「ホストに売掛(≒ツケ)で貢いだお金が払えなくなったことを伝えたら、それまで優しかったホストの表情が一変したんです。『お前が今着てるそれ、ブランドもんだろ。売ってこいよ』と首元を掴んで質屋まで連れていかれました。抵抗しても『早く脱げよ』と顔面を殴られて、道端で泣きながら服を脱ぎました。身ぐるみ剥がされ、コートもスカートも靴も、その日の所持品を全部で20万円で売られました。歌舞伎町にあんなにたくさん質屋がある理由がやっとわかりました……」
【写真】1000万円を貢いだ挙げ句、道端で服を脱がされたA子さん 6年間で1000万円以上を新宿・歌舞伎町のホストクラブで使ったA子さんを待っていたのは、質屋で持ち物をすべて売られるという最悪の結末だった。 日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。飲食店や様々な遊戯施設が立ち並ぶ街には、“眠らない質屋”も数多く存在する。その多くがキャバクラやホストクラブ、最近では“推し”に貢ぐ人々に利用されているという。質屋を訪れる人の目的は、大半が“貢ぎ” 現在、歌舞伎町周辺に存在する質屋は15店舗以上。ブランドバッグや高級時計などを“質草”(≒担保)として店に預けることで、その価格に応じた現金をすぐに受け取ることができる。期限までにお金を返せば品物は返ってくるが、お金が払えなければ品物は質屋に取られてしまう。 プロミスやアイフルなどの消費者金融が普及したことで全国的には減少傾向の質屋だが、歌舞伎町ではむしろ増えているという。すぐにお金を借りられる手軽さが、歌舞伎町で生活する人たちのニーズにぴったりハマっているのだ。歌舞伎町のとある質屋の従業員はこう話す。歌舞伎町には数多くの質屋がひしめいている。その用途は様々 文藝春秋「一般的な質屋では金利が5%ですが、歌舞伎町の質屋は競争が激しいので金利が1%のところがほとんど。この街は水商売や日払いの仕事をされている方が多いので、突発的にお金が必要になるケースもあり、短期間で低金利の質預けを利用される方が多いです」 県外から生活費のために高級ブランドを換金しようと訪れる利用者もいるが、地下アイドルやコンセプトカフェの“推し”に貢ぐためという人が圧倒的に多数派だという。従業員が続ける。「女性が焦った様子で店内に入って来て『これ2万でもいいから』と指輪の審査を依頼されたことがあります。ブランド物でもなく古かったのでお断りしたのですが『どうしても今日シャンパンを入れてあげたいの!』としばらくごねられました。どうやらお気に入りのホストの誕生日だったみたいです。聞けば親御さんの形見の指輪ということで、なおさら預かれませんと断りました。それでも女性は持っていた財布とカバンを預けてお金を持ってホストクラブの方へ消えていきました」 ホストクラブでシャンパンを入れるために親の形見を2万円で手放す――。一見すると不可解だが、自身も1000万円以上を貢いだA子さんは「気持ちはわかる。ホストクラブはそういうところ」と言う。「私は家が割と裕福だったので、大学で上京する時に親が新宿区にマンションを買ってくれました。なのでバイトして稼いだお金は全部自由に使えて、同年代では貯金もある方でした。ホストに初めて行ったのは大学3年生だった20歳の頃。友達に『ホスト行ってみない?』と誘われて、それが沼の始まりでした……」ホストに貢ぐ友達を見て「私にもそれくらいできるけど?」 東京での暮らしに慣れたつもりだったA子さんにとっても、歌舞伎町のホストクラブは別世界だった。着飾った男性たちにハイテンションでちやほやされるのが楽しく、最初は1回あたり1万円以内の範囲で遊んでいたが、徐々に金額がエスカレートしていったという。「私をホストクラブに誘った友人がお店で“担当ホスト”を決めて彼にお金を落としているのを見て『私もそのくらいできるけど?』と女のプライド勝負が始まってしまいました。すぐに自分にも担当ができて、気づけばプライド勝負ではなく担当の喜ぶ姿を見るためにシャンパンを入れるように。ガチ恋というよりは“推し”に近い感覚だったと思います」 ホストクラブに通う友人の中には風俗や水商売といった高報酬のバイトを始める人も多かったが、A子さんは「それだけはしたくなかった」という。しかしホストに貢ぐことはやめられず、別の方法でお金を稼ぐ必要に迫られた。「親に何度も仕送りをしてもらって貢ぎを続けていたんですが、大学を卒業して働き始めても仕送りをねだっていたらさすがに呆れられてしまって。