現職の女性市議が同僚の男性市議から性的暴行を受けたとして告発していた問題で、不起訴となった男性市議が女性市議を相手取って損害賠償を請求していたことがNEWSポストセブンの取材でわかった。
【写真】メガネをかけて上目遣いをする中川あゆこ議員「同僚議員から性的暴行を受けた」「レイプドラッグを使われたのではないか」──。 そんな衝撃的な言葉で前代未聞の事件が世に明るみになったのは、2022年5月。発端は滋賀県・琵琶湖の北西部にある高島市で、市議を務める中川あゆこ議員(42)の実名の告発だった。
中川市議は2021年7月21日の夜、大津市内で万木(ゆるぎ)豊市議(58)を含めた4人で会食。その後、万木市議の車で自宅へ向かう途中のコンビニ駐車場で、性的暴行の被害を受けたと主張。万木議員は「潔白は証明できると思っている」と容疑を否定していた。地元紙記者が語る。「中川市議は事件当日、万木市議が買ってきた缶チューハイを手渡され、数口飲んだ後に意識がもうろうとなり、車内で性的暴行にあったと証言しています。事件の1週間後には高島警察署に被害届を提出し、万木市議は昨年3月に準強制性交の疑いで書類送検されました。 しかし昨年6月、大津地検は『起訴するに足りる十分な証拠がえられなかった』として、万木市議を不起訴処分(嫌疑不十分)としました。中川市議は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたことを明かしています」 2人は高島市議会の同僚という間柄で、性的暴行を告発した中川市議は、2021年1月に高島市議会議員選挙に初当選を果たした新人議員だった。「小学校から高校まで高島市で育ち、専門学校を経て、IT企業に勤務していました。物怖じしない性格で、女性が4名のみの高島市議会でも存在感を出しています。年齢も40代前半で、女性視点での政策が期待されていた中での事件で、支援者も心配しています」(市議会関係者)『トラック野郎』に憧れて 一方の万木市議は、県立の工業高校を中退後は映画シリーズ『トラック野郎』に憧れ、長距離運転手として全国で運送業務に携わってきた。1998年の長男誕生を機に政治家を志し、2009年に2度目の挑戦で高島市議会議員に初当選した。「2015年に滋賀県会議員選挙に出馬しましたが落選。4期目の当選を果たした2021年、緊急事態宣言期間中に飲酒を伴う会食に同議会の市議と参加していたことが発覚し、それまで所属していた自民党会派は解散しました。プライベートではバンドを組んでいて、本人はボーカルとギター、MCの担当だそうです」(同前) 騒動の反響が冷めやらぬ中、昨年はさらなる疑惑の目が万木議員に注がれる。政務活動費(政活費)の虚偽報告が発覚したのだ。 昨年3月31日に調査旅費として約4万5140円の報告書を議長に提出。後の議会の調査で報告書の虚偽記載を認め、不正に受け取ったお金を返金した。だが、市議会は同僚市議への準強制性交の疑いで書類送検(前述の通り、不起訴)されたことや、報告書に虚偽記載して不正に政務活動費を受領していたことを問題視。「議員としての資質が欠如している」として、これまでに5回の辞職勧告決議案が可決。しかし、万木議員は現在も議員活動を続けている。 不起訴となった準強制性交事件は昨年12月21日、被害を訴えていた中川市議が大津地裁の万木議員を不起訴とした処分を不当として、大津検察審査会に審査を申し立てている。だが、NEWSポストセブンが取材をすすめると、昨年秋に万木市議が中川市議を名誉棄損で大津地裁に提訴していたことがわかった。前出の地元紙記者が打ち明ける。「万木市議は、中川市議のインタビューをもとに構成された産経新聞(2022年7月13日付)のWEB版の記事で、社会的評価を著しく低下させられたと訴えています。記事中で中川市議の『レイプドラッグを使われたのではないか』『それまでの経緯を見てもらえば、合意などするわけがない』という発言が、犯罪行為を行った人物という印象を与えると主張しているそうです」 準強制性交については次のように反論している。「万木市議が『レイプドラッグを使ったことは一切なく、双方合意に基づいて性的な行為に至った』として、事実無根の記事によって名誉が侵害されている苦痛は大きいと訴えています。記事が約3カ月もの間、ネット上で閲覧可能な状態になっていたことも問題視していて、社会的評価は大きく低下したとして百数万円の慰謝料を中川市議に請求しています」(同前) 万木市議、中川市議の双方に提訴について問い合わせたが、締め切りまでに回答は得られなかった(回答があり次第追記する)。 前代未聞の事件は不起訴から一転、法廷での闘争が泥沼化の様相を呈している。だが、なぜ車内で同僚市議に性的な行為を行ったのか。事件発覚以来、困惑し続けている高島市民に対して、説明責任を果たすことが最優先なのではないだろうか。
