国産ロケットの打ち上げをめぐるニュースを見ていて、先日テレビでやっていた20世紀を振り返るドキュメントを思い出しました。あの頃のロケット開発競争はアメリカとソ連で技術力を競うことが動機になっていたのかなとも思うのですが、ひるがえって現代で国産ロケットを打ち上げようとすることの動機はどこから生まれているのでしょうか?(20代・女性・会社員)
【画像】沈痛な面持ちで記者団の取材に応じるJAXAの岡田匡史・H3プロジェクトマネジャー発射地点にとどまる新型ロケット「H3」試験機1号機 時事通信社

A ロケットを打ち上げる動機は3つ(とひとつ)あります 動機は大別して3つ。それに隠された動機がひとつというところでしょう。 まずは独自に宇宙開発をしようということです。たとえば放送衛星や通信衛星、気象衛星「ひまわり」や地球観測衛星「だいち」など、日本として独自に運用する衛星の数々を日本独自に打ち上げるためです。衛星の打ち上げを他国に頼っていては、希望通りの打ち上げや運用が困難になります。 2つ目は、コストの安いロケットを開発して、独自に打ち上げができない国の衛星打ち上げを請け負い、ビジネスにしようという目的があります。 3つ目は日本の科学技術力の向上です。一般に自動車の部品は3万点と言われていますが、ロケットは100万点にも上ります。それだけの部品を開発し、組み立てる能力を磨けば、さまざまな技術開発に役立つのです。 以上以外に、日本の一部には、「将来、日本が独自に核武装する能力を築いておこう」と考える人たちがいます。人工衛星を打ち上げることができるロケットの先端に原爆を積めば、大陸間弾道ミサイルになるからです。ただ、これはあまりに政治的に機微に触れることなので、表立って言う人がいないだけです。(池上 彰)
発射地点にとどまる新型ロケット「H3」試験機1号機 時事通信社
動機は大別して3つ。それに隠された動機がひとつというところでしょう。
まずは独自に宇宙開発をしようということです。たとえば放送衛星や通信衛星、気象衛星「ひまわり」や地球観測衛星「だいち」など、日本として独自に運用する衛星の数々を日本独自に打ち上げるためです。衛星の打ち上げを他国に頼っていては、希望通りの打ち上げや運用が困難になります。
2つ目は、コストの安いロケットを開発して、独自に打ち上げができない国の衛星打ち上げを請け負い、ビジネスにしようという目的があります。
3つ目は日本の科学技術力の向上です。一般に自動車の部品は3万点と言われていますが、ロケットは100万点にも上ります。それだけの部品を開発し、組み立てる能力を磨けば、さまざまな技術開発に役立つのです。
以上以外に、日本の一部には、「将来、日本が独自に核武装する能力を築いておこう」と考える人たちがいます。人工衛星を打ち上げることができるロケットの先端に原爆を積めば、大陸間弾道ミサイルになるからです。ただ、これはあまりに政治的に機微に触れることなので、表立って言う人がいないだけです。(池上 彰)
以上以外に、日本の一部には、「将来、日本が独自に核武装する能力を築いておこう」と考える人たちがいます。人工衛星を打ち上げることができるロケットの先端に原爆を積めば、大陸間弾道ミサイルになるからです。ただ、これはあまりに政治的に機微に触れることなので、表立って言う人がいないだけです。
(池上 彰)