28日午前11時頃、京都府亀岡市の保津川(桂川)で、「保津川下り」の遊覧船(全長約12メートル)が岩に衝突して転覆した。
子ども3人を含む乗客25人と船頭4人が川に転落し、船頭の田中三郎さん(51)が死亡、別の男性船頭(40)が行方不明となった。また、乗客9人が低体温症などで病院に搬送されたが、いずれも軽症という。府警は、船頭の操船ミスが原因とみて事故の経緯を詳しく調べる。
運航する保津川遊船企業組合によると、遊覧船は同日午前10時40分頃、亀岡市の乗船場を出発。約15分後、約4キロ先の「大高瀬」と呼ばれる急流の難所付近で、船の後方にいた船頭の1人が、船の方向を変えるために舵(かじ)で水をかこうとして空振りし、バランスを崩して転落した。船は制御が困難になってコースを外れ、数百メートル先の岩にぶつかって転覆し、全員が川に投げ出された。
乗客は自力で川岸に避難するなどしたが、船首にいた田中さんら船頭2人が流された。田中さんは搬送先で死亡が確認され、もう1人は、府警が同日夜まで捜索したが見つからなかった。府警は29日朝に捜索を再開する。
組合によると、この日の水位は運航を取りやめる安全規定(85センチ)を下回る69センチ。通常より高いが、船頭を通常の3人から4人に増やして運航していた。4人は船頭歴9~30年のベテランで、乗客を含めていずれも救命胴衣を着用していたという。
保津川下りは、亀岡市から京都・嵐山まで約16キロを船で下る。400年以上の歴史がある。今シーズンは、訪日外国人客らの予約が多く入り、転覆した船にも複数の外国人客がいた。
組合の豊田知八(ともや)代表理事(57)は「舵を空振りしたミスが原因と思われる。お客様に怖い思いをさせてしまった。何が起こったのかしっかりと検証したい」と陳謝した。当面運航を中止する。
事故を受け、国の運輸安全委員会は船舶事故調査官2人の派遣を決めた。
親子で乗船した大阪府摂津市の男性(40)は「100メートルぐらい流されてからようやく足が川底に着いた」と話し、小学4年の息子(10)は「『ぶつけて止めろ』という大きな声がして船が揺れた後、ひっくり返って川に落ちた。水がめちゃくちゃ冷たくて泳げなかったが、お父さんが近くにいてくれてよかった」と話していた。
◇ 保津川では過去にも事故が起きている。2001年9月、遊覧船が岩に衝突して転覆し、5人が流されてけが人が出た。06年には船に落石があり、破片が当たった乗客らが重傷を負った。また、浜松市の天竜川でも11年8月、23人が乗った川下り船が転覆し、乗客4人と船頭1人が死亡する事故があった。