それで頼ったのが質屋でした。お金に余裕がある時に集めていたブランド品を売って、できたお金でホストに行く繰り返し。でもお金もブランド品も無くなってきて、水商売も抵抗があったので『さすがにホストもやめ時かな』と一度は通うのをやめたんですが……」 この時点でホストに貢いだ額は700万円以上。しかしA子さんは「あの時すっぱり止められていればずいぶんマシだった」と振り返る。その後A子さんは仕事に打ち込み、職場では彼氏もでき、親との関係も徐々に回復し始めた。その矢先、“担当”から再び連絡が届く。「1年くらいは歌舞伎町に近づかない生活を送っていました。でもある日、担当から『久々に来ないか?』と連絡が来たんです。ちょうど彼氏と喧嘩したタイミングで、イライラしていたので担当に『行く』と返事をしてしまいました。以前ほどお金もないので売掛で遊んで、それからは彼氏と喧嘩する度にホストに通う生活が再開しました」「お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ」 すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」 ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
6年間で1000万円以上を新宿・歌舞伎町のホストクラブで使ったA子さんを待っていたのは、質屋で持ち物をすべて売られるという最悪の結末だった。
日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。飲食店や様々な遊戯施設が立ち並ぶ街には、“眠らない質屋”も数多く存在する。その多くがキャバクラやホストクラブ、最近では“推し”に貢ぐ人々に利用されているという。質屋を訪れる人の目的は、大半が“貢ぎ” 現在、歌舞伎町周辺に存在する質屋は15店舗以上。ブランドバッグや高級時計などを“質草”(≒担保)として店に預けることで、その価格に応じた現金をすぐに受け取ることができる。期限までにお金を返せば品物は返ってくるが、お金が払えなければ品物は質屋に取られてしまう。 プロミスやアイフルなどの消費者金融が普及したことで全国的には減少傾向の質屋だが、歌舞伎町ではむしろ増えているという。すぐにお金を借りられる手軽さが、歌舞伎町で生活する人たちのニーズにぴったりハマっているのだ。歌舞伎町のとある質屋の従業員はこう話す。歌舞伎町には数多くの質屋がひしめいている。その用途は様々 文藝春秋「一般的な質屋では金利が5%ですが、歌舞伎町の質屋は競争が激しいので金利が1%のところがほとんど。この街は水商売や日払いの仕事をされている方が多いので、突発的にお金が必要になるケースもあり、短期間で低金利の質預けを利用される方が多いです」 県外から生活費のために高級ブランドを換金しようと訪れる利用者もいるが、地下アイドルやコンセプトカフェの“推し”に貢ぐためという人が圧倒的に多数派だという。従業員が続ける。「女性が焦った様子で店内に入って来て『これ2万でもいいから』と指輪の審査を依頼されたことがあります。ブランド物でもなく古かったのでお断りしたのですが『どうしても今日シャンパンを入れてあげたいの!』としばらくごねられました。どうやらお気に入りのホストの誕生日だったみたいです。聞けば親御さんの形見の指輪ということで、なおさら預かれませんと断りました。それでも女性は持っていた財布とカバンを預けてお金を持ってホストクラブの方へ消えていきました」 ホストクラブでシャンパンを入れるために親の形見を2万円で手放す――。一見すると不可解だが、自身も1000万円以上を貢いだA子さんは「気持ちはわかる。ホストクラブはそういうところ」と言う。「私は家が割と裕福だったので、大学で上京する時に親が新宿区にマンションを買ってくれました。なのでバイトして稼いだお金は全部自由に使えて、同年代では貯金もある方でした。ホストに初めて行ったのは大学3年生だった20歳の頃。友達に『ホスト行ってみない?』と誘われて、それが沼の始まりでした……」ホストに貢ぐ友達を見て「私にもそれくらいできるけど?」 東京での暮らしに慣れたつもりだったA子さんにとっても、歌舞伎町のホストクラブは別世界だった。着飾った男性たちにハイテンションでちやほやされるのが楽しく、最初は1回あたり1万円以内の範囲で遊んでいたが、徐々に金額がエスカレートしていったという。