全国で相次いで発生している強盗事件をめぐり、犯行の指示役とされる日本人特殊詐欺グループのリーダー、渡邉優樹容疑者(38)。北海道東部の牧場で生まれ育った少年は、いかにして凶悪な連続強盗の主犯格に成り果てたのか――。
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【写真を見る】剣道部で主将を務めていたという高校時代の渡邉容疑者 東京・狛江市の邸宅で老女が殺害された一件をはじめ、警察庁幹部をして「国民の体感治安に影響している」と言わしめた連続強盗事件。被害は14都府県で20件を超える。

「一連の事件は『ルフィ』を名乗る人物らがフィリピンから、テレグラムという送受信記録が消える秘匿性の高いスマホ通信アプリを使って指示していました」渡邉優樹容疑者 とは全国紙社会部記者。「警視庁によるとルフィの名は1人ではなく、複数の人物によって使われていたようです。彼らは2019年にフィリピンで拘束された、被害総額35億円にのぼる特殊詐欺の実行グループのメンバー。今回、警視庁が別の特殊詐欺事件に関わった疑いで逮捕状を取った4人ともグループの幹部で、現在、フィリピンの入管施設に収容されています」 すなわち渡邉優樹(38)、今村磨人(きよと)(38)、藤田聖也(としや)(38)、小島智信(45)の4人の容疑者が獄中から今回の事件も差配していたと見られるが、「とくに渡邉はフィリピン当局が“ビッグボス”と見なしており、警視庁も主犯格だとにらんでいます」(同)剣道部で主将をやっていた ボス格の渡邉容疑者は北海道の東部、別海町の生まれ。この時期、町は雪と氷に閉ざされるが、夏は一面、見渡す限りの牧草地。渡邉はそんな土地で酪農家の両親の下、祖母と妹を含む5人家族の長男として育った。 地元の小学校と中学校を卒業後、隣町の道立高校に進学。子供の頃から剣道の稽古場に通っており、なかなかの腕前だったという。 高校時代の同級生の話。「小学校の頃から剣道をやっていて、地元の大会でも1位になったことがあります。有段者で、高校でも剣道部に所属していました」 同じ剣道部で腕を競い合った別の同級生が語る。「全道大会というのは、釧路・根室地域の大会で1番とか2番にならないと出られません。その大会に出場していたくらいなので腕前は相当なもの。3年生の時には主将もやってましたし、グイグイ人を引っ張る力があるという印象でした」 もっとも、学生時代は武道一筋ではなかった。「特別モテるタイプというわけではなかったですが、高校時代に2人の彼女と付き合っていました。1人目は同じ学年の子、2人目は2学年下の後輩で、同じ剣道部でした」(同) 部活に恋に忙しい高校生活は順風満帆だったと言っていいだろう。また、「高校は普通科と商業科などに分かれていて、彼は普通科の生徒でした。普通科は大半が大学に進学しますから、頭の出来はいい部類だと思う」(同)ススキノのバイトで変節 だが、転機が訪れた。「スポーツ推薦で札幌市内の大学に入学してから変節した」(前出・同級生)というのである。「20歳の頃にススキノの路上でバッタリ彼と会ったんです。声をかけたら“黒服やってるんだ。ウチの店に来る?”って。ヤンチャでもなかった奴がいきなりニュークラ(注・キャバクラのこと)で黒服をやってたので驚きました」(同) 他の同級生もその黒服姿を目にしており、大学時代から夜の街へと溺れていった様子がうかがえるのだ。 さる捜査関係者が明かすには、「渡邉は20代の頃から水商売の店を数店舗経営していました。その際に、ある広域暴力団とも付き合うようになったのです。一方で、渡邉と同じく今村もその組織の“周辺者”。二人はススキノで出会っています」 20代半ばにして、すでに暗い波濤に飲み込まれつつあったというわけだ。また実際、こんな証言も。「25歳くらいでしたか、彼を地元のスーパーで見かけたら、すっかり雰囲気が変わっていました。イカツイ感じで高級車に乗っていましたね」(前出・別の同級生)兼近と共犯だったことを自慢 渡邉容疑者が新聞の社会面を賑わすことになるのは、それから数年後のこと。「北海道警は12年に現金およそ1千万円のほか、ブランド時計など300万円相当を盗んだ疑いで渡邉を逮捕しています。この事件で当時、札幌市内の飲食店で働いていたある人物も、共犯者として逮捕されたのです」(前出・社会部記者) その人物こそ、今をときめく人気お笑いコンビ「EXIT」のボケ役・兼近大樹(31)だが、「本人は巻き込まれただけで、後に不起訴になっています」(吉本興業広報担当) 先の渡邉の同級生が言う。「5年前に友人が渡邉と偶然会った時に、“兼近と共犯だった”ことを自慢されたそうです。“今はオレオレ詐欺をやっているんだ”なんて言って、なぜかエラそうだったとか」「週刊新潮」2023年2月9日号 掲載
