をおかけすることがありました」について、具体的には何が「迷惑」と認識されているのか。
「まず発表が遅れたこと、また入試問題のミスはあってはならないこと」
--たくさん合格者を出すと言っていたが実際の合格者が少なかったことについて批判の声が出ている。
「結果的に期待に沿えない部分があったことには、本当に申し訳ないと思っています。私たちとしては、出せる目一杯までは出したつもりで、実際、定員オーバーもしています。結果論として言われてしまうのは仕方ないですが、これだけの受験者数を予測できたのかといえば、正直いって苦しい」
--入試結果の発表がようやく昨日。なぜ1カ月以上かかったのか。しかもそのデータは概要でしかなく、ブラックボックスの印象を受けた。
「より詳細な情報はきちんと塾さんへ提供していて、そこから表に出してもらう形はとっています。業界をわかってらっしゃる方にいまブラックボックスって言われたのはすごくちょっと心外でございまして」
--あのデータ(3月15日学校HP公表)では、「私が受けたところはどうなったのか」がわからない。
「まずは全体を知っていただく目的で今回は出させていただいた。あとは説明会等で出していきますので、ご安心いただければと思います」
--入試の日程や種類が多いことによって一回一回の定員が小さくなる必然があった。今後もたくさんの種類をやっていくつもりか。
「これだけご批判いただいたので、今後についてはいま検討しています。ただ、多様性を重視する本校において、自分の得意で勝負できる入試が良くないって言われてしまえば、もう価値観が違いますねと言うしかなくなっちゃうんで」
3月23日には塾向けの説明会が開催された。私は参加を断られたが、参加者から情報を得た。入試直前期まで「比較的多くの合格者を出す」旨の発言をくり返したことへのお詫びがあった。次年度の入試設計を変更する可能性も示された。ただし、配布されたデータは50種類の入試それぞれの顛末がわかるものではなかった。
「最近では、学校名変更に象徴されるインパクト重視の学校改革が盛んです。今回の件は、そうした流れの究極の形として現れるべくして現れたものだと思います」と塾業界関係者は言う。来年度以降の受験生親子は2023年芝国際の入試で何があったのかをよく調べ、学校選びの教訓として活かしてほしい。
今回の「芝国際事件」は、新設校ブームの「終わりの始まり」になるかもしれない。
(おおた としまさ)