「同僚議員から性的暴行を受けた」「レイプドラッグを使われたのではないか」──。
そんな衝撃的な言葉で前代未聞の事件が世に明るみになったのは、2022年5月。発端は滋賀県・琵琶湖の北西部にある高島市で、市議を務める中川あゆこ議員(42)の実名の告発だった。
中川市議は2021年7月21日の夜、大津市内で万木(ゆるぎ)豊市議(58)を含めた4人で会食。その後、万木市議の車で自宅へ向かう途中のコンビニ駐車場で、性的暴行の被害を受けたと主張。万木議員は「潔白は証明できると思っている」と容疑を否定していた。地元紙記者が語る。
「中川市議は事件当日、万木市議が買ってきた缶チューハイを手渡され、数口飲んだ後に意識がもうろうとなり、車内で性的暴行にあったと証言しています。事件の1週間後には高島警察署に被害届を提出し、万木市議は昨年3月に準強制性交の疑いで書類送検されました。
しかし昨年6月、大津地検は『起訴するに足りる十分な証拠がえられなかった』として、万木市議を不起訴処分(嫌疑不十分)としました。中川市議は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたことを明かしています」
2人は高島市議会の同僚という間柄で、性的暴行を告発した中川市議は、2021年1月に高島市議会議員選挙に初当選を果たした新人議員だった。
「小学校から高校まで高島市で育ち、専門学校を経て、IT企業に勤務していました。物怖じしない性格で、女性が4名のみの高島市議会でも存在感を出しています。年齢も40代前半で、女性視点での政策が期待されていた中での事件で、支援者も心配しています」(市議会関係者)
一方の万木市議は、県立の工業高校を中退後は映画シリーズ『トラック野郎』に憧れ、長距離運転手として全国で運送業務に携わってきた。1998年の長男誕生を機に政治家を志し、2009年に2度目の挑戦で高島市議会議員に初当選した。
「2015年に滋賀県会議員選挙に出馬しましたが落選。4期目の当選を果たした2021年、緊急事態宣言期間中に飲酒を伴う会食に同議会の市議と参加していたことが発覚し、それまで所属していた自民党会派は解散しました。プライベートではバンドを組んでいて、本人はボーカルとギター、MCの担当だそうです」(同前)
騒動の反響が冷めやらぬ中、昨年はさらなる疑惑の目が万木議員に注がれる。政務活動費(政活費)の虚偽報告が発覚したのだ。
昨年3月31日に調査旅費として約4万5140円の報告書を議長に提出。後の議会の調査で報告書の虚偽記載を認め、不正に受け取ったお金を返金した。だが、市議会は同僚市議への準強制性交の疑いで書類送検(前述の通り、不起訴)されたことや、報告書に虚偽記載して不正に政務活動費を受領していたことを問題視。「議員としての資質が欠如している」として、これまでに5回の辞職勧告決議案が可決。しかし、万木議員は現在も議員活動を続けている。
不起訴となった準強制性交事件は昨年12月21日、被害を訴えていた中川市議が大津地裁の万木議員を不起訴とした処分を不当として、大津検察審査会に審査を申し立てている。だが、NEWSポストセブンが取材をすすめると、昨年秋に万木市議が中川市議を名誉棄損で大津地裁に提訴していたことがわかった。前出の地元紙記者が打ち明ける。
「万木市議は、中川市議のインタビューをもとに構成された産経新聞(2022年7月13日付)のWEB版の記事で、社会的評価を著しく低下させられたと訴えています。記事中で中川市議の『レイプドラッグを使われたのではないか』『それまでの経緯を見てもらえば、合意などするわけがない』という発言が、犯罪行為を行った人物という印象を与えると主張しているそうです」
準強制性交については次のように反論している。
「万木市議が『レイプドラッグを使ったことは一切なく、双方合意に基づいて性的な行為に至った』として、事実無根の記事によって名誉が侵害されている苦痛は大きいと訴えています。記事が約3カ月もの間、ネット上で閲覧可能な状態になっていたことも問題視していて、社会的評価は大きく低下したとして百数万円の慰謝料を中川市議に請求しています」(同前)
万木市議、中川市議の双方に提訴について問い合わせたが、締め切りまでに回答は得られなかった(回答があり次第追記する)。
前代未聞の事件は不起訴から一転、法廷での闘争が泥沼化の様相を呈している。だが、なぜ車内で同僚市議に性的な行為を行ったのか。事件発覚以来、困惑し続けている高島市民に対して、説明責任を果たすことが最優先なのではないだろうか。