「私をホストクラブに誘った友人がお店で“担当ホスト”を決めて彼にお金を落としているのを見て『私もそのくらいできるけど?』と女のプライド勝負が始まってしまいました。すぐに自分にも担当ができて、気づけばプライド勝負ではなく担当の喜ぶ姿を見るためにシャンパンを入れるように。ガチ恋というよりは“推し”に近い感覚だったと思います」 ホストクラブに通う友人の中には風俗や水商売といった高報酬のバイトを始める人も多かったが、A子さんは「それだけはしたくなかった」という。しかしホストに貢ぐことはやめられず、別の方法でお金を稼ぐ必要に迫られた。「親に何度も仕送りをしてもらって貢ぎを続けていたんですが、大学を卒業して働き始めても仕送りをねだっていたらさすがに呆れられてしまって。それで頼ったのが質屋でした。お金に余裕がある時に集めていたブランド品を売って、できたお金でホストに行く繰り返し。でもお金もブランド品も無くなってきて、水商売も抵抗があったので『さすがにホストもやめ時かな』と一度は通うのをやめたんですが……」 この時点でホストに貢いだ額は700万円以上。しかしA子さんは「あの時すっぱり止められていればずいぶんマシだった」と振り返る。その後A子さんは仕事に打ち込み、職場では彼氏もでき、親との関係も徐々に回復し始めた。その矢先、“担当”から再び連絡が届く。「1年くらいは歌舞伎町に近づかない生活を送っていました。でもある日、担当から『久々に来ないか?』と連絡が来たんです。ちょうど彼氏と喧嘩したタイミングで、イライラしていたので担当に『行く』と返事をしてしまいました。以前ほどお金もないので売掛で遊んで、それからは彼氏と喧嘩する度にホストに通う生活が再開しました」「お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ」 すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」 ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。飲食店や様々な遊戯施設が立ち並ぶ街には、“眠らない質屋”も数多く存在する。その多くがキャバクラやホストクラブ、最近では“推し”に貢ぐ人々に利用されているという。
現在、歌舞伎町周辺に存在する質屋は15店舗以上。ブランドバッグや高級時計などを“質草”(≒担保)として店に預けることで、その価格に応じた現金をすぐに受け取ることができる。期限までにお金を返せば品物は返ってくるが、お金が払えなければ品物は質屋に取られてしまう。
プロミスやアイフルなどの消費者金融が普及したことで全国的には減少傾向の質屋だが、歌舞伎町ではむしろ増えているという。すぐにお金を借りられる手軽さが、歌舞伎町で生活する人たちのニーズにぴったりハマっているのだ。歌舞伎町のとある質屋の従業員はこう話す。
歌舞伎町には数多くの質屋がひしめいている。その用途は様々 文藝春秋
「一般的な質屋では金利が5%ですが、歌舞伎町の質屋は競争が激しいので金利が1%のところがほとんど。この街は水商売や日払いの仕事をされている方が多いので、突発的にお金が必要になるケースもあり、短期間で低金利の質預けを利用される方が多いです」
県外から生活費のために高級ブランドを換金しようと訪れる利用者もいるが、地下アイドルやコンセプトカフェの“推し”に貢ぐためという人が圧倒的に多数派だという。従業員が続ける。
「女性が焦った様子で店内に入って来て『これ2万でもいいから』と指輪の審査を依頼されたことがあります。ブランド物でもなく古かったのでお断りしたのですが『どうしても今日シャンパンを入れてあげたいの!』としばらくごねられました。どうやらお気に入りのホストの誕生日だったみたいです。聞けば親御さんの形見の指輪ということで、なおさら預かれませんと断りました。それでも女性は持っていた財布とカバンを預けてお金を持ってホストクラブの方へ消えていきました」
ホストクラブでシャンパンを入れるために親の形見を2万円で手放す――。一見すると不可解だが、自身も1000万円以上を貢いだA子さんは「気持ちはわかる。ホストクラブはそういうところ」と言う。
