2月19日夜、羽田空港を出発したJAL便が、目的地の福岡空港の“門限”にあたる午後10時に間に合わず、着陸できない事態が発生した。悪天候による出発の遅れが原因と見られ、機体は関西空港に一時着陸し、給油後、羽田空港にUターンしたが、そもそも“門限”とはどういったものなのだろうか。空港運用をめぐる海外と日本の規定の違いや、再検討が求められる課題などについて、元日本航空のパイロット・小林宏之さんに聞いた。

海外の空港に“門限”はほぼ無いーー門限はどの空港にもある?日本の空港ではほとんどで“門限”があります。ただ、海上空港の中部国際空港と関西空港、羽田空港は、海の方からの着陸と海に向かっての離陸は24時間許可されています。もともと門限は、騒音問題で設けられたのですが、門限を決めた当時の飛行機の騒音と今の新しい飛行機の騒音とを比べると、かなり静かになっているので、各空港はもう一度、騒音問題について検討する必要があると思います。特に飛行機は、新幹線や電車と同じように公共の交通機関なので、昔の古いデータで規制するのではなくて、科学的な数値によって再検討する必要があります。そうでないとまた、今回のようなことが起こりうると思います。ーー今回のようなUターンはよくある?よくあるわけではありません。悪天候の場合や急病人など人命にかかわるような場合は、“門限”を過ぎても着陸が認められています。今回、日本航空331便の着陸は認められませんでしたが、続いて羽田を出発して同じく福岡空港に向かった日本航空333便と335便は、22時13分と22時16分に着陸しています。331便の着陸は認められず、一方で、後続の2便の着陸は許可されたこの判断の違いは何だったのか、今後検証する必要があると思います。331便の機長は結局許可が出なかったため、関西空港に向かったということです。着陸申請が認められなかった理由については、「あくまでも航空会社の事情による遅れのため」とされています。基準の見直しや柔軟な判断が必要共に門限の午後10時を過ぎて福岡空港上空に到着しながら、着陸許可の判断が分かれた日本航空の3機。乗客、乗員の負担や地球温暖化の影響による気象の変化などを考え、“柔軟な対応”を検討する必要があると小林さんは話す。ーー門限を見直すためには何が必要?空港当局と地域の住民との話し合いになると思いますが、特に日本は厳しいです。例えば、アメリカのロサンゼルスやシカゴなどは、滑走路が何本もあって街の上空を四六時中、次々と飛行していて、飛行機に対する考え方が日本と違います。日本の場合は、飛行機はまだ特別なものだという意識があると思います。飛行機も公共交通機関の1つだという考え方が必要で、国民の意識が変わらないと難しいです。海外ではほぼ24時間運用なので、悪天候で着陸できず引き返すことはあっても、“門限”で引き返すということはほとんどないです。ーー着陸申請の流れは?上空で急病人が発生したり、エンジントラブルなどは機長の判断で門限を過ぎても緊急着陸をしますが、悪天候で出発が遅れるとか、空港が混みあって門限までに着陸できない場合などは、航空会社から空港当局に申請することになります。その都度判断が変わるようでは、乗客も乗員も非常に苦労するので、今回のケースを機に、基準を見直すか、柔軟な判断をするよう検討する必要があると思います。地球温暖化の影響で、気象の変化が激しかったり、今までなかったような気象でなかなか出発できない、あるいは、もう少し待った方が安全に着陸できるというケースが今後起こってくると思います。航路上の天候、例えば、積乱雲が発達しているとそれを迂回しなくてはいけないので、予定時刻からかなり遅れて目的の空港に到着することになります。今回のケースを教訓にして、門限を過ぎた場合の“柔軟性”を検討したらいいと思います。
2月19日夜、羽田空港を出発したJAL便が、目的地の福岡空港の“門限”にあたる午後10時に間に合わず、着陸できない事態が発生した。
悪天候による出発の遅れが原因と見られ、機体は関西空港に一時着陸し、給油後、羽田空港にUターンしたが、そもそも“門限”とはどういったものなのだろうか。
空港運用をめぐる海外と日本の規定の違いや、再検討が求められる課題などについて、元日本航空のパイロット・小林宏之さんに聞いた。
ーー門限はどの空港にもある?日本の空港ではほとんどで“門限”があります。
ただ、海上空港の中部国際空港と関西空港、羽田空港は、海の方からの着陸と海に向かっての離陸は24時間許可されています。
もともと門限は、騒音問題で設けられたのですが、門限を決めた当時の飛行機の騒音と今の新しい飛行機の騒音とを比べると、かなり静かになっているので、各空港はもう一度、騒音問題について検討する必要があると思います。
特に飛行機は、新幹線や電車と同じように公共の交通機関なので、昔の古いデータで規制するのではなくて、科学的な数値によって再検討する必要があります。
そうでないとまた、今回のようなことが起こりうると思います。
ーー今回のようなUターンはよくある?よくあるわけではありません。
悪天候の場合や急病人など人命にかかわるような場合は、“門限”を過ぎても着陸が認められています。
今回、日本航空331便の着陸は認められませんでしたが、続いて羽田を出発して同じく福岡空港に向かった日本航空333便と335便は、22時13分と22時16分に着陸しています。
331便の着陸は認められず、一方で、後続の2便の着陸は許可されたこの判断の違いは何だったのか、今後検証する必要があると思います。
331便の機長は結局許可が出なかったため、関西空港に向かったということです。
着陸申請が認められなかった理由については、「あくまでも航空会社の事情による遅れのため」とされています。
共に門限の午後10時を過ぎて福岡空港上空に到着しながら、着陸許可の判断が分かれた日本航空の3機。
乗客、乗員の負担や地球温暖化の影響による気象の変化などを考え、“柔軟な対応”を検討する必要があると小林さんは話す。
ーー門限を見直すためには何が必要?空港当局と地域の住民との話し合いになると思いますが、特に日本は厳しいです。
例えば、アメリカのロサンゼルスやシカゴなどは、滑走路が何本もあって街の上空を四六時中、次々と飛行していて、飛行機に対する考え方が日本と違います。
日本の場合は、飛行機はまだ特別なものだという意識があると思います。
飛行機も公共交通機関の1つだという考え方が必要で、国民の意識が変わらないと難しいです。
海外ではほぼ24時間運用なので、悪天候で着陸できず引き返すことはあっても、“門限”で引き返すということはほとんどないです。
ーー着陸申請の流れは?上空で急病人が発生したり、エンジントラブルなどは機長の判断で門限を過ぎても緊急着陸をしますが、悪天候で出発が遅れるとか、空港が混みあって門限までに着陸できない場合などは、航空会社から空港当局に申請することになります。
その都度判断が変わるようでは、乗客も乗員も非常に苦労するので、今回のケースを機に、基準を見直すか、柔軟な判断をするよう検討する必要があると思います。
地球温暖化の影響で、気象の変化が激しかったり、今までなかったような気象でなかなか出発できない、あるいは、もう少し待った方が安全に着陸できるというケースが今後起こってくると思います。
航路上の天候、例えば、積乱雲が発達しているとそれを迂回しなくてはいけないので、予定時刻からかなり遅れて目的の空港に到着することになります。