レジャーに出かける機会が増えた今、気をつけたいのが現地でのトラブル。気軽に登れる山として人気の高尾山でトラブルの原因となるのが、よく見る“この光景”だ。
取材班:あちらの男性、げたを履いて登山道を上っていきます。あちらの女性はヒールを履いて登っていきます。
ヒールで山頂まで登って来た女性に話を聞いてみると…。
20代女性:すごく滑りやすい、階段も多かったし。割と軽い気持ちで。
女性の友人:ハイキングくらいのつもりだった。
登山をしているという感覚はないようだ。しかし、侮ってはいけない。
実は東京都での山岳遭難は、長野県の257件、北海道の197件に次いで全国で3番目に多く、157件も発生(令和3年)。そのうちの約半分は、高尾山を含む周辺の山々で起きている。
そんな登山客の安全を守っているのが、警視庁高尾警察署の山岳救助隊だ。
午後1時半ごろ、SOSが入った。登山客に注意を呼びかけながら、パトカーが登山道を登っていく。
隊員:上でケガ人が出ているため、広めに空けていただけますか。
現場は、高尾山の登山道にもなっている薬王院。すでに消防隊が到着していた。
隊員:すみません、高尾警察署の山岳救助隊の神藤と申します。
助けを求めたのは20代の女性。左足を固定され、応急処置が施されている。何があったのか?
隊員:状況としてはどんな感じですか?
20代女性:さっき、そこの階段のところを下っていて。階段のちょっと端っこのところにくぼみがあって、そこにはまって…。
隊員:ひねちゃった?わかりました。今、痛みは左足だけ?
20代女性:左足です。
下山途中で階段のくぼみにつまずき、左足をひねってしまったという。一緒に来ていた男性に話を聞くと…。
一緒に登山していた男性:今日は久しぶりの登山。登山でもないですけど…。こんな大がかりとは思いませんでした。
デートで登山を楽んでいる最中に起きた、まさかのトラブル。
隊員:立ち上がるのもつらいぐらいですか?
20代女性:ケガしたばっかりの時は、ちょっと頭痛っぽくなっちゃって。一回、そこに座って。
隊員:それで、もうこれ以上無理だなって?しょうがないね。
20代女性:すみません。
自力では下山することができない。
隊員:こっちで背負ってパトカーまで、そういう形になっちゃうんだけど。
20代女性:すみません。
女性を背負ってパトカーまで運ぶことに。
隊員:上げますよ、いいですか?1、2、3。
20代女性:恥ずかしいです。
隊員:背負われるとは思わなかった?でも、よくある話なので。
20代女性:中学生ぶりに(背負われた)。
登山客に呼びかけながら、慎重に階段を下りていく。
隊員:申し訳ありません。ちょっと道を空けていただけますか。
無事にパトカーまで運び、女性はその後、病院へと搬送された。
間もなく日が沈む午後4時前。本格的な登山が楽しめる「稲荷山コース」で、消防隊にSOSが入った。
手当を受けていたのは、70代の高齢男性。
消防隊員:一番ピーク時よりは、少し楽になりました?
70代男性:休めばなんでもないの。
消防隊員:歩き出すとだよね?
70代男性:歩くと(体が)後ろにそっちゃう。見かねた人が、そこからおぶってくれたんですよ。
同級生3人で午前中から登山を楽しみ、お昼過ぎに山頂から下山。その途中で突然、男性の足に痛みが走ったという。一緒にいた男性に話を聞いた。
一緒に登山していた男性:休みながら(下山してきて)。なんか(足が)痛くなったということで。痛くなったというより、フラフラなるもんで。途中まで来たけど、あんまりひどいもんでね。
なんとか山の中腹あたりまで下りて来たが、これ以上進むのは厳しいと判断。救助を要請した。
麓から約1kmも距離がある現場。自力での下山は難しく、隊員が担いでいくことに。
消防隊員:じゃあ、落ちないよう、胸にロープを巻かせてもらいますね。
一刻も早く下山しなければいけない理由があった。それが…。
取材班:皆さん、暗い道をスマートフォンのライトを照らして歩いています。
日没とともに暗闇に包まれる登山道。街灯も少ないため、暗くなれば一気に救助活動のリスクが高まる。
時刻は午後4時すぎ、日没まで残り30分ほどだ。
消防隊員:いきまーす。1、2、3。どうですか?お気持ち変わりませんか?
70代男性:大丈夫。
男性の救助活動が始まった。
アップダウンが続く山道。日が少しずつ暮れていき、ライトで山道を照らしながら山を下りる。
消防隊員:ここ滑りやすい岩ね。すべりやすい岩あるよ。
消防隊員:了解。
そして、日が沈み暗闇につつまれる中…。男性の発見から約1時間、ようやく麓に到着した。
男性は救急車に運ばれ、病院へと搬送された。
警視庁高尾警察署 山岳救助隊 豊福敬介隊長:高尾山は気軽に登れると言われていますが、決して安全であるということではありません。山は山ですので、しっかりとした準備、また体調管理をしっかりした上で楽しんでいただければと思う。
自分だけは大丈夫。そうした過信が登山でのトラブルを招く。しっかりとした準備が必要だ。
(「イット!」2月1日放送)