「私は家が割と裕福だったので、大学で上京する時に親が新宿区にマンションを買ってくれました。なのでバイトして稼いだお金は全部自由に使えて、同年代では貯金もある方でした。ホストに初めて行ったのは大学3年生だった20歳の頃。友達に『ホスト行ってみない?』と誘われて、それが沼の始まりでした……」ホストに貢ぐ友達を見て「私にもそれくらいできるけど?」 東京での暮らしに慣れたつもりだったA子さんにとっても、歌舞伎町のホストクラブは別世界だった。着飾った男性たちにハイテンションでちやほやされるのが楽しく、最初は1回あたり1万円以内の範囲で遊んでいたが、徐々に金額がエスカレートしていったという。「私をホストクラブに誘った友人がお店で“担当ホスト”を決めて彼にお金を落としているのを見て『私もそのくらいできるけど?』と女のプライド勝負が始まってしまいました。すぐに自分にも担当ができて、気づけばプライド勝負ではなく担当の喜ぶ姿を見るためにシャンパンを入れるように。ガチ恋というよりは“推し”に近い感覚だったと思います」 ホストクラブに通う友人の中には風俗や水商売といった高報酬のバイトを始める人も多かったが、A子さんは「それだけはしたくなかった」という。しかしホストに貢ぐことはやめられず、別の方法でお金を稼ぐ必要に迫られた。「親に何度も仕送りをしてもらって貢ぎを続けていたんですが、大学を卒業して働き始めても仕送りをねだっていたらさすがに呆れられてしまって。それで頼ったのが質屋でした。お金に余裕がある時に集めていたブランド品を売って、できたお金でホストに行く繰り返し。でもお金もブランド品も無くなってきて、水商売も抵抗があったので『さすがにホストもやめ時かな』と一度は通うのをやめたんですが……」 この時点でホストに貢いだ額は700万円以上。しかしA子さんは「あの時すっぱり止められていればずいぶんマシだった」と振り返る。その後A子さんは仕事に打ち込み、職場では彼氏もでき、親との関係も徐々に回復し始めた。その矢先、“担当”から再び連絡が届く。「1年くらいは歌舞伎町に近づかない生活を送っていました。でもある日、担当から『久々に来ないか?』と連絡が来たんです。ちょうど彼氏と喧嘩したタイミングで、イライラしていたので担当に『行く』と返事をしてしまいました。以前ほどお金もないので売掛で遊んで、それからは彼氏と喧嘩する度にホストに通う生活が再開しました」「お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ」 すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」 ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「私は家が割と裕福だったので、大学で上京する時に親が新宿区にマンションを買ってくれました。なのでバイトして稼いだお金は全部自由に使えて、同年代では貯金もある方でした。ホストに初めて行ったのは大学3年生だった20歳の頃。友達に『ホスト行ってみない?』と誘われて、それが沼の始まりでした……」
東京での暮らしに慣れたつもりだったA子さんにとっても、歌舞伎町のホストクラブは別世界だった。着飾った男性たちにハイテンションでちやほやされるのが楽しく、最初は1回あたり1万円以内の範囲で遊んでいたが、徐々に金額がエスカレートしていったという。
「私をホストクラブに誘った友人がお店で“担当ホスト”を決めて彼にお金を落としているのを見て『私もそのくらいできるけど?』と女のプライド勝負が始まってしまいました。すぐに自分にも担当ができて、気づけばプライド勝負ではなく担当の喜ぶ姿を見るためにシャンパンを入れるように。ガチ恋というよりは“推し”に近い感覚だったと思います」 ホストクラブに通う友人の中には風俗や水商売といった高報酬のバイトを始める人も多かったが、A子さんは「それだけはしたくなかった」という。しかしホストに貢ぐことはやめられず、別の方法でお金を稼ぐ必要に迫られた。「親に何度も仕送りをしてもらって貢ぎを続けていたんですが、大学を卒業して働き始めても仕送りをねだっていたらさすがに呆れられてしまって。それで頼ったのが質屋でした。お金に余裕がある時に集めていたブランド品を売って、できたお金でホストに行く繰り返し。でもお金もブランド品も無くなってきて、水商売も抵抗があったので『さすがにホストもやめ時かな』と一度は通うのをやめたんですが……」 この時点でホストに貢いだ額は700万円以上。しかしA子さんは「あの時すっぱり止められていればずいぶんマシだった」と振り返る。その後A子さんは仕事に打ち込み、職場では彼氏もでき、親との関係も徐々に回復し始めた。その矢先、“担当”から再び連絡が届く。「1年くらいは歌舞伎町に近づかない生活を送っていました。