大阪市生野区の生野愛和病院に乗用車が突っ込み、高齢女性2人が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで逮捕された男性が「事故直前にくしゃみをして意識が遠のいた」と供述していることが、捜査関係者への取材で明らかになった。現場の数十メートル手前からブレーキ痕がないことも判明。大阪府警は男性が意識障害に陥っていた疑いもあるとみて詳しい経緯を調べている。
くしゃみで意識障害、起きる? 過去にも… 府警は2日、亡くなったのはいずれも無職で大阪市東住吉区に住む黒田シマ子さん(86)と、口池邦子さん(75)と確認されたと発表した。口池さんは数年前から毎週水曜、入院中の息子の見舞いに行く黒田さんを車に乗せ、付き添いで病院を訪れていた。取材に応じた夫の幸一さん(75)は涙を流し、「容疑者は2人の命だけでなく、多くの親族の幸せも奪った」と声を絞り出した。

「お互い健康には気をつけよう。事故にも気をつけて」。仕事の関係で横浜に単身赴任中の幸一さんは2月下旬に帰宅し、3日間の滞在を終えて家を出る際、妻にこう声をかけた。これが妻と対面でやり取りした最後の会話になった。 事故は娘から電話で知らされた。結婚50年の「金婚式」も2年後に迫っていた。手先が器用で着物の着付けや裁縫も得意な妻。気さくで世話好きな人柄にいつも救われた。 口池さんは3人の子と6人の孫に恵まれた。「ひな祭りは孫を楽しませる計画も考えている」。夫には最近、そう漏らしていたという。孫の一人は小学6年の女児で間もなく卒業式。記念に着物の着付けをしてあげる予定もあった。春休みには家族13人で出かける毎年恒例の旅行も楽しみにしていた。 幸一さんは「妻のことをよく『かみさん』なんて呼ぶけど、僕にとっては『神さん』。太陽のような存在だった妻を奪われてしまった」とうなだれた。【清水晃平、砂押健太】
府警は2日、亡くなったのはいずれも無職で大阪市東住吉区に住む黒田シマ子さん(86)と、口池邦子さん(75)と確認されたと発表した。口池さんは数年前から毎週水曜、入院中の息子の見舞いに行く黒田さんを車に乗せ、付き添いで病院を訪れていた。取材に応じた夫の幸一さん(75)は涙を流し、「容疑者は2人の命だけでなく、多くの親族の幸せも奪った」と声を絞り出した。
「お互い健康には気をつけよう。事故にも気をつけて」。仕事の関係で横浜に単身赴任中の幸一さんは2月下旬に帰宅し、3日間の滞在を終えて家を出る際、妻にこう声をかけた。これが妻と対面でやり取りした最後の会話になった。
事故は娘から電話で知らされた。結婚50年の「金婚式」も2年後に迫っていた。手先が器用で着物の着付けや裁縫も得意な妻。気さくで世話好きな人柄にいつも救われた。
口池さんは3人の子と6人の孫に恵まれた。「ひな祭りは孫を楽しませる計画も考えている」。夫には最近、そう漏らしていたという。孫の一人は小学6年の女児で間もなく卒業式。記念に着物の着付けをしてあげる予定もあった。春休みには家族13人で出かける毎年恒例の旅行も楽しみにしていた。
幸一さんは「妻のことをよく『かみさん』なんて呼ぶけど、僕にとっては『神さん』。太陽のような存在だった妻を奪われてしまった」とうなだれた。【清水晃平、砂押健太】