徳島県警は2日、美馬市の観光名所「うだつの町並み」近くの市道交差点にある横断歩道1本で、設置に必要な手続きが行われたかどうか確認できず、無効の状態だったと発表した。
設置時点にさかのぼりおよそ30年間、横断歩道として取り扱うことができず、県警は過去5年間に同所で摘発した車や原付きバイクの運転手32人の交通違反を取り消し、反則金計約30万円を返納することになった。(山根彩花)
横断歩道があるのは美馬市脇町猪尻西分の交差点で、市地域交流センター「ミライズ」の北西に位置する。信号機は設置されていない。
美馬署員が先月10日、交差点で交通違反を摘発。交通規制をとりまとめた規制集を確認したところ、北、南、東と現場に3本ある横断歩道が、規制集には北側と南側の2本しか記載されていなかった。その後の県警の調査で、南側と東側の横断歩道については設置手続きに必要な県公安委員会の1986年の決裁書類を確認できたが、北側の1本に関するものは見つからなかったという。
北側の横断歩道は、近くの橋の工事が行われた92年5月頃に設置されたとみられる。現場は「うだつの町並み」に近く、観光客や地元住民の往来が多い。交通違反切符の保存期間である過去5年間に、この横断歩道では32人が道路交通法の「横断歩行者妨害」で摘発されているが、横断歩道が無効となったことから、県警は全員の違反を取り消し、1人6000~9000円の反則金を返納。ゴールド免許でなくなった人には、免許の交換にも対応するという。
県警は今月2日付で県公安委員会から決裁を受け、北側の横断歩道の設置手続きを完了させた。今後は、県内の約2万2700か所の交通規制を総点検するといい、県警交通規制課は「取り締まりを受けた方にお詫(わ)び申し上げる。今後は適正な取り締まりに努める」としている。