東京・狛江市の邸宅で老女が殺害された一件をはじめ、警察庁幹部をして「国民の体感治安に影響している」と言わしめた連続強盗事件。被害は14都府県で20件を超える。
「一連の事件は『ルフィ』を名乗る人物らがフィリピンから、テレグラムという送受信記録が消える秘匿性の高いスマホ通信アプリを使って指示していました」
とは全国紙社会部記者。
「警視庁によるとルフィの名は1人ではなく、複数の人物によって使われていたようです。彼らは2019年にフィリピンで拘束された、被害総額35億円にのぼる特殊詐欺の実行グループのメンバー。今回、警視庁が別の特殊詐欺事件に関わった疑いで逮捕状を取った4人ともグループの幹部で、現在、フィリピンの入管施設に収容されています」
すなわち渡邉優樹(38)、今村磨人(きよと)(38)、藤田聖也(としや)(38)、小島智信(45)の4人の容疑者が獄中から今回の事件も差配していたと見られるが、
「とくに渡邉はフィリピン当局が“ビッグボス”と見なしており、警視庁も主犯格だとにらんでいます」(同)
ボス格の渡邉容疑者は北海道の東部、別海町の生まれ。この時期、町は雪と氷に閉ざされるが、夏は一面、見渡す限りの牧草地。渡邉はそんな土地で酪農家の両親の下、祖母と妹を含む5人家族の長男として育った。
地元の小学校と中学校を卒業後、隣町の道立高校に進学。子供の頃から剣道の稽古場に通っており、なかなかの腕前だったという。
高校時代の同級生の話。
「小学校の頃から剣道をやっていて、地元の大会でも1位になったことがあります。有段者で、高校でも剣道部に所属していました」
同じ剣道部で腕を競い合った別の同級生が語る。
「全道大会というのは、釧路・根室地域の大会で1番とか2番にならないと出られません。その大会に出場していたくらいなので腕前は相当なもの。3年生の時には主将もやってましたし、グイグイ人を引っ張る力があるという印象でした」
もっとも、学生時代は武道一筋ではなかった。
「特別モテるタイプというわけではなかったですが、高校時代に2人の彼女と付き合っていました。1人目は同じ学年の子、2人目は2学年下の後輩で、同じ剣道部でした」(同)
部活に恋に忙しい高校生活は順風満帆だったと言っていいだろう。また、
「高校は普通科と商業科などに分かれていて、彼は普通科の生徒でした。普通科は大半が大学に進学しますから、頭の出来はいい部類だと思う」(同)
だが、転機が訪れた。
「スポーツ推薦で札幌市内の大学に入学してから変節した」(前出・同級生)というのである。
「20歳の頃にススキノの路上でバッタリ彼と会ったんです。声をかけたら“黒服やってるんだ。ウチの店に来る?”って。ヤンチャでもなかった奴がいきなりニュークラ(注・キャバクラのこと)で黒服をやってたので驚きました」(同)
他の同級生もその黒服姿を目にしており、大学時代から夜の街へと溺れていった様子がうかがえるのだ。
さる捜査関係者が明かすには、
「渡邉は20代の頃から水商売の店を数店舗経営していました。その際に、ある広域暴力団とも付き合うようになったのです。一方で、渡邉と同じく今村もその組織の“周辺者”。二人はススキノで出会っています」
20代半ばにして、すでに暗い波濤に飲み込まれつつあったというわけだ。また実際、こんな証言も。
「25歳くらいでしたか、彼を地元のスーパーで見かけたら、すっかり雰囲気が変わっていました。イカツイ感じで高級車に乗っていましたね」(前出・別の同級生)
渡邉容疑者が新聞の社会面を賑わすことになるのは、それから数年後のこと。
「北海道警は12年に現金およそ1千万円のほか、ブランド時計など300万円相当を盗んだ疑いで渡邉を逮捕しています。この事件で当時、札幌市内の飲食店で働いていたある人物も、共犯者として逮捕されたのです」(前出・社会部記者)
その人物こそ、今をときめく人気お笑いコンビ「EXIT」のボケ役・兼近大樹(31)だが、
「本人は巻き込まれただけで、後に不起訴になっています」(吉本興業広報担当)
先の渡邉の同級生が言う。
「5年前に友人が渡邉と偶然会った時に、“兼近と共犯だった”ことを自慢されたそうです。“今はオレオレ詐欺をやっているんだ”なんて言って、なぜかエラそうだったとか」
「週刊新潮」2023年2月9日号 掲載