フリーライターのたかなし亜妖と申します。WEBコラムや映画・漫画レビュー、時にシナリオなどジャンル問わず文章を書く日々です。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。なんとなく入った業界で気づけば2年半が経過したところで、引退を決意しました。 その後は何事もなかったかのようにシレッと昼の世界へ出戻り。ライターになり早4年が経とうとしています。
◆フリーライター初心者の味方「クラウドソーシング」とは
以前書いた転職活動を経てフリーライターの道を決意した私だが、最初は仕事の取り方を知らなかった。まだセクシー業界から抜けたばかりのナマケモノに、お情けで案件を回してくれるような知り合いもいない。おまけに経歴もゼロだ。
どうするか困っていたところ、ネットでライターとしての働き方を検索していると、クラウドソーシングを勧めるブログ記事を見つけた。
クラウドソーシングとは、クライアントがネットを通じて受注者を募り、案件を依頼する業務形態のこと。名前を聞いたことがあったものの利用した経験はない。登録も無料ですぐに着手できることから、私は早速チャレンジした。今回はその時の体験談を語ろうと思う。
◆クラウドソーシングサイトのいいところ
クラウドソーシングのサイトを覗くと、たくさんの案件が並んでいる。ライティングだけではなくデザイン、動画編集、事務作業、開発などジャンルは幅広く、簡単なお小遣い稼ぎ程度の内容から、大金が動くプロジェクトまでさまざまだ。
ただ仕事が獲得できるだけではなく、サイトを仲介して報酬が振り込まれるため、支払いを誤魔化される心配がない。自ら請求書を作る手間も省けることから、副業やフリーランス初心者には優しいシステムである。
「自分で仕事を探して取る」、私がこの感覚を知ったのもクラウドソーシングを利用し始めてからだ。たとえ金額が安くとも達成感が得られるため、はじめの一歩を踏み出すには非常にちょうどいいものだった。
◆安すぎる…お小遣い並の報酬に愕然
しかしいくら「達成感が~」といっても、ギャラが安すぎればやる気も削がれてしまう。セクシー女優時代は良い時で月収80万円ほどの収入があり、比べるわけではないが、クラウドソーシングサイトに並ぶ“お小遣い並の報酬”に愕然とすることもあった。
最初の数件は仕事があるだけでも有難いと思っていたが、さすがにお小遣い並の報酬が続くと嫌気が差してくる。難易度が低い仕事ほど金額が上がらないのは当然のことだが、なかには「ワンコイン」なんてのもサイト上には存在する。
サイト内ではちょっとしたレビューやテンプレート通りにこなす紹介記事、ブログ記事の作成など個人の個性を問わない内容も多い。言い方は悪いが、その手の依頼は挑戦するにあたってハードルが低いことは事実なので、単価は上がりづらい。
◆たまに全くの初心者でも1文字1.0円~を手にできる可能性もあるが
「原稿の差し戻し回数が無制限+納期が依頼から2日以内+最低納品ラインが1万文字」……のような、悪魔的案件もチラホラ見かける。駆け出しライター志望(仮)だった当時の私でさえ、めまいがする程のムチャ振りだ。
けれども高望みをしてはならないと思い、悲しいくらい安い報酬の案件でも泣く泣く引き受ける。
「これだけこなして、源泉徴収が引かれて、手数料が引かれて、手元に残るのは……」
数をこなしてもサイトの仲介手数料が数十パーセント引かれれば、雀の涙レベルだった。
◆直接交渉するクライアントも少なくない
サイトを介してのやり取りがルールなので、クライアントと受注者が直接やり取りを行うのは禁止とされている。しかし、以前昼職体験記でも書いたように直交渉をするクライアントは少なからずいる。
継続して一定期間案件を受けていると「次回からはサイト外での取引をお願いしたいのですが」と連絡が来ることも珍しくはないらしい。手数料がどこも高いため、直接取引をした方が負担は減る。その点を考慮すると心が揺れ動くのも無理はないが、クラウドソーシングという名の仲介を取り払っても単価が上がるとは限らない。お値段据え置き、サイトを経由するムダが省けて安く人を使えることから、直取引によって「クライアントは」それなりのメリットがあるだろう。
反対に受注者は、報酬アップを狙えなければ手数料がカットされるくらいしか魅力がない。もしかすると長期的な付き合いを考えている良いクライアントもゼロとは言い切れないが、個人的にはルール破りの時点で“いろいろお察し”だと思う。
交渉の申し出を2件ほど受け、私はクラウドソーシングの利用をやめた。単価も変わらず請求書作成の手間も追加されるとなれば、自分で営業して仕事を取ってきた方がプラスになると考えたからだ。
◆クラウドソーシングの利用が仕事の基盤作りに
クラウドソーシングの利用者は年々増加しているらしい。働き方改革により副業を始める社会人は多く、その勢いは新型コロナの影響で加速したそうだ。
単純に暇だから、残業代で稼げなくなったから、家に居る時間を有効活用したい等理由はさまざまだが、そんな時に面倒な手続きなくパッと取り組める。クラウドソーシングの浸透は働く社会人にいい影響を与えているに違いない。
私にとってクラウドソーシングサイトの利用は、フリーランスの基盤を作るきっかけとなった。自ら仕事を取り、依頼物をこなす。流れだけを見るとシンプルだが、執筆の練習や仕事意識を高めるには重要なこと。
今となっては報酬が低かったのも駆け出しの洗礼であり、直交渉を持ち出すクライアントに遭遇したのも社会勉強だったと思っている。初っ端から満足のいく金額を提示されていればきっと調子に乗っていただろうし、自分の足で仕事を取りに行く踏ん切りがつかなかったかもしれない。
◆向き不向きが分かれやすい
フリーランスとして初めの一歩を踏み出したい人や、副業のお小遣い稼ぎを考える人にとってクラウドソーシングの利用は向いているだろう。
ただ、ここ1本に絞るとなれば少し厳しいかもしれない。サイトによっては単価交渉が難しい、手数料が高い、案件が少ないといったデメリットも多く、稼ぎ続けるには“コツ”を掴む必要があるからだ。この際の“コツ”とはクライアントを見極める能力をつけることや、自分自身のスキルアップを主に指している。
サイト選びや希望する職業ジャンルによっても話が変わってくるので、うまく利用すれば収入が大きく跳ね上がる可能性も。向き不向きは分かれやすいが、個人的には「推せるツール」。気になる方は一度登録してみて、どのようなものかを体験してみるといいだろう。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優の昼職転職記]―