でもある日、担当から『久々に来ないか?』と連絡が来たんです。ちょうど彼氏と喧嘩したタイミングで、イライラしていたので担当に『行く』と返事をしてしまいました。以前ほどお金もないので売掛で遊んで、それからは彼氏と喧嘩する度にホストに通う生活が再開しました」「お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ」 すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」 ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「私をホストクラブに誘った友人がお店で“担当ホスト”を決めて彼にお金を落としているのを見て『私もそのくらいできるけど?』と女のプライド勝負が始まってしまいました。すぐに自分にも担当ができて、気づけばプライド勝負ではなく担当の喜ぶ姿を見るためにシャンパンを入れるように。ガチ恋というよりは“推し”に近い感覚だったと思います」
ホストクラブに通う友人の中には風俗や水商売といった高報酬のバイトを始める人も多かったが、A子さんは「それだけはしたくなかった」という。しかしホストに貢ぐことはやめられず、別の方法でお金を稼ぐ必要に迫られた。
「親に何度も仕送りをしてもらって貢ぎを続けていたんですが、大学を卒業して働き始めても仕送りをねだっていたらさすがに呆れられてしまって。それで頼ったのが質屋でした。お金に余裕がある時に集めていたブランド品を売って、できたお金でホストに行く繰り返し。でもお金もブランド品も無くなってきて、水商売も抵抗があったので『さすがにホストもやめ時かな』と一度は通うのをやめたんですが……」
この時点でホストに貢いだ額は700万円以上。しかしA子さんは「あの時すっぱり止められていればずいぶんマシだった」と振り返る。その後A子さんは仕事に打ち込み、職場では彼氏もでき、親との関係も徐々に回復し始めた。その矢先、“担当”から再び連絡が届く。
「1年くらいは歌舞伎町に近づかない生活を送っていました。でもある日、担当から『久々に来ないか?』と連絡が来たんです。ちょうど彼氏と喧嘩したタイミングで、イライラしていたので担当に『行く』と返事をしてしまいました。以前ほどお金もないので売掛で遊んで、それからは彼氏と喧嘩する度にホストに通う生活が再開しました」
「お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ」 すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」 ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
すでに手元にブランド品はなかったので、彼氏や友人からもらったプレゼントを質屋に預けたお金でホストに売掛金を支払っていたが、借金はかさむばかり。そんな生活が1年間続いたある日、完全な破綻がA子さんを待っていた。
「売掛が100万円を超えて『これはさすがに払えない』と思って担当ホストに相談したんです。親身になってくれると期待していたんですが、真逆でした。首元を強く掴まれて、質屋まで連れていかれ、『お前が着てるのブランド物だろ、売ってやるから早く脱げよ』と顔面を殴られて……」
ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」 それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
ホストに殴られた顔は腫れあがり、上から下まで服を奪われてヒートテック1枚と下着姿に裸足で帰宅したA子さん。彼氏から記念日にもらったネックレスだけは買い戻そうとしたが、翌日にはすでに売れてしまっていた。後日、彼に全ての事情がバレて破局、親からも「今後一切お金は渡さない」と宣言されてしまった。
「あれから、質屋を見るとギョッとするようになりました。もちろんお店が悪いわけではないんですが、若い子たちが使う時は本当に慎重になってほしいですね……」
それでもA子さんは、現在も質屋を利用しながらホストクラブの売掛金を返済し続けている。取材の終わり際、A子さんは「お金も、家族も、彼氏も全て失った。やっぱり担当に会いに行くしかないですかね」と笑って見せた。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))